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憧れは束縛に

「そうだね、まずは僕の家について話そうか。僕の家は代々魔眼の能力を持つ人間を輩出する家系でね・・・僕はその次男として生まれたんだ。」


「お兄さんがいたんだよね?」


「そうだよ、自慢の兄さんだ。僕は一度も勝てなかった。」


「もしかして鬼灯さんが試合中言っていたあの人っていうのはもしかして・・・」


「はは、流石にわかるか。そうだよ僕は兄さんになりたかったんだ。」


「なりたかった?より強くなりたいとか追い越したいとかではなくて?」


「兄さんが本来家を継ぐ筈だったんだよ。僕じゃなくてね。それから僕の家は変わってしまった。」


「お兄さんはどこに?」


「兄さんは魔防隊に入隊した後ダンジョンで行方不明になってしまったんだ。まだ見つかってない。もう何年も前からね。両親は兄さんがいなくなって荒れてしまったんだ。」


私は鬼気迫る雰囲気の理由が何となくわかった気がした。


「父さんは兄さんがいなくなったことが認められなくて僕を兄さんだと思ってるんだ。母さんはまだマシな方。当主にしようって考えは同じだけどね。」


「それでお兄さんの代わりに?自分のことを見てほしいとか思ったりしなかったの?」


「最初は「兄さんじゃない」「僕を見てっ」てよく言っていたけどね。僕が兄さんを演じている間は前の穏やかな生活に戻れたんだよ。」


「でもそれは・・・あなたが家族からいなくなるってことじゃないですか!」


「そうなるね。でも良いんだ、僕は僕に執着はないし何より兄さんがどんどん忘れられてしまう気がした。他ならぬ僕自身から。だから僕は兄さんのようになりたいし、ならなくちゃならない。学校では僕として生活してるけどね。」


「それで良いんですか?それで本当に納得しているならあの試合であんな苦しそうに戦ってないです!本当は自分を見てほしいと思ってるんじゃないんですか?」


「勝手なこと言うなッ!!そうさ僕だって本当は両親に僕としてみてほしい!だけど!!・・・だけど怖いんだ・・また家が暗く荒んだ雰囲気に戻るのが・・・!君にわかるか?全く僕のことは見ないで兄さんのことをずっと探し回る両親の姿が!僕が死んだことにして兄さんを僕に重ねている姿が!それでもあの日常に戻れるなら・・・僕は僕を殺す。」


鬼灯は近くの薔薇に腕をぶつけて血が出るがそれすら気にせず叫ぶ。

あまりに悲壮な覚悟に雪は言葉が一瞬出てこなかった。


「それでもあなたがそんなふうに苦しんでいる姿をお兄さんが喜ぶわけない。あなたはお兄さんじゃない。いつか絶対に苦しくなる。だからあなたはお兄さんになるためじゃなくてあなたの存在を両親に思い出させるために強くなるべきだと私は思います。」


「それが出来るなら僕はここまで苦しんだりしないんだろうな。失礼するよ。話すんじゃなかった。」


鬼灯は庭園を出て行ってしまった。


「私だって緋真姉や母さんのようになりたいと思ったことはある。能力を使いたいって。でもどんなに真似ても努力してもその人にはなれないんだよ・・・!」

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