冒険者激突
深く濃い土の匂いと朝日で目を覚まし、起き上がる。
久々に森で寝起きしたから洞窟を作るのを忘れてたな。単純な実力なら問題ないにしろ、奇襲を食らったら即アウトだった。注意しないとな。
朝食の燻製肉を食べ一度城壁を見た後背を向けて歩き始める。
あいつらには悪いが、これもあいつらのためだ。それを理解しても良いし理解しなくても良い。あくまでこれは寄り道に過ぎない訳だからな。
あ、そうだ。久々にステータスを見よう。
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名称:エリラル 種族:ベルセルク
Lv.六
攻撃力:六二四
防御力:七〇三
素早さ:三四四
魔力:八二二
通常アクティブスキル:【収束】【放出】【探知・嗅覚】【忍耐】【血液陶酔】【殺戮魔拳】【戦乱狂演】【並列思考】【記録保存】【幻視】【罪禍の虚眼】【虚ろ瞳】【他心通】【五業堕とし】【影体】【神魔の瞳】【魔曲・獣歌】【魔曲・狂歌】【呪刻】【呪毒】【福音】【死告】【人格汚染】【眷属化・精霊種】【調律】【人化】
魔法アクティブスキル:【硬化】【硬斬】【土属性魔法】【不血魔爪】【吸血魔爪】【幻術】【幻夢の魔霧】【召喚術】【追放術】【回復魔法】【天翼摂理】【魔力糸】【エンチャント】【狂気庭園】【呪詛】【狂乱】
通常パッシブスキル:【転生者】【逸脱種】【押し潰し】【ランナー】【剛力】【拳打】【毒耐性】【魔力操作】【自然治癒】【殺戮】【狂戦士】【百頭狩り】【狩人】【悪食】【悪魔種】【悪辣】【非道の獣】【悪魔信仰】【暗視】【精霊刻印】【精霊淘汰】【傾国】【狂気】【冒涜】
耐性パッシブスキル:【痛覚耐性】【熱帯性】【火属性耐性】【魔蝕の鎧】【精神汚染無効】【冒涜無効】
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うん、ステータスの上がり具合がとんでもないな。成長促進系の効果があるスキルが多いから相乗効果が発生しているのかもな。それにしても、【傾国】やら【精霊淘汰】やら、人間に対して悪ともいえるスキルが多いな。スキルの効果が強いだけに無下に出来ないのが不愉快だ。
だが、メリットであるなら受け入れるべきか。一々考えても時間の無駄でしかないしな。
森を抜け草原地帯を歩きながらのんびりとあくびをする。
ナイラの記憶から抜き取ったがここら辺一帯は数百年前は森林地帯だったらしい。
だが、ここら辺一帯を治めていた領主が近くの山に住まうドラゴンを討伐せよと命令を出し、多くの兵士をその山に……秘境の一つ、『ウラル山』に攻めいったのが惨劇の始まりだった。
『ウラル山』に住まう『神龍』、雷神龍シャガールの一撃で討伐隊は壊滅し、怒り狂ったシャガールはここの領地に向け自身の兵を差し向けた。
だが、ここら一帯は『水の泉』の『大聖霊』、水聖霊ウンディーネの領地でもあった。そのため、ウンディーネも多くの兵を差し向け、自身もシャガールと衝突した。
元から仲の悪かった二体は激突し天は稲妻が走り、地は何百年に一度の大洪水に匹敵する程の水が一帯を覆い、両者の魔法やブレスが全てを破壊し尽くしてしまった。
七日七晩続いた戦い最後は互いに瀕死となり互いに兵を引いたからであり、その頃にはここら辺の住民は半数以下にまで減ってしまい、ここら辺の森は消滅してしまった。ここら辺の草原地帯はその名残なのだ。
こんな風に『大聖霊』や『神龍』、『大罪』、『大公』の衝突の跡は世界各地にあり、今でも衝突しているところもある程だ。
俺も相手が勝手に『大罪』の派閥に入れてしまっているせいで『大聖霊』から目の敵にされてしまうだろうし、大変な事になってしまったな。
はぁ……まあその時はそのときだ、全力で土下座して逃げよう。
「グルル……」
人間の匂いがするな。さっさと脇に逸隠れて戦うのを回避
「グルアッ!!」
出来ないかちくしょう!!
