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光雷反転

「【フラッシュ】!!」


僧侶の手が俺に向けられた瞬間閃光が放たれ咄嗟に目を瞑ってしまう。


ちっ、目眩ましか!!


「はああっ!!」


俺が視界が効かない状態になった瞬間、剣士が剣を振るうのを感覚的に察知する。


目を瞑った状態で臭いを頼りに剣を防いで弾き、拳を振るおうとするが斥候のナイフが真下から振るわれる。


肘鉄でナイフを弾き空気の砲弾を放つが回避される。それと同時に剣の突きが放たれる。


身を逸らして回避し剣士が止まると同時に振り返り様に腰の回転から放たれる斬撃を【硬斬】で弾く。


剣士が剣で接近戦を仕掛け絶対に生まれる隙を斥候のナイフがカバーする。


「【シャインニードル】!!」


そして止めを僧侶が行う……と言ったところか。


放たれる光の矢を直感で感知し土の壁で防ぐ。それと同時に土の槍を幾つも作り一斉に剣士に向けて放つ。


剣士は剣を縦横無尽に振るい槍を全て地面に落とし槍を射ち終えた瞬間一気に【加速】を発動させ肉薄する。


視界は戻ったがその瞬間これかよ……!これでどうだ!!


「ガアッ!!」

「【火霊流剣術】!!」


【硬化】を付与した右の掌底と剣士の右手に持った剣の突きがぶつかり合い、拮抗する。


「グッ!?」

「なっ!?」


その瞬間俺と剣士の腕に裂傷が走り血飛沫を散らす。


咄嗟に身を引き後ろに跳躍。それと同時に左手で風の刃を放ち右腕を治癒する。


何だったんだ今のは……。互いの力が互いの腕を伝って攻撃していたような気がする。


だが、それは今は構っている暇はない。魔力の流れも荒ぶっていて【回復魔法】による回復速度が遅いのだ。さっき言っていた【火霊流剣術】とか言うやつのせいだろうか。


調べる時間はないから内容は分からないが攻撃を与えた生物の魔力を昂らせ魔法の暴発を狙うものだろう。


「グルッ」


左手の掌で飛んできたナイフを防ぎ飛んできた方向の草むらに向けて風の刃を扇状に放つ。


斥候は身を翻して回避しながら空中で四本の針を俺の周りに向けて放つ。


これは……まさか!


「オオオ!!」

「【シャインチェイン】」


周囲の土を魔法で持ち上げた瞬間針が輝き頭すれすれで鎖がぶつかり合う。


やっぱり魔法の発動をするための媒体か。あの僧侶の光の魔法は何かしらの媒体がなければ使えないのだろうか。


剣士の剣と【硬斬】を何度も打ち合わせそれと同時に【風刃】を放ち斥候を牽制する。


流石にあそこまで【風刃】を届かせるのは難しいしな。


「グルアッ!!」」

「くっ……!」


張り手を顔面に決め後退する剣士に向けて【風刃】を放つ。剣士は横に転がり回避し剣を投げつけてくる。


咄嗟に身体を回避するが剣士と距離を開けられる。


この距離なら……届く!


「オオオオオオオン!」

「がっ――!?」


【硬拳】で殴る動作をした瞬間、剣士の腹に拳が入り一気に後方に飛ばされる。


賭けと直感の【殺戮】だったが成功した。今のは鎧もひしゃげる程の威力だったらしく、かなりのダメージが入っている筈だ。


「今だ……!やれ!!」


いや、違う。これは……!


俺が辺りに散らばる魔力に気づいた瞬間、身体を光の鎖で拘束される。


俺が【殺戮】を利用した遠当てをすることを読んでいたのか。まずい……!この状況はまずい……!


