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AM 2:30

作者: ミ日月

 午前2時半、親が寝ていることを確認して玄関へ向かう。向きの揃っていない靴に足を入れ、靴紐をキュッと結び、ドアノブに手を掛ける。「キィッ」と音が鳴る。外は真っ暗で、人間の姿はどこにもなかった。少し怖気付いて、布団に戻る選択肢が浮かんだが、勇気を出して外に出ることを選んだ。外の世界は虫たちの声と近くの用水路から聞こえるせせらぎで満たされていて、僕以外の人間は存在しないように思えた。僕はこの世界をもっと知りたいと思い、少し歩くことにした。

 

 家の近くの田んぼの側を歩いていると蛙たちの鳴き声が聞こえてきた。暗くて足元が見えないため慎重に側溝を覗いてみたが、蛙の姿ははっきりと見えはしなかった。ライトを持ってこなかったことを少し悔やんだが、明かりはこの雰囲気を台無しにしてしまうだろうと感じ、むしろライトが無くてよかったと思った。


 それにしても夏はいつでも蒸し暑い。日中と比べると遥かに涼しいが、それでもかなり暑かった。クーラーの偉大さを実感しながら歩いていると、車の走行音が聞こえてきた。どうやら家の近くの国道は昼夜を問わず使われているらしい。これ以上は進めないなと思い、家に戻ることにした。


 来た道を戻る途中、せっかくだからと車道の真ん中を歩いてみた。ただ歩いている場所が違うだけで、風が気持ちよかっただとか、特別な景色があっただとか、そんなことは一つも無かった。だけど妙に心が軽く、弾んでいた。


「次は自販機でコーラでも買おうかな」


 そう呟き、体を一回転させたりしながら歩いて家まで戻った。僕の心は布団に戻ってからも弾みっぱなしで、しばらく寝られそうになかった。

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