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犯罪組織襲撃

深夜、俺は影の中を泳ぎ都市の中へと侵入する。


影の移動は予想していた以上に汎用性が高い。影さえあれば魔法による防衛に反応しないで街の中に侵入できる。これこそが、俺が帝都へ簡単に入れると踏んでいる理由だ。


「グル」


街に入って数分が経過した頃。俺は頭の目の部分だけを出して周りの状況を確認し、影から出る。


俺が出た場所は端的に言えば貧民街だ。そこら辺の路地には酒瓶持って騒ぐ老人や腐った死体、ぼろ布を着た子供が街の至る所で屯している。


俺自身に【幻術】をかけ俺という存在を認識できなくさせてあるため問題ないが、これを持っていなかったら少し大変な事になっていた。ここにいる奴ら全員を殺すのは倫理的にアウトだしな。


「グルルルルルル」


だが、ここから移動するためには影に潜らないといけないか。……この地面ではすぐに壊れてしまいそうだし。


再び影の中に潜り頭の上の部分だけ出して潜水艦のように泳ぎ始める。


建物の特定は済んでいるが……詳しい場所は分からなかった。街の中を長時間に渡って探さないといけない。深夜でも長時間動けるよう午前中の殆どを睡眠に当てて正解だった。


「グルルルルル……」


それにしても……ひどい街だ。


影で建物の中や通路を自由に泳ぎながら率直な感想を心の中で思ってしまう。


どいつもこいつも目に生気がなく生き足掻く気力すらない。自分にどんな可能性があるのかも分からずにただ朽ちていくだけの虚しい人生が確約されてしまっている。ここで生きている人間は将来に希望を持っていない。故に歩むことすらしない。


袋小路。行き止まり。そんな言葉が嫌でも脳裏から離れない。これをどうにもしないのはこの国が搾取する者とされる者がハッキリとした国の体制故だろう。


……まぁ、俺にとってこの国の支配体制何てどうでも良い話だが。それを変えるのは人間であって俺ら魔物が口出しするようなものじゃない。直接的に手を下すことは滅多なことが起きなければ行わないだろう。


「グルルル……」


ミストは……眠っているな。


【テレパシー】用に繋いだ糸はミストの状況が何となくだが分かる。


だが眠りは浅い。どうやら、常に物音がすれば起きるようにしているようだ。……奴隷時代の名残り、いいや、地位の高い人間以外の人権何て殆ど皆無に等しいこの国で生きていくには必要となる技術か。


