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ニ幻衝突

「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


ほぼ同時に俺らは地面を蹴る。


一気に肉薄し拳の間合いに入った瞬間、拳をつき出す。俺の【硬拳】がエンゲツの頬を捉えると同時にエンゲツの拳が頬を捉える。


ちっ、鱗が邪魔で拳が上手く入らない。やはり【竜鱗】は防御系のパッシブスキルか……!


エンゲツの拳のラッシュを肘、二の腕、拳を使い全て打ち落とし腹に先程よりも力を込めて肩に打ち込む。


鱗を破壊し、体勢を崩したエンゲツに向けて【風刃】を三本放つが大きく飛び退かれ回避される。

力の込め具合を何時も以上にすれば壊れるか。恐らく、【竜鱗】は防御系のスキルだが防御力に付随しないスキルだ。言うなれば、身体を覆う鎧だ。


だが、それで良い。何せ――より多く殴れるからな!!


「グルアッ!!」


一気に接近すると同時に大振りの右の【硬拳】を頭に目掛けて打ち出す。


エンゲツは頭を傾け回避しそのまま左腕を大きく横に振るう。


【硬化】を纏った頭で受け止め左手でエンゲツの左腕を掴みケンカ蹴りを腹に打ち込む。大きくくの字に身体を曲げるエンゲツの左腕から左手を離し引っ込めた右手から掌底を顔面に叩きつける。


「ガッ!!」


地面を何度も後ろ回転して地面を転がり、止まったところでエンゲツは起き上がり口の中に溜まった血を吐き捨てる。


タフだな。だが、拳を主軸にするのならタフくらいで充分か。


「アア、ガアアアアアアアアアアアアアア!!」

『クク、ハハハハハハハハハハハハハハハ!!』


【テレパシー】を通じて響く笑い声に俺は何事かと構える。


『ソウダ、コノクライシテモラワナイト……楽シメヌ!!』


エンゲツはその顔に笑みを張り付け最短距離を一気に駆け抜け肉薄する。


拳の打ち出しを身を逸らすように受け流す。その瞬間尾で足を払われ地面を転がる。


拳の打ち下ろしを横に転がって回避し勢いを利用して立ち上がる。その瞬間エンゲツのボディブローが脇腹に突き刺さる。


激しい激痛のあまり思わず後ろに後退するがそこに尾の一閃が顔面に入り横に転がる。


止まったところで立ち上がりエンゲツを見ようとした瞬間拳がゼロ距離にまで迫っていた。


ちっ……!これは不味い……!


咄嗟に頭を【硬化】させ自ら当たりにいく。


「グルッ!?」

「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


この動きにたじろくエンゲツに向けフック、アッパー、ストレートを組み合わせを連続して放つ。


エンゲツはそれに合わせるようにフックにはフックで、ストレートにはストレートでと俺に合わせて殴り方を変えながら拳のラッシュを放つ。


互いの拳がぶつかり合い、辺りに衝撃波が放たれ地面に鮮血と鱗が飛び散る。


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


エンゲツと俺は同時に咆哮し際限のない拳が、蹴りが、尾が空気を揺らす。


俺の拳がエンゲツの腕を掠めるごとに鱗が散り、拳と打ち合えば血が飛び散り、肉に当たれば千切れ、骨に当たれば骨が軋む。


同じく、エンゲツの拳が俺の腕を掠めるごとに肉が抉れ、拳と打ち合えば血が飛び散り、肉に当たれば千切れ、骨に当たれば骨が軋む。


既に【忍耐】は使っているし拳を重ねる毎に重くなっていくエンゲツの拳からエンゲツも【忍耐】を使用している。


速度はこちらが上。だが、威力はエンゲツの方が上。どちらも一長一短でありどちらも引けをとってはいない。


だが、それにしても。この心の高鳴りは何だ。まるで心の底から歓喜するかのような熱く激しい心の高鳴り。


全くもって……心地よい!!


『心地よいものだな!!』

『ソウダ!ソレコソガ吾ラノ本質ヨ!!』


互いの両手を組み合い押し、キスするかの如く顔を近づけながら唸り声をあげる。


『吾ラハ魔物。弱者ノ肉ヲ喰ライ、生キル者。故ニ、吾ラハ命ヲ喰ライ、全テヲ費ヤシ、敵ヲ喰ラウ!!』

『はっ、分かっている……ぜ!!』


エンゲツを押し出し、距離を開ける。それと同時に体勢を崩したエンゲツの顎を左のアッパーで捉える。


骨をへし折る音と共に血を吐き、エンゲツは後退する。


手を振るい魔法を発動。風の砲弾をエンゲツの腹に向けて放つ。放った瞬間、地面を蹴り回避するエンゲツに接近し拳を振り上げる。


それと同時にエンゲツも足を止め腰を捻り拳を握りしめる。


「オオオッ!!」

「ガアアッ!!」


同時に放つ大振りの拳が互いの顔面を捉える。

互いに互いのカウンター気味の拳を食らいよろめき三、四歩後ろに下がる。


怯んで……たまるか!!


