Go back home
家に帰るがbackという時点で、誰にとっても家とは前線から離れた安らげる場所なんだろうな……家に帰りたいと呟いてしまうくらいに。
聖女祭り、それは一年の終わりに行うドルイド特有の祭りだ。
村の中から成人する女性を一人選び、その女性を聖女として盛大に祝う。社交的な場でもあるので、その場での出会いが結構に向かったりすることも多いそうな。
だからか、前世でいうところの結婚式の役割も兼任しているらしい。面倒だから、一斉に行った方が楽という感覚でやっている気がするが。
「今年も、賑やかになってきたわね」
徐々に飾り付けられていく家々を、私は遠目に観察している。実は、私はまだ祭りに参加したことはない。祭りは年明けまで続く祭りだから、家が遠くにあるので諦めている。一人でも往復出来るようになるまでは参加するつもりもない。
「さて、あの子を探しに行きますか」
成長と行動範囲が比例している彼女を連れ戻す為に、カーメルと道沿いに村まで降りていく。
*
「あなたには関係ないでしょ! フリューゲルは今のままでもいいの!」
「はあっ?! 男なら、立ち向かう勇気くらいは必要だろ!」
カーメルの鼻を頼りに進むと、アリアと見知らぬ少年が言い争っていた。
「これは……どういうこと?」
私の呟いた疑問に、二人から少し離れたところにいたフリューゲルがこちらに気付いた。
「あっ、フィーネお姉ちゃん」
フリューゲルの言葉に、いち早く反応したのはアリアだった。
「フィーちゃん、聞いてよっ! こいつがっ——」
「はいはい、落ち着いて……えっと、そこの君。何でこうなったか教えてくれる?」
アリアをどうどうと宥めながら、アリアと言い争っていた少年——の後ろで少年の裾を引いていた少女に声をかける。
「わっ、私ですか?!」
「そうよ、貴方が一番冷静そうだから」
先程の会話から、起点がフリューゲルで、二人が言い争っていたと推測出来る。彼らに聞くのは後でいい、主観が混ざって聞きたい事を見失うから。もし事実を知りたいなら、少し離れたところにいた関係者が望ましい。
「え、えっとですね——」
おどおどしながらも、精一杯説明してくれた少女の話を整理するとこうなる。
一・フリューゲルが村の子供に虐められていたらしい。
ニ・それをアリアと言い争っていた少年が止めてくれた。
三・何処からともなく現れたアリアが、フリューゲルに説教をしている少年に怒った。
簡単にまとめると、
「……アリア、あんたはフリューゲルの側にいると言ってたわよね?」
最近では、子供でも二人か、カーメルと一緒なら村まで降りていいと言い付けられている。
私の疑問に、アリアは少し申し訳なさそうに顔を伏せる。
「……フィーちゃんは、私が村の子と遊ぶ事があるって知ってるよね? 実はリューくんが虐められている間、リューくんから離されてたんだ。まさか、私を遠ざける為に話しかけてくるとは思わなくて、それで……ごめん、言い訳だって分かってる……」
「っ、……それは気にしなくていいわよ。そんなの予想がつくわけないから」
子どもが思いついたというには、かなり悪辣な手法だ。人は悪意なら跳ね除ける事が出来るが、善意は難しい。
……子ども故の無邪気さは、ここまで残酷になれるのか。
「君たちもありがとね。ロデルくんとベラちゃん」
「気にするな、あいつらが徒党を組んで弱いものいじめをするのを見てられなかっただけだ。それより、お前の弟……少しは言い返すくらいの根性を持った方がいい。舐められたら、あいつらは寄ってくるからな」
ああ、それで言い争っていたのか。フリューゲルを睨むロデルとの間にアリアが割って入る。
「別に強くなる必要なんてないじゃない! 悪いのはあっちで、リューくんは悪くないんだから!」
既にこんな事が起こってるから強く出れないアリアと、大きく踏み込む気はないが親切心で助言しているロデル。どちらも線を踏み越えないから、アリアの引かない性格もあって、ぐだぐだと続いていたのだろうな。
「……そうね。理想論としては、フリューゲルが”自力で”この問題を対処できたら、良いと思うわ」
「ちょっと、フィーちゃん?!?!」
いつも私を振り回すアリアを、今私が振り回せていると思うと恨みを晴らしたくもあるが……
「でも、それはあくまで理想論。フリューゲルにその意思があって、初めて成せるものよ」
「……む、フィーちゃんはどっちなの?」
煮え切らない答えに、アリアが不満そうにしている。
「別に、どっちでもないわよ。フリューゲルのしたいようにすればいいわ。二人とも、いつかまた会いましょう」
口を膨らませたアリアの首根っこを掴み、私たちは帰路に着いた。
祭りって、出会いの側面が強そうなイメージが。
いろんな作品で、祭りを背景に駆け落ちとか定番ネタなのかな? ロマンティックではある気がする。
ドルイドは、家をそこまで重視しない。
ドルイドにとって、家とは森であり自然の中にあるものだから。
もし助けを求める声に差し出す手が
君の拠り所となるのは構わない
ただ君が前進するための障害となるならば
躊躇いなく君に手を伸ばすことはできるだろうか




