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高天原の思い出  作者: 天野かえで
弥生編
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お伊勢さん


 真夏の日本は暑い。

ちょうど盆前は一番暑い時期だ。


そんな時期に、斉藤弥生は三重県伊勢市にある伊勢神宮へ、家族で旅行に来ていた。


弥生は、宗教が大嫌いだった。

お寺も神社も大嫌い。

胡散臭いし、なんか面倒臭い。


それなのに、母親の皐月は小さい頃から馬鹿みたいに神社仏閣に弥生を連れて行こうとするのだ。


 汗だくになりながら鳥居を潜る。


「ほら、弥生ちゃん、綺麗よ〜」

「暑いんだから、喋りかけないで…」

「あら、大丈夫?お水飲む?」


 喋りかけるなといっているのに、お構いなしに喋りかけてくる。


それにしても今日は暑すぎる。


水は飲んでいるのに、

もうぬるいし、

体はどんどん重くなる。


周りを見ても、こんなに辛そうな人は他にいない。


こんなとこまで来て、

こんな辛い思いして、

神様なんてクソ喰らえだ。


どうせいないくせにさ。


何をしてくれるって言うんだ。


「日陰で休む?あの建物に入ってみる?座らないと弥生ちゃん死にそうよ」

「うん…」


 建物の中は涼しかった。こんな体調不良の娘を連れてきて「帰ろう」と言い出さないあたりが、この母親はさすがだと思う。

自分のことばかり優先する。


弥生は今年は受験だっていってるのに夏休みに


『塾も土日はお休みでしょ?ちょっとだけ息抜きしましょうよ〜』


と無理矢理三重まで連れ出された。


くそったれだ。


「さて、そろそろ本殿まで頑張って行っちゃわない?」

「ええ…いいよ、私ここで待ってるから、お母さんみんなと行ってきて」

「そんなっ!もったいない」


 母は腕を掴んできた。


「は?」

「行くわよ、私、弥生ちゃんの合格祈願しやうと思ってたんだから!」


 合格させたかったら、家で勉強させてくれ…。


と思いながらも、母の押しにはいつも勝てず、弥生は引っ張られながら本殿へ向かった。


本殿までの参道は、大きな木で影が作られていて少し涼しかったが、人がたくさんいたしやっぱりしんどかった。


少し回復したけれど、視界がぐるぐる回っている。


母に引かれながら階段を上がって、本殿の目の前に到着した。


「弥生ちゃんのために、ママ1000円いれちゃお」


 隣で鼻の穴を膨らませた母が、手を合わせて必死に拝んでいる。


弥生は、そこでふらっと足を取られ、そこで意識が途切れた。


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