倒れそうになるところを足を踏ん張って堪える。


そして同じく堪えて拳を握るエンゲツに接近しフック気味の拳を胸に鋭く打ち込む。


エンゲツは歯を食い縛り痛みを堪え、体勢を戻しきっていない俺の顔面に拳を叩きつける。


顔面に響く激痛を歯を噛み締めて倒れるのを堪え、魔法で空気の塊を纏わせ胸を殴り付ける。


先程よりも大きく吹き飛ばされるエンゲツは流石に堪えたのか地面に手をつき吐血する。


口についた血を拭い、エンゲツは立ち上がり拳を握りしめ地面を蹴る。同じく拳を握りしめ地面を蹴る。


【忍耐】による攻撃力の上昇も最大を越えた。これで、終わらせてやる!!


「『バースト』」


だが、それは叶わなかった。


短い人間の声が聞こえた瞬間強烈な殺気を感じ取った俺らはベクトルを強引にねじ曲げ地面を飛び退く。


その瞬間、俺らが重なる場所に一筋の斬撃が地面を切り裂く。


『ドウイウ事ダ!?』

『んなもん知るか!』


地面に着地し互いの放たれた方向を見ながら【テレパシー】で会話をする。


どうやら、俺らをどっちも殺したい勢力がいるようだ。ちっ……興ざめも良いところだよ、全く。俺らが互いに命を喰らい正々堂々と殴りあっていたのにそれを妨害されるのがここまで不愉快なのは始めて知った。


『不愉快ダ』

『奇遇だな、俺もだ』


互いに拳を構え闇から火の中から出てくる人影を注視する。


「どちらかは殺れたと思ったが、どうやらどちらも避けたか。……もし『大罪』と『神龍』に見初められてなければ我ら『大聖霊』に取り込みたいところだ」


火の中から出ていた男は炎を払いながら剣を俺らに向ける。


男は全身を白い甲冑で覆われ、後ろについた赤いマントには六人の乙女が描かれている。顔もフルフェイスの兜を被っているせいで種族は分からないが若い。


剣も刃は白く輝き柄は赤、青、黄、緑、白、黒の六つの宝石がつけられ握りしめる手は適度な力で剣を握っている。


完全にリラックスしていやがるか。そして、『大聖霊』という言葉は聞き覚えがある。十中八九、この世界での最強クラスの勢力で一つ、それに属する人間だろう。


まぁ、名称から【精霊種】であることは確定だろうな。


『チッ、『大聖霊』カ』

『知っているのか?』

『アア。吾ラ『神龍』ハ積極的ニ人ヲ害スル。故ニ、人ヲ守護スル『大聖霊』トハ仲ガ悪イ。オオヨソ、吾ラガ都市ヲ襲ッテイルノヲ良シトシテイナイ』

『故に、俺らのような魔物を滅しようとしているのか。……極めて不快だ』



そっちの思惑何てどうだって良い。だが、思う存分に楽しんでいた死闘を勝手に横から中断されたのはどうにも我慢できない。


『おい、手を貸せ。……あいつを殺すのは俺一人では難しい』


だが、相手の実力は本物だ。堂々と俺らの前に立っているんだ、自分の実力に自信がなければできないだろうよ。


『奇遇ダナ、吾デモ無理ダ。故ニ、ココハ協力シヨウ。『神龍』ト『大罪』ハ仲ガ良イカラナ』


俺は『大罪』側に属している訳ではないが……まあいっか。


互いの意思を汲み取り拳を構える。


「貴様らのような魔物を討伐するのは私たち『大聖霊』直属の親衛隊の勤め。故に、ここで消えて貰う」


男もまた、剣を力強く握りしめ俺らに敵意と殺意の籠った視線を向ける。


どうやら、向こうも俺らを殺したくてうずうずしているようだな。……『神龍』、『大罪』、『大聖霊』と三つの勢力がここに集まっているのは偶然ではないだろう。


恐らく、このワイバーンの襲撃から『大聖霊』の親衛隊をも巻き込んだのは何かしらの手引きがあったと考えれるだろう。だが、それは誰だ。何の目的がある。


……今はそんなことどうでも良いか。


『俺らの邪魔をしたんだ、持ちうる全ての手札を使うぞ!!』

『フン、心得テイル!!』

「ああ、主よ。この罪深き獣をイスタリが冥土へと落とします」


さあ、潰してやるよ、イスタリ。軛から外れた獣の恐ろしさを見せてやる!!


【Lv.九ニからLv.一〇〇になりました】

【進化が可能になりました】


気になるけど今は後だ!!

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