「いきます!【シャインスパーク】!!」


あ、これは死んだ。


僧侶の声と共に真上から白い雷が俺の身体に落ちる。


鳴り響く轟音と共に俺の身体を中心にクレーター状の陥没ができ、その周りの草花は焼け焦げていく。


この火力の一撃の中でも俺の意識はハッキリとしている。


「ゴフッ!?」

「なっ!?」

「ガリア!?」


何故なら、ダメージを負っていないからな。


突然の吐血と共に地面に膝を付く僧侶の周りに慌てて剣士と斥候が駆け寄る。魔力が緩んだところで鎖を破壊し抜け出る。


【シャインニードル】……だったか。あの魔法なら今ので終わりだったが、見誤まったな。こっちだってこれを使う事になるとは思ってもいなかった。


剣士たちを警戒しながら表示される画面に目を落とす。


【呪毒:魔法由来の攻撃を無効化。

本来受けるダメージを術者に与える。

受けたダメージは一定時間回復不可。

クールタイムは六〇分】


このスキルは魔法由来、つまりは純粋な魔法でしか効果を発動しない。俺のような辺りの大気や土を使用したりする魔法には効果がない。その上、一度発動すれば六〇分の間は使用出来ない。二度目の攻撃は無効化することが出来ない。


しかも威力は相手の魔法の威力依存。威力の上昇は俺のスキルでは不可能だ。


だが今のように高火力で決まれば相手にとっては大ダメージ、まさに諸刃の剣ともいえるスキルだ。


画面を閉じ、剣士たちの方を向くと剣士が剣を向けて立っており、その後ろで斥候が僧侶を抱えて背中を向けて走りっていた。


ふん……殿か。まあ必勝の型が崩れ、一人がダウンを取られてしまった以上戦闘を続行させるのは難しいしな。


それに、少し試してみたかったしな。


「グルルルルルル……おおおおおおおおお!!」


【咆哮】と共に【人化】を発動し人間の状態へと姿を変える。


まず、魔物としての姿は魔物相手なら兎も角人間相手にはあまりにも不向き過ぎる。的が大きいため被弾が多くなってしまう。それでも問題ないとは言え、普通に不愉快だ。傷が多くなってしまうし戦闘の時間が長くなってしまう。


次に、人間の状態で人間と戦ってみたい。この剣士は試し切りにはちょうど良い程度の実力がある訳だからな。


最後に……相手の本気をねじ伏せてやりたい。理屈も意味もない、獣として命を賭けるだけの話だ。


「【人化】……一部の高ランクの魔物が持つ人に化けるスキルか」

「まあ、そうだな」

「だが、容赦は――しない!!」


【加速】の発動と共に剣士は間合いを詰め剣を真っ直ぐに振り下ろす。


それを避けることなく【硬化】を纏った手で剣を掴む。威力で足が地面に沈み、剣士は驚愕と共に地面を蹴って間合いから外れる。


「【福音】」


間合いから外れた瞬間、手を向けて指を弾く。


ラッパのような音と共に衝撃波が放たれ剣士を吹き飛ばす。


「がっ……!?」

「【福音】。良い得物だと思わないか?」


地面を何度もバウンドしながらも起き上がり剣を向ける兵士に向けて掌を見せ、拳を構える。


魔物の形態は力押しには強いが【福音】や【呪詛】といった幾つかのスキルが封印されていた。それが解除されたのだ、存分に使わせて貰うぞ。


「一つ、問おう」

「何をだ……!!」

「お前の名だ、実力者を覚えてないのは流石に気が引けるからな」


羽織っていた着物を靡かせながら剣士に向けて問いかける。


こいつはまだ若い。強くなって戦う方が面白いし、ここで潰すだけ潰しておくがまだ殺すつもりはない。


故に、名前くらいは聞いてといてやる。


「俺の名はライン、Aランク冒険者でありアガート学園三年、ライン・セルデシアだ」

「アガート学園……ねぇ」


カーリーたちの先輩に当たる人物か。なら、より殺したくはないな。


ま、それでも手を抜くつもりはないし、殺すつもりはないが死んだら自分を恨むんだな。



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