Go along
花の蜜って、美味しいよね
川のせせらぎ、木々のざわめき、その中に混じる子どもの声。ただ人が踏み固めた道を私たちは抜けてゆく。
「……もぐもぐ」
フリューゲルと話していると、アリアの方からこの場に似つかわしくない擬音が聞こえた。
「アリア? 何やってるの?」
何となしに振り返るアリアの口元には薄い桃色の花弁が添えられていた。
「えーと、あれだよ! 花が襲いかかってきたの!」
視線を何処かに彷徨わせて、必死に誤魔化そうとしている。……壮絶な花との争いをひとしきり語った後、私は口を出した。
「……要するに、まだ口が寂しいのね。そんなんじゃ、いつか太るわよ」
アリアは食道楽だ。美味しいものは何でも好きで、物珍しい何かに目が留まると中々離れない。
……父さんはそんなアリアを甘やかそうとするから、気付いたら手に何かを抱えている。
「……うー、分かってるよ」
笑顔を絶やすことのない彼女も、食べ物の事になると俯いてしまう。いずれ困るのはアリア自身なので、私がこれ以上とやかく言うつもりはない。
「…………なら、食べた分排出できる薬を作れたら問題ない? フィーネお姉ちゃん」
犬の上で事の次第を見ていたフリューゲルがそんな事を言う。
「フリューゲル、デリカシーがないわよ」
「それは何か嫌ー!」
頭を抱えて叫ぶアリアの絶叫は森に響き渡った。
花弁をポットに入れて、見た目を楽しむのも洒落てるよね。
ああ、お茶を優雅に飲んで、ゆっくりしたいよ…