マリベルの正体
カタリナは屋敷に着いて駆け足でマリベルの部屋に行く。
「マリベル、入るわよ」
ノックもしないで部屋に入った。
「カタリナ、どうだった?」
マリベルは起きていた。それもドレスに着替えて椅子に座っている。
「マリベル、起きていて大丈夫なの?」
カタリナが聞くとマリベルは大事な話があると言ってきた。
「マリベルの予想通りよ、どうしてわかったの?」
「座ったら?」
マリベルに言われてカタリナは立ったままだと気づいた。
椅子に座ると侍女がお茶を出してくれる。
マリベルは人払いをした。
「で、どうだったの?」
「マリベルの予想通りよ。公爵の証言者は偽りとまでは言わないけど、信頼にかけるとして却下されたわ」
「そう」
マリベルは小さく頷く。
「ところで、どうしてわかったの?」
カタリナはここ最近、疑問に思っていた事を聞いた。
「カタリナ、驚くかもしれないけど、この世界は私が書いた小説の中の出来事なの」
「えっ?」
カタリナは驚く。マリベルが言っている事が理解出来なかった。
「私は趣味で小説を書いていたの、しかし病を発症して余命宣告をされたの。将来を悲観していた時、病院の階段から落ちて目が覚めた時にこの世界に来ていたわ」
「病気は大丈夫なの?」
カタリナは最近のマリベルの顔色がよくないことが気になっていた。
「階段から落ちた時に持っていた薬を飲んでいたけど、もう無くなったからこれからどうなるかわからないわ。でも今のところ大丈夫みたい」
マリベルは笑顔を見せるが無理に笑っているようにも見える。
「マリベルは元の世界に戻りたいと思わないの?」
カタリナはこの世界より確実に医学が進歩している元の世界の方がいいと思う。しかし、マリベルは違っていた。
「医学がこの世界よりも進歩していたとしても既に余命宣告されていたのよ。それに、さっき言った私が書いた小説も既に他の人の手にかかっているの」
マリベルは遠くを見ている。
「マリベルが書いた小説が人の手にかかっているって、どう言う事?」
「私が書いた内容と少しずつ違っているのよ」
「そんな・・・」
「だから、元の世界に戻っても私の居場所はないのよ」
「だからってこの世界にずっといるつもり?」
カタリナは戻れるのなら元の世界に戻りたいとまだ、少し思っていたがマリベルは違っていた。
「私はこの世界で残りの人生を生きていくわ」
マリベルは後、どれだけ生きられるか分からないけどと呟いた。
カタリナはなにも言えなかった。マリベルの部屋を出る時マリベルはカタリナに手渡してきた大量の書類があった。
それにはマリベルが書いた小説の内容と登場人物達の詳細が書かれていた。
カタリナは自分の部屋に戻ってその書類を全て読んだ。確かに少しずつ違っている。しかしそこでわかったこともあった。カタリナはそれをメモしていった。
カタリナがこの世界に来てから一年は経っていない。しかし、小説と違う点はカタリナが見ただけでも幾つかあった。
変わった点を集めてみるとなんとなく次の展開が予想出来た。
カタリナは同時進行でマリベルの病気の薬を探した。
この世界ではまだ、発見されていない病だが、薬の材料はなんとかなりそうだった。
カタリナは薬になる薬草の詳細な特徴を書いて商団に送った。
その後、今回の事件をもう一度検証してみた。
今回の事件はマリベルの小説には書かれていない。その為、手を加えた人物がアデルとフレデリックに罪を着せたかったと思う。
カタリナは更に深掘りしてみた。
アデルはともかく、フレデリックに罪を着せて何をしたかったのか。何度考えても分からない。
カタリナはもう一度、マリベルの小説を読み返した。
カタリナは毎日。マリベルが書いた小説と現実にあったことの違いを書き出していた。
そのマリベルの小説にカタリナは登場している。そして小説の中のカタリナは非の打ち所がないくらい完璧な女性として書かれている。
カタリナは小説の中のように完璧とまではいかないが解決出来ないかと思いながら何度も小説を読み返した。
カタリナは毎日。マリベルが書いた小説と現実にあったことの違いを書き出していた。
毎日マリベルな小説を読み返していると商団から薬草が届いた。
カタリナは箱を開けて驚く。
中身は全て毒草だった。それもかなり危険な毒草だ。
カタリナは持ってきた侍女を呼び出した。
「これは本当に商団から来た物なの?」
「はい。いつもの方が持ってきました。商団からだと言われたのでそれを信じてしまいましたが違っていましたか?」
少し怪しさを感じて執事にこの侍女を監視させて、馬車を用意してもらった。
カタリナは先程届いた荷物を持って商団本部に向かった。
商団本部に着くとカタリナとマリベルが採用した責任者のフリップがやって来た。
「カタリナ様、どうされましたか?」
「これが届いたけど。どういうことかしら?」
箱の中を見たフリップは怒りを露わにした。
「ペイン! これはどういうことだ!」
フリップが怒鳴ると少年がやってきた。
ペインという少年は商団で採用した平民の少年だ。
「だってそれが必要だろ」
「誰が必要だと言った!」
フリップがペインの頭を掴んで怒っている。
かたりなはその様子を見ていた。
「皇太子が困っているんだろ、それに邪魔している公爵がいなくなれば皇太子が助かるだろ。だから殺す為に必要だ」
ペインは悪びれる様子もなく言う。
「誰が言ったのか知らないけど、これは必要ないわ」
カタリナが言うと急に不貞腐れた態度をとった。
「どうしてこんな事をしたの?」
「公爵が死んでくれたらあんたも助かるだろ。そしたら俺は褒美を貰って遊んで暮らせるだろ」
カタリナはペインの考えが理解出来ない。
フリップは申しわけなさそうな表情をしている。
「貴方の事情はどうでもいけど、貴方にこの件を話した人から狙われるわよ。私達は関係ないから気をつけてね」
「どうして俺が狙われるんだよ」
ペインは訳が分からないと怒り出す。
「分からないならいいわ」
カタリナはペインを利用しようとしている人物を考えた。
カタリナはフリップにペインが来たら連絡してくれるよう伝えて帰った。
屋敷に戻ってマリベルの小説をもう一度読み返す。ペインの行動に関する事が書かれていないか、何か隠されていないかと思い注意深く読み返すと公爵のことが書かれていた。
カタリナはそこから想定出来る限りの内容を書き出してみた。いくつかの案から見ても全て辿り着くのは一つしかなかった。
カタリナはマリベルが書いた小説の後半を読み返した。
このままでは、マリベルの小説の流れでいくと無理がある展開だ。
やはり誰が手を加えている。
それも何か目的があって、展開を変えているのがわかる。カタリナは変えている人がどうしてその様なことをしているのか気になった。
それも展開が変わってきたのはカタリナがこの世界に来てからだ。これが意味することもわからない。
ただ、今向かう先は侯爵家の没落だ。
小説の中のカタリナは侯爵家の養女になっている。しかし、マリベルからもらった資料にはカタリナは公爵家の長女になっていた。
その違いはなんだったのか?
疑問に思う。
カタリナと言う名前はマリベルが言い出した名前だ。マリベルは最初からカタリナの名前を付ける事に躊躇なく言っていた。
マリベルはまだ何か、隠しているのではないかと思う。
それを確かめないと先に進めない。
カタリナはマリベルの本当の姿を確かめようと決めた。




