表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きりきざむもの ものをはむもの2  作者: なるみなるみち
40/58

三章【おわりがはじまる】(11)

 機関室への侵入者は誰か。

 よりにもよって最悪が、ほとんど真っ暗なボイラー近くで蠢く半透明の(結界)のなかで、膝を抱えて安らかな顔をして眠りについていた。

 わずかに発光するその繭に近づいてよくみると、繊維のひとつひとつは細かい蜘蛛の糸のようでありながら、空気の動きによる影響を受けておらず、物質的な質量がないことがうかがえる。

 近づいて観察することは可能でも、攻撃を試みた者は例外なく死亡したという。

 この繭がガスさえも遮断しており、手の施しようもないという報告だった。

 機関室は地下三階からファンネルの天辺まで突き抜けで、船内でも最大の空間である。

 それが敵だとわかっていても手が出せない。「もし可能なら機関室ごと海洋投棄したいものですな」と、船内三役の最後のひとりである機関長が愚痴をこぼす。

 しかし、まさか船を沈めるわけにもいくまい。

 ヤヌスの表の顔が客船であるかぎり、非武装の船客を手にかけることなどできはしないのだ。

 ヤヌスが無条件に始末していいのは、この少女及び正規のパッセンジャーではない特殊部隊残存一三名と、船長が処刑宣告を下した神父、それとあと二人の不法乗船者たちだけだ。

 ヤヌスの目のほとんどが教会に立てこもっている特殊部隊を注視しているが、そちらはまだ動く気配がない。

 船長は停船を指示し、機関長がボイラーと蒸気タービン発電機を停止させた。

 あとはボイラーを電気的に再始動するための非常予備電源しかない。ここから先、船内は電気がないままで負傷者の手当を行わければならない。

 全客室、売店、各施設のドアをすべて開放させた。電子キーや自動ドアは通電していなければロック解除もできなくなる。不便だが、それぐらいしかあぶり出す方法がない。

 自然光が射さない船内の密閉空間は、完全な暗闇になる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