ホント、下らない。どうしようもない程に下らない国だよ、ここは。さっさと去る事に限る。


「グル?」


屋根の上に登り辺りを見回していると奇妙な馬車を発見する。


ここら辺のおんぼろな家々を何十、何百と買えそうな馬車だ。豪華を全面に出したそれはあの豚の馬車を思い出させる。


あの豚は確実に殺したが……この感覚、あの豚と同じくらいに不快な感覚だ。いく当てもないし、今はあの馬車を追うことにしよう。


馬車の後を追い静かに影の中を追いかけていく。


流石に人目は避けれるだろうが、まさか影に隠れた熊がいるとは思ってもいなかっただろうな。ていうか、誰だって予想できないか。


数分ほど馬車の後を追いかけていると目的の建物が目に見える。


建物は貴族の屋敷だったのか、二階建てでシンメトリーが綺麗に作られている。だが、その装飾は長い年月で剥がれ落ち、壁には蔦が生い茂っている。


その上、ここから漂ってくる臭いはこの貧民街の中でも特に濃密だ。不快、あまりにも不快過ぎる。


だが、態々ここまで来たんだ、壊滅させるのが流儀だろう。半分はミストを狙ったこと、もう半分は……俺の糧にすることだ。


「がっ!?」

「旦那さ――へぶっ!?」


馬車から出てきた肥え太った豚の心臓を影から出ると同時に【硬斬】の爪で首を切り落とす。


手綱を握ってい御者が逃げるよりも速く接近、【硬化】させた掌底で顔面を捉え数メートル先まで飛ばす。


ついでに俺の殺気を当てられ逃げようとする馬の頭を【硬拳】で殴り潰す。


さて、これで正面からの脱出口が出来たな。


……臭い的に中にまだいるようだが殺気がない。豚二匹目の醜い欲望をぶつけるために持ち運ばれていた、と見て良いだろう。


「グル……」


さて……入りますか。


壊れた門を力任せに押して破壊し、庭の中に入る。


その瞬間、周りの地面が光始め、爆発する。


「オオン」


凄まじい爆発音と共に炎が撒き散らされるが身体についた炎を手で払いながら炎の海から出る。


なるほど、火属性の魔法のトラップか。威力よりも爆発音に重きを置いたものだろう。侵入者がこの土地に入った瞬間爆発するように仕掛けていたか。


ミストを狙った犯罪組織は『黒猫』。不吉の象徴である黒猫のエンブレムを掲げる犯罪組織の何でも屋。この街での構成員は三〇〇、その半数以上がこの屋敷にいることを【他心通】で抜き取っている。


数は申し分ない。実力は……まぁ、どうにかなるだろう。人間だって俺以上に強い存在がいるかもしれないし。


「侵入者はっけ……!?」

「熊ぁ!?他の組織の檻から出たのか!?」

「だが、この気配……不味い、あれは不味すぎる!!」


屋敷から続々と出てくる『黒猫』の構成員に舌で唇を舐める。


少なくとも、俺の実力を判断できる人間がいる。少しは殺しがいがありそうだ。


「まぁ良い。弓部隊、放て!!」


構成員に囲まれた男の号令と共に屋根の上にいた構成員たちが弓から矢を放つ。


……鈍い。それなら、少しばかり試してみるか。


目蓋を閉じ、魔力を爪に収束。イメージするものは『風』と『刃』。


イメージをしている間、身体の奥から凄まじい勢いで高揚感が沸き上がってくる。ああ……!良い、凄く良い!!


「グルアッ!!」


体内での高ぶりが最高潮に達した瞬間、腕を大きく薙ぐ。


その瞬間、烈風と共に放たれた風の刃が矢を巻き込み切り刻んでいく。


やはり、風の魔法を発動できたか。【魔力操作】は自分の意思で自由に魔力を操れる。なら、別に土以外の魔法の属性でも使えるのか。それを試してみたが成功したな。


【通常アクティブスキル:風刃を入手しました】

【魔力アクティブスキル:風属性魔法を入手しました】


スキルとしても入手できたな。……あの風の刃は魔力を使わずに使えるのか。これは便利なものを手に入れれたな。流石【逸脱種】だな。


「くっ……!魔法部隊、放て!!」

「「「「【フレイムランス】――!!」」」」


弓を持った構成員と立ち代わるように前に出た一〇人の構成員が右手を前に突き出し構える。僅かに炎が纏い、炎の槍が射出される。


普通なら避けるところだが……少し【風属性魔法】と言うものを使ってみたい。イメージは風なのだろうな。


右手を前にかざし目の前に風の断層を作り出す。断層に触れた炎の槍は四方八方に撒き散らされ生えていた草を燃やしていく。


熱の熱さは感じない。【熱耐性】がキチンと機能しているな。


【風刃】を発動し火の中で手首のスナップで放ち炎を裂いて構成員の一人の胸に直撃、鮮血を撒き散らす。


「なっ!?」


ふーむ……【硬斬】では出来なかった遠当てができるのようになったは良いが、狙った通りにいかないな。ここは練習しておくか。


【風刃】を解除し手首をヒラヒラと動かしながら炎の中から抜け出ると拳を構えて敵を見定める。


相手も流石に今ので殺れると思ったのだろう、凄く動揺している。だが、今回ばかりは待っていてやる。


俺はお前らを完膚なきまでに潰してやるからよ。……かなり、ミストの件で怒っているな、俺は。



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