乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私が、生き残るために必死に印象を良くする行動をしていたら、いつの間にかヒロインの代わりにモテモテになってしまっていたのだが ~プロローグ~
「……これは一体どういうことなの……」
目を覚ますと、見覚えのある部屋のベッドの上で、私は横になっていた。
……取り敢えず、記憶を辿ってみよう……
確か、乙女ゲームをしている時に地震があって、でもちょうどいいシーンだったから止めるに止められなくて続けていたら、天井が崩れてきて………
「……もしかして、私、あの時に天井に押しつぶされて、死んでしまったの? ……でも、私の身体は動かせるのよね……。それに、ここもどこか見たことのある部屋だし……」
部屋を見渡してみると、大きな鏡が置かれていたので、私はベッドから降りて鏡の前に立った。
「って、これ、私がしていた乙女ゲームの中に出てくる悪役令嬢だよね!?」
私は自分の姿を鏡で見て驚いた。
「……これはどういうことなの?」
乙女ゲームのやり過ぎで、夢の中でも妄想してしまうほど、乙女ゲーム脳になってしまったのか。
「でも、どうせ夢を見るなら、悪役令嬢ではなくて、ヒロインになりたかったんだけどなぁ……」
「それは、違うよ」
「え、誰? どこにいるの?」
後ろか声が聞こえてきたので振り向くが誰もいない。
「下見て、下……」
「下? あ、そんなところに……」
下を見ると、小柄で可愛い感じの男の子が、すぐ傍に立っていた。
「もう、失礼だなぁ……。こう見えても、ボクはこの世界の神様なんだぞ!」
男の子がプンプンと怒っている。
「神様!?」
「そう、だから、もっとボクを敬って……」
「なるほど、ここではそういう遊びが流行ってるんだね」
「そうそう、神様のふりをしてみたりしてね……、って、違うよ!!」
「え、違うの?」
「違うよ、ボクは本当にこの世界の神様なんだ」
「分かった、分かった」
私はそう言いながら、自称神様の少年の頭を撫でた。
まあ、可愛いから、神様でも何でもいいや。
「……本当に分かってる?」
少年にジト目で見られた。
「……それよりも、夢の世界じゃないって、どういうこと?」
「お姉さんにも身に覚えがあると思うけど、お姉さんの身体は元の世界の地震で天井に押しつぶされて死んでしまったんだ」
「え? どうして、それを……」
「だから、神様って言ってるのに……」
ちょっと、すねている。
……でも、地震のことを知ってるってことは、本当に神様なのかも……
それにしても……
……やっぱり、私、死んじゃったんだ……
そうかもしれないと思っていたとはいえ、実際に死を認識すると悲しくなってくる。
「それで話の続きなんだけど、実はお願いしたいことがあって、君にこの世界に転生してもらったんだ」
「そうなの?」
「この世界の令嬢は悪役令嬢が多くて、君の元の人格だった令嬢も漏れなく、悪役令嬢だったんだけど……。この世界の神様としては、悪役令嬢と呼ばれる令嬢を減らしたいと思っていて……」
「……なるほど……」
何となく私にお願いしたいことが分かった。
「悪役令嬢に転生した私が良い行いをすることで、悪役令嬢の印象を変えて欲しいということですね」
「うん、まさにそれをお願いしたいと思っていたんだ」
「分かりました、いいですよ」
「え? いいの?」
すんなり了承したからか、少年神様が驚いている。
「はい、あのままだと、ただ死んでしまうだけだったわけだし、正直、転生してもらえて、まだ生き続けられるだけでも感謝というか……」
「ありがとう! お姉さん!」
少年神様にギュッと抱きつかれた。
「………………」
うん、美少年に抱きつかれるというのも悪くない。
基本的にはイケメン推しなのだが、新たな性癖が生まれそうだ。
「……でも、お姉さんが転生した悪役令嬢は、悪役令嬢の中でもかなりの悪役令嬢なんだ……。それだけは、先に謝っておくね……」
……それは既に知っている……
私がこの世界のゲームをしていた時、私が転生したこの悪役令嬢に、何度、憤りを覚えたか数えきれない……
……そして、何もしなければ、いつか殺されてしまうということも、私は知っている……
「……それで、今の私はどういう状況なのかな?」
「昨日、舞踏会に参加して、悪口雑言の限りを尽くした後に、酔い潰れてベッドで倒れていたところなんだけど……」
……相変わらず、印象最悪の悪役令嬢だ……
でも、それなら、ストーリーの序盤の方だから、これから行うはずだった悪魔のような所業を考えると、不幸中の幸いなのかもしれない。
「大体の状況は分かったわ。まあ、やれるだけやってみるわね」
「ありがとうございます。お姉さん」
そう言って、少年神様はお辞儀をした。
うん、謙虚な神様だ。
「ボクは立場上、この世界に干渉できないんだけど、助言くらいならできるから、また困ったことがあれば、いつでも呼んで下さいね」
え、いつでも美少年に会えるって、それが一番の報酬じゃ……
そう心の中で、やったー!と小さくガッツポーズをしている間に、少年神様は姿を消した。
こうして、乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私が生き残るため、必死に印象を良くして行かなければならないという第二の人生が始まった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!!
タイトルのストーリーをイメージしたプロローグを書いてみました。
評価が多いと続きを書きたくなる気持ちになりやすいので、もし続きを書いて欲しいと思った方がいましたら、画面下の「☆☆☆☆☆」から評価をよろしくお願いします。
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感想も気軽に書いていただければと思います。
『乙女ゲームの悪役令嬢に転生したが、ヒロインを求愛する王子兄弟に殺されそうになっていたタイミングだったので、必死に逃げているところを一番の推しメンの近衛騎士に助けられてテンションが上がってしまった』
というタイトルの新作短編も投稿しましたので、よかったらそちらも読んでいただけると嬉しいです。