一年選抜本戦 司VS澪3
司の断末魔?の後に司を中心に魔力光が結界内に溢れる。それは全体に広がり澪も包み込んだ。
誰もが澪が勝利したことを確信した。
ただ一人を除いて。
「こんなので司くんがやられるわけない。玄、鳳凰、タマ私の周りに結界張って!」
結界を張った瞬間何かが接近してきた。
「みんな、正面何か来る!全開で結界維持して!」
バギッバキバキバキッ
「嘘っ【五神強化】で高めた魔力で青龍抜きとはいえ作った【神獣結界】よ!?いくら司くんでも壊せるわけない、まさか!?」
澪は結界を囮にして後ろに飛び退いた。すると結界は粉々に破壊された。
光が収まり司の姿が見えてきた。そこにいたのは異形と化した司の姿だった。
「危なかったぜ、まさか魔力を詰め込まれて爆死しかけるとはな。」
「一体どうやって助かったの?それにその姿は?」
今の司は頭に日本の反り返った鋭い2本のツノと腰あたりに尻尾が生えている。瞳孔は縦に裂けまるで龍が人の姿になったような状態だった。
「咄嗟に魔力を出してそれでもまだ大量にあったからヤバかったんだが化紺先輩のおかげで助かったよ。俺は今まで自分の能力を勘違いしていたみたいなんだ。」
「勘違い?」
「龍の鱗を纏う能力だと俺は思っていた。だがそれは能力の一端に過ぎなかったんだ。鱗に全属性を込められるようになって初めて本当の意味で覚醒したらしい。俺の本当の能力は【龍人化】。龍を纏い龍に成る。そういう能力だ。」
「じゃあその姿は?」
「【龍人】とでも言うのかな?化紺先輩の話が本当なら大昔に今の俺みたいなやつが先祖にいるんだろ。前の試合のやつはこれの失敗作なんだよ。どうにも今の俺の魔力量だと中途半端な変異しか出来ないみたいでな。俺の身に余る魔力があってようやくって感じだ。」
「確かに今の司くんはさっきまでとは比べ物にならないくらい強い。でもコレ忘れてないかしら?【四神封陣】」
また結界の端に式神を配置した澪は司を拘束するために術を発動する。
(司くんが私に本気を出してくれてる!ここで答えないでどうするの私!一生友達のままでいるつもり!?)
「ぐっ!さっきより拘束が強いな・・・龍の力が増えたからか。でも
「同じ手が通じないのもわかってる!金、銀【要石】解除ォ!」
綾の両脇に黄金色と白色の狐が突如現れる。二匹の狐がコォーーンと鳴くと二匹の目の前に透明な石が一つ現れて割れる。
その瞬間司は地面に片膝をついた。
「おっも!これは重力か?だけど澪が何かしたような感じはない。何か別のとこからだ!さっき割れた石あたりが怪しいな。」
「くぅ!司くんは確かに強くなった。けどまだ使いこなしてないみたいね。無駄になっている魔力がからだの重りになってるみたい。司くんの魔力が無くなるまで私はこの術を止めなければ私の勝ちよ!」
(確かに澪のいう通り瞬間的にならともかくいつもみたいに動き回るにはまだ付け焼き刃すぎる。せめてこの重力が無くなれば澪を倒せるんだが・・・まてよ?四神の時も狐も地面に足をついていた。そういうもんかと思ってたがまさか)
「上、か?」
「ッ!金、銀司くんに攻撃しなさい!早く!」
「遅い!【ブレス】!これの原因はアイツか!」
司が結界上部に口からブレスを放つと上空の景色が歪んで空に蜘蛛の巣が貼ってあることに気づいた。その蜘蛛の巣はまるで魔法陣のようになっている。
「さっきの石は結界内にずっとかかる重力を誤魔化すためか!確かに無差別に効果を発揮させるのならこの方法でもありか。これを消し去れば良いんだな。【ブレス】!」
司が再度ブレスを放つと蜘蛛の巣の何本かは切れたのだがまたすぐに修復される。
「蜘蛛みたいな奴がいるのか?どうにかするならそいつを先にやらねぇと。集中しろ・・・チャンスは一度逃せばもう魔力切れだ。【龍の巣】!」
司は上空にある蜘蛛の巣に乱回転する竜巻を生み出しその中に雷を落とした。実は複数体いた子土蜘蛛たちはまとめてやられたのだった。
だがそこで司の龍人化が解ける。それに伴って拘束から逃れたが魔力はほぼそこを突きかけていた。
「みんな!後少ししかない私の魔力全部託す、司くんにありったけ叩き込んで!!」
鳳凰が火をタマが雷を玄が水を司に向けて放つ。
水蒸気爆発を起こした式神たちはそのまま消滅。司もやられたと思われたが澪に影がかかる。
「上!?」
「綾に何度も爆発食らわせられてるから慣れてるよ!文字通り薄皮一枚鱗を纏ってなァ!【雷爪】!」
澪が気がついた頃にはすでに頭上にいた為回避することもできずに直撃する。
「勝者 【龍堂 司】!」
割れんばかりの歓声が会場に響き渡る。その中で二人は
「司くん、私強かったでしょ?」
「おう、今までで一番死ぬかと思ったよ。」
「そっか嬉しい・・・・・・ぐずっ勝ちたかったなぁ・・!」
澪は寝そべりながら顔を隠して悔しがる。まだ見ぬ恋敵に届かなかったと思って。
「また今度やろうぜ?また二人で。澪は説明上手いし最近話してみて楽しいからな!陰陽道のこともっと教えてくれ!」
司は澪に手を差し出し澪を引っ張る。
「うんっ!」
司に自分とまた戦いたい、話したい、楽しいと言われたことで少しは意識してくれたと思った澪はいい笑顔をした。
だがよく思い出してほしい。外界と隔絶された夢幻結界は試合が終了したことで消えている。ならば司たちの声は外に聞こえているのだ。
司は持ち前のイケメンで無意識に言っているが側から見るとほぼ告白に近い文面だった。
『おっと〜?なにやら友情以上の何かが芽生えたような気がするのはわたしだけでしょうか?何やら会場からは黄色い歓声と冷やかし、呪詛が聞こえてくるようです!』
『うん、若いなぁ、青春だ!』
「ふぇ?わ、私と司くんが?ふきゅーーーー。」
「お、おい?澪?澪!」
緊張からの解放と会場からの反応、そして妄想したことで精神が限界に達し澪は気絶したのだった。




