卒業式2
階段を降りると声の主、妹の朱音がテーブルに座って朝ごはんを食べていた。
「あ、雪兄やっと来た!お母さんとお父さんはもうご飯食べ終わっちゃったよ?」
「ごめんごめん、中学ももう終わりかと思ったら色々考えすぎちゃったよ」
「そりゃあ雪兄能力ないから進路考えないとなのに全く決まってないんだから悩みもするか」
「ッ!人が言わないようにしてた事をサラッと言いよって」
そうこの妹の言う通り進路は、いや将来は高校である程度決まるのだ。
この世界では誰もが何かしらの能力を持っているため高校から能力を活かした職に就くための勉強をする。
つまり、能力を持たない俺は能力前提の高校には行けない。しかし、能力を持たない人の高校があるかと言われればそれも否。
つまり行ける高校がないのだ。
「お前は良いよな母さんゆずりの回復特化で」
俺の母さんの【血桜 紅】は血を操作できる能力を持っている。これを人に使う事で解毒や病気を治すことができる。
朱音は母さんと同じ血を操作する事に加えて細胞を活性化させてゲームでよく言う【ヒール】が出来るのだ。
(まぁかすり傷程度しかできないけど)
「ふふん!私は来年には東京治癒学校に入れるんだから!」
「コネでな」
「スカウトって言いなさい!」
そう、つい先日朱音宛てにスカウトが来やがったのだ。母親譲りの治癒能力を見越してだろう。
「はいはい、スカウトね」
「わかればよろしい。ところでさっさとご飯食べないと遅刻するよ?卒業式でしょ?今日」
「やっば、そうだった」
置いてあった味噌汁とご飯をかきこんで玄関に向かう。すると後ろから、
「司さんと綾さんが来てたけど先に行くってよ」
「はぁ!?先に言えそれを!!ああもう、行ってくる!」
「行ってらっしゃーい」
俺は玄関を出ると全力でダッシュした。
「ったく、少しは待てないのかあの幼馴染どもは」
そう、司と綾は俺の幼馴染だ。生まれた病院から同じなのだから腐れ縁ってやつだ。
愚痴りながら走っていると目の前に歩いてる二人を見つけた。
「あ、雪おはよう」
「おはよう、じゃねーよ!置いてくな!?」
俺は走ってる勢いでドロップキックをかましてやった。が、
「痛ってぇー!」
「まったく、俺の能力知ってるのに突っ込んでくるなよなー」
「大丈夫!?」
無駄に硬いイケメンが【龍堂 司】
心配してくれてる優しい美少女が【法条 綾】だ。
「大丈夫、ありがとう。さすがドラゴン様だなあ?」
「雪、ドラゴンはやめろ、ドラゴンは」
「実際ドラゴンだろう」
そう、こいつは体を龍のウロコで纏うことができるのだ。
「良いよなー二人とも進路先は魔防学校か?」
「二人ともそうだよー私も魔法で頑張るんだー」
綾は魔法使いだ。魔法使いは結構世の中にいる。しかし、綾はかなりの魔力量を誇っているため桁違いの威力を誇る。
「バ火力で倒すのか」
「バ火力言うなー!確かに精密操作苦手だけど」
「悪りぃ悪りぃ。っと着いたぞまた後でな」
「じゃ式終わりにな」
「うーまた後で覚えてなさいよ?」