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激戦再開

「用事は終えたか?」

「ああ」


ミストたちと別れた後、再びエンゲツの隣に立つ。


ここでミストたちと顔を合わせてしまったが……ミストとカーリーたちが一緒に行動していたとは予想外だったな。そのまま少し人間性を得て貰いたいが……高望みし過ぎるのは止しておこう。


「さあ……来るぞ」


イスタリから放たれた風の砲撃をエンゲツは避け、俺は受け止める。


砲撃が俺に直撃する……その直前、俺の身体の周りから黒い靄が現れ風を絡めとり威力を著しく減少させる。


威力の落ちた砲撃が俺の身体に当たる。だが、殺傷能力は皆無。少し身体が後ろに飛ばされただけだった。


これが【魔蝕の鎧】か。能力は魔法の威力、というよりも魔力由来の攻撃の威力の減衰と言ったところか。使い勝手が良くて助かる。


腕を縦横無尽に振るい風の刃を連続して放つ。攻撃に殺傷能力があると判断したイスタリは風の刃を剣で打ち落としていく。


そうだ。それで良い。そうやって俺の攻撃を防いでいけ。


「ガッ――!?」


そうしているうちにエンゲツが攻撃してくれるから。


影から浮上した瞬間エンゲツが拳を打ち出し鎧を腹部を一撃で破壊し柔らかい肉を殴打する。


「ごふっ!?」

「……ここで潰えろ」


地面を何度も転がりながらも立ち上がるイスタリに肉薄すると同時に【硬拳】を打ち出しフルフェイスの兜を粉砕し顔面に打ち込む。


再び地面を転がるイスタリに向けて【風刃】を放ち縦に両断する。


……あっさり終わってしまった。だが、あいつの素の実力はCランク程度だろうし、ランクがA+の俺よりも弱いことは確かだろう。


元々、鎧の効果が機能していた時でさえ俺らに一方的やられていたのだからしょうがないか。


さて……それじゃあ、進化した身体にも慣れたし


「さて、やり始めるか」

「ふん、分かっているではないか」


そもそも、これは俺らの戦いを勝手に妨害してきたこのイスタリのせいで中断したのだからな。


俺とエンゲツはそれぞれ距離をとり拳を構える。

周りを人間どもが取り囲んでいるようだが別に問題ない。元より、興味がない。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「はああああああああああああああああああああああ!!」


地面を蹴ると同時に俺らは最短距離で肉薄し拳を打ち出す。


互いの拳がぶつかり合い衝撃波が辺りに広がり火が消える。


エンゲツの高速の連打を【硬化】させた手で拳を掴み腕力だけで真横に投げ払う。


地面を転がるエンゲツに向け風の弾丸を放つが土の弾丸で弾かれる。連続して【風刃】を放ち牽制をすると同時にエンゲツも鱗を放ち刃を弾く。


「甘い!」

「どっちだかな!!」


再びエンゲツと俺は接近し拳を放ち衝撃波を辺りに撒き散らす。肉薄したエンゲツの腹に蹴りを入れて距離をとり【風刃】を放つがエンゲツの肉体が霞と消える。


それと同時に影から蹴りを入れられ地面を何度も転がる。


すぐに両手で地面を押して跳び、体勢を整えながら地面に着地する。だが、その時には既にエンゲツの姿はない。


【影体】による影の潜伏か。だが、甘いな。


「殺気でバレバレだ」


背後の影からエンゲツが浮上した瞬間回り蹴りを頭に叩き込む。


「ぐっ――!?」


突然の攻撃に反応しきれなかったエンゲツは地面を何度もバウンドしながら転がるが勢いを利用して起き上がる。


流石に効いたのか、鼻から垂れていた血を拭いながら俺の方を向いて拳を構える。


ちっ……結構良い攻撃を当てれたと思ったが……流石に無理か。だが、この人間に近い肉体は良い。筋肉が動きを阻害しない。熊で人間の動きをすると結構筋肉が邪魔だったし助かる。