放たれた光の矢を【硬拳】の裏拳で防ぐ。火花が散る程の衝撃と共に腕を真後ろに弾かれ矢が頬を掠める。
頬の血を拭い、立ち上がる。
あの矢は魔法と言うよりも針のようなものだった。純粋な魔法ではなく道具を混ぜられた魔法、と言ったところか。
「はああっ!!」
間合いを一瞬で積め肉薄した青年の逆袈裟の切り上げを身を逸らして回避し【硬化】を付与した【魔力糸】を振るう。
青年は剣で全てを弾くと俺の腹を蹴り間合いを開ける。
「【シャインニードル】!!」
再び放たれた光の針を【魔力糸】を纏めて糸玉にして【硬化】させ防ぐ。それと同時に糸の中に針を入れ砕き、無力化させる。
無力化した瞬間咄嗟に身を逸らして剣の振り下ろしを避け風の砲弾を放つ。青年の腹に直撃し、大きく空に舞うが回転して体勢を整えて地面に着地される。
剣をメインに扱う近接特化に魔法主軸の遠距離特化……もう一人、壁役か斥候がいるな。
「グルアッ!!」
そこか!!
臭いを嗅ぎとり発生源に向けて腕を振るい『風刃』を放ち投擲されたナイフを切り裂く。
「……!!」
その直線上にいた黒いマントに身を包んだいぬ耳の少女が身を翻して【風刃】を避けナイフを放つ。
それと同時に剣士が肉薄し剣を突き出す。
剣を回避しながら軌道が変わったナイフを土の壁で防ぎ、それと同時に剣士の追撃を【硬化】させた左手の肉球で防ぐ。
「なっ!?」
「グルアッ!!」
バックステップで間合いから抜けようとする剣士に近づくために足を進め間合いをほぼゼロにし【硬斬】を突き出す。
「【シャインニードル】!」
それと同時に光の矢が放たれ咄嗟に頭を後ろに逸らして回避する。
だが突きの間合いが短くなり剣士が間合い外れてしまう。その瞬間、剣の突きが放たれる。
咄嗟に空気の塊で防ぎ間合いから抜け出すが背後から放たれるナイフが背中刺さる。
その瞬間、身体が霞と消える。
「なっ!?」
「……!ガリア!!」
気づいたか。だが遅い!!
剣士と斥候の声と同時に潜航していた影から浮上し長距離にいたエルフの僧侶の背中に蹴りを打ち込む。
まさか、突きのタイミングで【幻術】に引っ掛かってる何て予想できないだろうな。特に、間合いから外れていた魔法使いにとってはな!
少女は地面を何度も転がるが十字架状の杖を地面に差して起き上がる。その隙に肉薄し腹に直接風の砲撃を打ち込む。
ん?この感覚は……ああ、なるほどな。
「がっ!!」
一気に剣士たちの方向に吹き飛ばされる僧侶は剣士に手を掴まれ勢いを失い、地面に立つ。
攻撃のダメージが少ないな。やはり、あの修道服は魔法のエネルギーを減衰させる魔道具の類いか。脚まで見える程の深いスリットには太腿に付けられた針もあるし、さっきの魔法はこいつが放ってきたのか。
「予想以上に強いな、あの魔物。僕たちの連携をあそこまで簡単に避けるか」
「ええ。そうですね。ここで倒さないとおぞましい惨劇が予想されます、ここで確実に仕留めましょう」
「……肯定」
殺気がすこぶる強いな。どうやら、相手も獲物から敵に思考をシフトしたか。
服装から考えて恐らく冒険者、しかも俺と対等に戦える事からAランク相当の実力者たちの集団だ。手加減できるとは思えない。
だが、これは丁度良い。
何せ、この身体の能力を把握するには丁度良い相手だ、命を賭ける価値がある。
「行くぞ、僕たちAランク冒険者の実力を見せつけてやる!」
「「了解」」
さあ、その自信ごと潰してやるよ。




