三章【おわりがはじまる】(9)
一方で、特殊部隊は気楽なものだった。
あとは神父が危険物と判断したものを始末するだけでいい。
そんなことはほっておいてもヤヌスがやるであろうから、部隊は水道の蛇口を適度に開放したまま、テレビを点けっぱなしにしたり、オーディオを鳴らし、部屋のキーはかけたままで、うまく退出し、とっくにそこにはいない。
彼らは人知れず教会に集い、部隊の再編成にあたっている。
狙撃手を全員ロストしたのは多少の痛手だが、必要ない。
なぜならばあれは、もう狙撃で仕留めることは不可能な存在だからだ。
武力が通じないなら、餓死するまで気長に待てばよい。
全乗員二〇〇〇名を死に至らせる毒物は最初から貯水槽にセットさせてある。
乗組員にも内通者がおり、大事なことは報告させないよう手を打っている。
ペットボトルの飲料水の備蓄もそろそろ限界に迫っているはずだ。
「わたしは指先ひとつ動かさず盤面が勝手に動いているのを眺めるのが大好きでね。自分の手を汚したくないんだ」
神父はひどく愉快そうだ。こちらはいつでも原子力潜水艦から真水の供給を受けることが可能だ。
「あとは諸君らの好きなように料理したまえ」