窮地
紅視点
(まずいわね、さっきので魔力の3分の1使っちゃったわ。しかも完全に雪に狙いを定めてる。ワイバーンは獲物を仕留めるまで執拗に追いかけてくるから逃げてもすぐ追いつかれる。)
(【血鎖】+【血盾】)
「【鮮血監獄】!」
(魔防隊が来るまで耐えるしかない!私の最強の捕縛術、これが破られたらもうどうしようもない!それにこれでもうほぼ魔力はないわ)
「でも、【血霞】をかけたから雪だけなら助かるわね」
血霞は魔物が嫌がる成分に調整した特別な血を使っているから魔物が寄ってこなくなる。
ガンゴンガシャン!
「よかった、流石に出てこれはしないみたいね」
そう、安心したのも束の間異変は起きた。
何も音がしなくなったのだ。
この【鮮血監獄】には捕まえることはできるが弱らせたりする効果はない。特に中位以上ならこんなに早く大人しくなることなどないのだ。
ガラスが割れる音がした。
「ッ!一体何をしたの?」
目の前には【鮮血監獄】から尻尾だけを出したワイバーンがいた。尻尾の先は尖っており刃先には紅の血がかすかに付いていた。
「あれがまともに当たっていたらやばかった。それにあれをあと2.3発されたら【鮮血監獄】が破られる!」
ワイバーンの尻尾がかすって腕に切り傷を作って血を垂らす紅は尻尾の拘束を強くする。
「あと30分もしたら魔防隊が来るはず、それまで待てば私の勝ちね」
そしてまたワイバーンが力を溜め始めた。
「流石に2度目はわかった。ワイバーンは空を飛ぶ時滑空して飛んでいる。上昇する時は魔力を翼に纏って羽ばたくことで高度を確保する。でも私の拘束で防御や飛行に魔力を使う必要がない、だから翼や身体中から魔力を尻尾だけに集めたのね。」
(それなら、魔力を感知すれば避けられる。)
そう考えていた。(しかし、先ほどと同様の魔力量尻尾に込めたというのに仕掛けてこないのは何故!?)
「いや、考えなくていい。私は時間が稼げればそれでいいはず・・!?ごふッ!かはッ!」
いきなりの吐血、しかし経験上何度も見てきた紅はすぐに理解した。
「これは毒!?やられた!尻尾に毒があったのね、まさか普通のワイバーンじゃなかったなんて・・・
でもよかった私が最初で」
そう、魔防隊が来て尻尾の攻撃が来てしまったら全滅の可能性もあった。その点自分なら解毒ができるため警戒を促せる。そう、考えていた
「【解毒血】・・・ゴフッ!?なんで!?解毒が効かない?そんなこと今まで無かったのに」
「そりゃそうさ、あんたのために作った毒だもん」
「誰!」
紅は解毒に集中していた意識を声が聞こえた方向に向けた。するとそこには黒いローブを着た人物が立っていた。
「まあ、あんたのためというよりあんたが解毒にかかりきりになる様にが正解かな?この毒にかかった奴らをあんたのいる病院にたっくさん運び込めば魔防隊の優秀なヒーラーがいなくなるからね」
「あなた、何者?」
「製作者とでも名乗ろうかな、このワイバーンのね」
そう黒ローブは話しながら【鮮血監獄】に触れた。するとまだ数発はワイバーンの攻撃に耐えたであろう檻はいとも容易く崩れ去った。