一年選抜本戦 怜VS綾2
怜の攻撃は確実に綾に直撃した。少なくとも怜はそう感じた。
「やっぱり怜ちゃんは怖いなぁ、勘で真空波避けるとか。人間業じゃないよ?」
「なん、で?確実に斬った筈なのに・・・!」
怜は自身が見た綾を斬った感触と実際に薙刀を受け止めている棒のような物の感触に戸惑う。
その瞬きの間に怜は身体に何かが着弾して結界ギリギリまで吹っ飛んだ。
「熱ッこれは火球?でも全く見えなかった。魔力も。一体何をしているの?」
「流石に見えないよね?そうじゃないと頑張って身につけた意味ないから、ね!」
綾は手に持った棒を器用に手で回した後怜ですら見逃すほどに加速して接近した。
「 えっ?【未来予測】ッ!!」
一瞬の思考の空白、それは加速した綾の前ではかなりの致命傷になりうる隙だった。
「【雨穿】!」
まさに雨のような細かい連続突き。と言うよりも実際棒には、綾の有り余る魔力で水属性の魔力が付与してあった。
「くっ防ぎづらい!何かノイズみたいなのがッ!〜〜!離れてッ!【一槍凍界】」
耐えかねた怜は薙刀に魔力を込め薙ぎ払った。切っ先から氷の斬撃を放った怜は綾に届くと思ったが難なく躱される。
(明らかにおかしい。確実に当たる位置だったのに当たらない!まるで蜃気楼みたい、そこにあるのに通り抜けるみたい。)
「危なかったー。まさか怜がこんな技までできるなんて。でも結構辛そうだね?連発は出来ないのかな?」
「本当に無尽蔵すぎない?魔力減ってるように見えないんだけど。」
「んー一応減ってるけどその分回復もしてるから、このままならずっと魔法撃ち続けられるよ。もっとも怜ちゃんになら当たらないんだろうけどね?」
(よく言う。さっきから未来予測が上手く出来てない。確実に何かされてる!ゆっくり考えてる暇は無い、攻めながら考える!)
「【少し先の未来】ッ」
怜は全神経を研ぎ澄ませ勘に全てを任せることにした。まるで蛇のように蛇行しながら綾の狙いを付けなくさせていた。
「それじゃあ避けられないよ!【大炎火球】」
綾は結界上部より突如大型の火球を出現させ怜の頭上に落下させた。
「何て大きさ・・・こんなものいつの間に!【一槍凍界】ィィィイ!」
怜は確実に喰らったら重症を負うと悟って火球を相殺するため上に向かって斬撃を放った。
その斬撃は見事に火球を相殺した。
「ハァッハァッ!本当に化け物ね。魔力隠蔽・・・か。」
怜が息も絶え絶えな様子の時、結界外から司が叫ぶ。
「怜!何してる!?もう一撃来てるぞ!!」
怜には聞こえていないが研ぎ澄ませた勘が急に逃げろと頭の中で響き渡った。
「!?安全な場所は・・・無い。こうなったら!」
怜の頭上に先ほどと同じ大きさの火球が落ちてきた。観客からは怜が確実に喰らった様子が見えた。
『何やら怜選手の動きが途中からおかしくなっていましたが理事長先生はどうお考えですか?どうやら二つ目の火球が見えていないようでした。』
『法条選手は水属性に長けた選手です。おそらく何らかの方法で怜選手を欺き、一撃目を魔力隠蔽、二撃目を視認すらさせていなかったと思われる。我々からは見えていると言うことは幻影の類では無いのだろうが・・・』
「爆発したせいで立ち昇った土煙が晴れるとそこには若干氷が残っている壁とその隣にいる怜がいた。
(危なかった・・・咄嗟に自分の周りを氷で囲んで壁にしなかったら今頃終わってた。氷が溶けないと出られないから賭けだったけど。)
「うわー今のでやらないのか。怜ちゃん勘が良すぎない?」
「正直死ぬかと思ったよ。あれ何?全く見えなかったんだけど。」
「細かいこと言うと長いから簡潔に教えようか?今、怜ちゃんは本当の視界を見てないの。今見てるのは私が見せてる歪曲した視界、だよ。」
綾が言い終わった瞬間怜の前に棒を突き出した綾が現れる。
もはや可視化された青い魔力は怜の腹に向かって突き出される。
「また・・・!」
怜は氷の棘を地面に生やして綾を遠ざけ後ろに下がる。
「うぐっ完全に避けた筈なのに喰らうなんて・・・。」
怜の腹には棒が当たった跡がくっきりと残っていた。
「だから言ったでしょー?歪曲した視界だって。当たらないはずのものが当たって当たるものは当たらない。今怜ちゃんが見てるのはそう言う世界だよ。」
まさに現実と幻惑|の 綾を操る魔法使いとなった綾に怜は防戦一方になるしかなかった。