「やはり、強い」

「だからこそ、だろ」


話ながら【風刃】を放つが回避され接近すると同時に拳が放たれる。拳を掴み顎に蹴りをいれる。


その瞬間、エンゲツの左手から炎が吹き出し大きく突き放される。


【火属性耐性】や【熱耐性】があるから問題ないが……まさか、こいつは。

「【火属性魔法】。進化の際に入手した」


空中から幾つもの炎の槍が俺に向けて放たれる。

風の槍で全てを打ち払うと同時に接近してくるエンゲツに肉薄し【硬斬】で脇腹を通り抜け様に切り裂く。


「くっ……!」


鮮血を散らしながらも振り向き様に土の槍を放ち俺の肩を貫通させる。


ちっ……だが、問題ない。これくらいなら【自然治癒】でどうとでもなる。


「ぬっ……!?」


だが、エンゲツの傷は一向に癒えず血を流し続ける。


「【不血魔爪】だ。デメリットは大きいが使うタイミングを間違えなければ良いだけだ」

「ぬっ……!なら、これでどうだ!!」


右手に出した炎を傷に当てて焼いて止血し、その手を俺に向け炎を火炎放射器のように吹き出させる。


風を放ち炎を吹き飛ばすがそれと同時に接近していたエンゲツの尻尾による鞭打を腹に直接叩きつけられる。


「――ガハッ!!」


建物に叩きつけらられると同時に肺の中の酸素と血を吐く。息をすぐにとりこむと同時に横跳んでエンゲツの跳び蹴りを回避する。


それと同時にエンゲツに向けて両手を向け風を放ちエンゲツを吹き飛ばし家屋に叩きつける。


着地すると同時に【風刃】を放つがエンゲツの身体が霞となって消え、咄嗟に前方に転がると同時に浮上するエンゲツの炎が先程までいた場所を焼く。


続くエンゲツ蹴りが俺の腹を薙ぐがすぐに霞と消える。咄嗟にエンゲツ跳び退き俺の跳び蹴りを回避する。


それと同時にエンゲツの手から放たれる毒々しい矢を回避すると風の矢を放つ。エンゲツは身を逸らして回避し地面を蹴る。


「【福音】!!」

「【業火】!!」


突き出した俺の手とエンゲツの手が触れそうになった瞬間指を弾く。その瞬間、ラッパのような音と共に放たれた衝撃波がエンゲツを吹き飛ばし、黒い炎が俺の身体を焼く。


熱い。だが、これくらいなら問題ない。すぐに消える。


炎が消えたと同時にエンゲツも立ち上がり俺をしっかりと見定める。


【福音】は魔力は使わずに衝撃波を放てるスキルだ。その際に僅かな音を出さないといけない。だからこそ、指パッチンをしたのだ。


にしても……さっき炎、かなり熱が高かった。流石にあれ以上喰らうと焼死していたかもな。


「流石に、やるな」

「全くだ。今ので殺れたと思ったがな」


鱗の隙間から血を流し、口からも垂らすエンゲツを見定めるながら拳を構える。


そういう俺も結構火傷を負っている。どっこいどっこいだな。


「A+の【悪魔種】へと進化した。それでも勝てんか」

「そうか。俺もA+だ」

「なら、条件は同じか」


一瞬で肉薄するエンゲツの左足の蹴りと俺の右足の蹴りがぶつかり合い、衝撃波が再び撒き散らされる。


至近距離から【風刃】を放つが寸でのところで【硬化】で防がれゼロ距離から【ブレス】を喰らう。


咄嗟に空気を圧縮してブレスを防ぐと同時に左手の掌から風の砲弾を放ちエンゲツを吹き飛ばす。

その瞬間、金色の粉が舞い散る。


「【粉塵鏖殺】!!」

「【福音】!!」


金色の粉塵が一斉に来るのと同時に右手の指を弾き衝撃波で一気に吹き飛ばす。


それと同時に【硬化】を付与した【魔力糸】を五つほど左手の指先から垂らし大きく薙ぐ。だが、エンゲツの身体に触れた瞬間エンゲツは霞となって消える。


咄嗟に飛び退くがそれを読まれたのか背後に回り込まれ尾による鞭打が脇腹にヒットする。


何度も地面をバウンドしながら転がるが痛みを歯を食い縛って耐え【魔力糸】でエンゲツの胸を切り裂く。


「ぬっ……!?」


痛みで怯んだ隙に立ち上がると同時に肉薄し顔面を殴り飛ばす。


大きく後ろに後退したエンゲツを見据える。


「くくっ、強いな」

「ああ。だが、全力ではない」

「ふん、それは貴様もだ」


互いに誉めながら拳を握ることなく掌を向ける。


さっきエンゲツが言った通り、俺らは全力を出してない。何せ、進化した相手がどれくらいなのか分からないからだ。そんな状況で全力を出して潰してしまうのはあまりにもつまらない。


だが、相手の実力は把握できた。なら、そろそろ動いても良いだろう。ミストたちは……うん、既に効果範囲の外だ。


俺とエンゲツは高らかに告げる。


「【狂気庭園】」

「【腐気毒華】」


互いにスキルを発動させた瞬間、辺りから変化が起きる。


辺りの温度が急速に下がり火が次々と消えていく。更には、星の輝きが暗く深い闇へと変わったていく。


「な、何だ!?」

「あいつらがやっているのか……!?」


異変に気づいた周りの兵士や冒険者たちに動揺が走る。だが、もう遅い。既に俺らのスキルの効果範囲内に入ってしまっている。


「ぎ、いぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「一体な……あ、足がぁ!?」

「嫌だ、溶けたくない、溶けたくな」


それは、冒険者の悲鳴から始まった。


一人の冒険者は自身の目玉を抉り、口に手を突っ込んで窒息した。一人は動こうとした瞬間足が腐り地面に倒れ、紫色の蓮に似た花の土壌となった。一人は紫色の靄に纏われ身体を溶かされる。


異常な死が俺らの周りで繰り広げられる。それでも俺らは冷静に敵を見つめる。


【狂気庭園】はその名の通り一定の空間に大規模な幻覚を見せる。それを見た生物は発狂し多くの場合変死する。


エンゲツの【腐気毒華】は毒によって肉体が腐ったり溶かされたりしているのだろう。俺に効かないのは【毒耐性】か、はたまた似たスキルを発動しあい拮抗しているのか。……まあ、どうでも良い。


このスキルは一度発動すると全ての能力値を一時的に上げる効果がある。それが目的でありこれは計算内だからだ。


さあ、第三ラウンドといくか。



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