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閑話 愚皇子抹殺 sideタリス

「良い状況ね……本当に良い状況ね」


頭の中に響く声を聞きながら待合室に置かれている紅茶を啜る。


私は今、帝都の宮殿にいる。見た目は普通のエルフの頃の格好だが、背は高く胸も大きい。


肉体を組み替えるスキル、【変化】によって何時ものチンチクリンな格好からこんな風に美しい美女に身体を変えているわ。


勿論、元の姿に戻そうと思えば出来るけど……まあ別に構わないわ。何せ、最後のひと押しのためには人間の姿の方が都合が良いもの。


「それにしても……本当に馬鹿な皇子ね。こんなにも簡単に見ず知らずの私を入れてくれるのだから」


まあ、そのお陰で簡単に宮殿に侵入出来たのだけど。


紅茶に机に置き、口元を少しだけにやけさせる。

ここの宮殿の名前は『肉欲殿』。どこぞの馬鹿皇子が多額の税金を注ぎ込んで造り上げた帝都の南部にある白亜の宮殿だ。


名前の通り、馬鹿皇子が囲んだ貴族の小娘や奴隷のガキ、誘拐した街娘を宮殿内で軟禁し日夜酒池肉林の宴を行っているわ。


私も自分を『新人の娼婦』として売り込んだらあっさりと通してくれた。その際に馬鹿皇子と出会ったけど……少なくとも、あれに抱かれたいとは思わなかったわ。雰囲気も魔力も下劣な存在なのよね。気が滅入るわ。


「茶をお持ちします」

「あら、ありがとう」


部屋に入ってきた胸元を大きく開けられた破廉恥なメイド服を着た少女が空になったカップに紅茶を注ぐ。


あら、王宮の作法がしっかりしているわね。珍しい……くはないか。ここだと帝国の人質として来させられた貴族や属国の王族の子女何ていくらでもいるもの。


けど、この魔力……【精霊種】に近いかしら。まあ、そこら辺はどうでも良いかしら。


程よく注がれた紅茶を飲みながら熊さん……エリラルの事を頭に浮かべる。


エリラルは順調に私たちへ至る道を歩いている。そうでなくても私たちと敵対する事はないだろうけど……あのハーピィの少女に少し興味が湧くわ。あの柑橘系のオレンジ色の羽毛は【起源種】のものね。


手駒には……しなくても良いかな。流石に奪うと確実にエリラルに殺されてしまうもの。私は実力はそれ相応に強いけど流石に影からの奇襲はかなり手痛い。それに、彼のスキルはかなり強いし回避が困難。私でもまともに食らえばキツいダメージが入るでしょうね。


本気の彼を止めれるのは……同系統の【精霊種】の『憤怒』くらいかしら。


まあ、それは置いとくして……暇潰しにメイドと話そうかしら。


「ねぇ、貴女は何時くらいからこの宮殿に勤めてるの?」

「一年前です。……国が滅ぼされ、父が私と妹たちを人質に出したのです」

「一年前ね……」


となると、この子はあの国の……エリラルとブッキングさせた方が良いかしら。


「どうかなさいましたか?」

「いいえ、何でもないわ。ねえ、もし宮殿を出たら何をしたい?」

「妹たちに会いたいです。生きているかどうかすら知りませんが、生きているのなら会いたいです」

「あら、そうなの。それと、もう下がって良いわよ」

「畏まりました」


エルフのメイドを下がらせると紅茶を飲む。


生きているのなら、ね。まあ彼が動いている以上、王宮の方は問題ないでしょうし、私も少し動いた方が良いかしら。


久々に、あれをやるとしましょうか。


「よく来てくれた、タリスさん」

「お初にお目にかかります、ガルバート第一皇子殿下」


部屋に入ってきた肥満体型の豚を見てすぐに跪き豚が席に座るのを待つ。


座ったのを感じ取ったところで立ち上がり、椅子に座る。


ガルバート第一皇子。この帝国の第一皇子であり皇帝から寵愛を受け、育てられた。この男の妹と違い、傲慢を絵に描いた性格で欲しいものは何でも手に入れたくなる悪癖がある。その癖全てにおいて無能であり、優秀な妹とは極めて仲が悪い。


まあ、突くとしたらこの辺りかしらね。


「ぐっふっふっ……一度見た時からその透き通った柔肌が美しいのう」

「お褒めに頂き、ありがとうございます」


ううっ、ゾワッて来た……!この男と一分一秒と話したくないわ、さっさと用件を終わらせましょう。


「それでは始めましょうか」

「うむ、そうしよう」


着ていた服を脱ぎ捨て、奥のベッドに横になると同じく服を脱ぎ捨てた豚が私の上に四つん這いになる。


私の左の乳房を男の右手で掴み乱暴に揉み始める。


「ん!?」


そして私の口に深いキスをして粘液を無理矢理交換してくる。


あ、ダメだ。嫌悪感でもう堪忍できない。


「ガッ!?」

「……気持ち悪い」


豚の腹に【召喚術】で呼び出したナイフを突き刺す。豚が痛みのあまりベッドから転がり落ち、私は口元を手で拭い【水属性魔法】で洗い流す。


気持ち悪い……これならゴブリンに汚される方がまだマシよ。この暗く歪んだ魔力は忌々しいあの連中と同じだわ。


「な、なにを……!?」

「……失せなさい」

「ひ、ヒィ!!」


殺気に触れた瞬間、男は急いで扉に向かって駆け出す。


だが、男は扉の目の前で床に盛大に倒れる。


男が立ち上がろうとした瞬間、全身が痙攣し、目は白目を剥き、全身の毛穴から赤い魔力が吹き出し、地面に倒れもがき苦しむ。


そして、糸が途切れたように突然動かなくなった。


ふん……毒の効き目、もう少し速くした方が良かったかしら。でも、この豚をここで殺しておいて正解だったわ。もし、これを彼に見せてたら……怒りのあまり、帝都を破壊しかねないし。


ま、私にとっては別にどうでも良いのだけどね。


人間なんて殆んどが醜い存在だし、そこらの羽虫と変わらないわ。人間が羽虫を踏み潰したりするのと一緒で私は人間を操り弄ぶ。


「さあ、起きなさい」


右手から出した【魔力糸】を豚の死体に接続させる。すると、豚は起き上がり自分の脱ぎ捨てた服にを着替え始める。


【魔力糸】で魔力が完全に抜けきった空っぽの肉の塊を動かす、【死霊属性魔法】を持ってる『虚飾』なら別の手法を行っているだろうけど問題ないわ。


指を伝い、私の命令が肉塊に送られる。肉塊は命令に従いナイフを懐に仕舞い、部屋を出ていく。


王宮の自室に戻り次第糸を解けば簡単に不可能犯罪の完成よ。あの豚でも、流石に皇帝のお気にいりが死んだとなれば殺した奴を許せないだろう。

それに、あのナイフは聖王国の王家の紋様が刻まれている。我を失った皇帝ならあっさりと信じ、聖王国へ進行を始めるだろう。


二つの国がどうなるか、それを見るのは面白そうだし、それにエリラルがどう関わってくるかも興味があるわ。彼なら向こうに亡命したラスティアの事もあるし、確実に介入してくる筈よ。


この世界が動き出すのは恐らく一、二ヶ月後くらいかしら。どんな事になるか……ふふ、楽しみね。


あ、さっさと着替えここから抜け出そうかしら。そのついでにここに色々と小細工を仕掛けようかしら。流石に、エリラルもここを来る可能性もあるしね。



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