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肉欲少女

「主人、行ってくる」

『おう。ピンチになったら呼べよ?』


森の近く、俺とミストは互いの掌を合わせた後互いに別の方を向いて歩きだす。


数日後、ミストを『アルマティア』に送った後、俺は『アルマティア』から一番近い森の中に潜伏することになった。


森の中、鬱蒼とした茂みの中を歩いて少しばかり経ったところで寝転がり林冠を見上げる。


「グルルルルルル」


やっと一人になれた。


ミストがいると少しばかり動きにくい事もあった。それをどうにかするために態々数日間程度俺から離れさせてもらった。


特に、俺の進化……これは帝都への侵入を開始する前までに終えておきたい。もしキメラのような化物が量産されていたらこっちが負けてしまう。なるべく強力な魔物へと進化しなければならない。


そのためにも、一時的にミストと離れる……極限なまでに自分を追い込む環境が必要となる。ミストに心配かけないよう秘密にしながら、な。


「グルッ?」


起き上がったところに矢が飛んできたため腕を軽く払い矢を地面に落とし踏んで折る。


……二時の方向に三人、ヒューマンが二人に獣人……匂いとしてはウサギに近いのが一人か。矢は簡素だし鉄の匂いも少ない。恐らく革鎧の類いを着ているのか。


……敵対したのなら殺すのに躊躇いはない。


「はああっ!」


木々の間から突撃してきた少年の剣を右の【硬拳】を振り下ろし破壊する。驚愕する間も与えずに頭突きを頭に当て気絶させる。


兵士にしては弱いな。それに、一六、七くらいと歳も若い。殺す気だったが流石にガキを殺すのもどうかと思うし、放置しておこう。運が良ければ生きていけるだろうしな。


「グルッ」


おっと。


足元に飛んできた矢を軽くバックステップして回避。


うん、今のは不意打ちじゃないし姿も見えた。またしてもこのガキと同じくらいに若いウサギの獣人。


あ、殺したい。徹底的に殺したい。抗ってくる獲物とか最高に良い。


「き、来ます!」

「任せて!」


俺が地面を蹴り最速でウサギの獣人に向けて接近を開始する。


相手も隣に立っていた貴公子然とした少年が盾を構えて少女の前に立つ。攻撃を受け流すのに自信があるのか唇を舐める。


それを見た瞬間本能から来る衝動から解放される。


何だ、その構えは。受け流すにしては腰を深く入れすぎだ。それに、両手で受け流そうとするのは馬鹿としか言えない。カウンターに変えれないからだろうが、その選択は間違えている。


こいつも歳が若い。判断ミスは仕方ないと割りきれる。だが……足腰がなっちゃいない!!


「がっ!?」

「て、テレスくん!?」


木の盾を【硬拳】のストレートで破壊しその腹に打ち込み吹き飛ばす。


吹き飛ばされた少年は木に叩きつけられ地面にズルズルと落ちていく。


基本的に守りは身体の受け流し方も重要だが全体の体重が最も重要となってくる。どんなに守りの技術を上げたところで体重が軽ければ浮かんでしまうからな。


そして、この少年は体重が足りなかった。だからあっさりと吹き飛ばされた。まぁ、流石に手加減したから息はしているが。


「あ……あ……」


それを見てその場で腰を抜かし地面に倒れる少女を見下ろす。


頭の方で鳴り響く本能を【並列思考】で分割して緩和しているが……この本能の呼び声は何なんだ?あまりにも弱すぎるこいつに殺す価値はあるのか?


理性と本能の食い違いに気づいた俺は四つん這いになり少女の瞳を見る。赤い瞳には涙を潤ませ、少し垂れ気味の目には今にも泣き出しそうになっている。


本能を擽る……と言ったところか。弱者の涙が嗜虐心を煽っている。何かしらのスキルが影響している、そう考えて良いだろう。


となれば、ステータスを見るか。


==========

=====

名称:カーリー・セクメト 種族ラビットヒューマン


年齢:一六歳


Lv.二四


攻撃力:八〇(+一〇二)


防御力:七六


素早さ:二三〇


魔力:二二


通常アクティブスキル:【暗視】【探知・聴覚】【遠視】【薬草採取】


魔力アクティブスキル:【加速】【物体加速】【連打加速】


通常パッシブスキル:【肉欲増長】【アガート聖王国公爵子女】【弓術】【短剣術】【アガート学園一年】【韋駄天】


耐性パッシブスキル:【病耐性】【魔力耐性】


=====

==========


平均的なステータスは低いが素早さだけ飛び抜けて高い。恐らく【ランナー】の上位互換の【韋駄天】の影響だろう。


そして、俺のこの本能の異変はは【肉欲増長】だろうな……。言葉通りでも分からない。これの説明を頼む。


【肉欲増長:自分を認識した獣に対して発動。

自分に対して向けている感情を増幅させる。

精神防御不可】


やはりか。


しかもここに書かれている獣というのは俺らのような獣に近い姿を持つ魔物は勿論、獣人にも該当する。その上防御不可能って……俺じゃなきゃアウトだったのかよ。


「ひぃ……」


失禁してまで恐怖しながら後退るカーリーの前で背中を見せてさっさと森の奥に入っていく。

殺す気が失せた以上見逃しておく。それに、興味が沸いた。この森にいる間、カーリーの様子を見ているのも面白いな。


それに、あいつから情報を入手するのも面白そうだ。


『見逃してやるからさっさと帰れ。ちゃんと仲間も連れていけよ?』

「えっ!?ど、どこから声が……!それに誰ですか!?」

『森に住まう悪魔、と言っておこうか』


カーリーに【テレパシー】を送った後、困惑しながらも仲間を二人ほど抱えたカーリーが森から出るのを確認した後近づいてきたヤングスネークを踏み潰す。


苦戦した相手をこうもあっさり……俺も進化をしてステータスが上がったものだ。だが、これでも足りない。もっと力を持たなければならない。

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