蛇との決着
「シュッ!!」
最初に動いたのはヤングスネークからだ。
ヤングスネークの【毒飛ばし】をサイドステップで避けつつ間合いに突っ込む。
この四日間でベビースネークの【毒飛ばし】を何度も見てきた。その特性も、欠点も、全て理解している。
【毒飛ばし】は連射出来ない。僅かなインターバルが必要とするスキル。なら、その間に接近する事もできる。
「シャア!!」
しなった尻尾の攻撃を【硬化】させた左腕で防ぎ、飛ばされないように足を踏ん張る。
速度が完全に失速したところで右の張り手をヤングスネークの胴に入れる。
肉球にヤングスネークは吹き飛ばされるが、それでも何事もなかったように起き上がる。
ちっ……やっぱり【柔軟】が厄介だ。無効化ではないにしろ、威力が著しく落とされてしまう。
どうにかしないと……あ、一つあった。
だが、これは賭けになってしまうし相手が乗ってくれるかが心配だが……やるしかないか。
「シャアアッ!!」
「ガアアッ!!」
尻尾による鞭打を【硬化】させた腕で弾いていく。
だが、それでも全て捌ききれず何発か腹や肩に直撃していく。その度に少しずつ後ろに下がっていく。
くっ……!速すぎる。必殺に頼らなくても勝てるという自信そのものか……!
「ガアアッ!!」
咄嗟に【硬化】させた爪の打ち下ろしで尻尾に傷をつける。
「シャッ!?」
突然の反撃に驚いたヤングスネークは尻尾を戻し距離を取る。
ここは攻めない。あれだけ距離が離されれば動き出したところで殺られる。素早さの差と言うのはそれだけ危険なのだ。
お前の土俵に上がると思うなよ。
そして、お前の【柔軟】の弱点も分かった。お前を俺の土俵に上げる準備は整ったと言える。
「シャアアアアアアアアア!!」
「ガアアアアアアアアアア!!」
再びヤングスネークの鞭打と俺の腕が交差する。
だが、次は違う。【硬化】した爪が少しずつ尻尾の皮を絶ち肉を裂いていく。
お前はそのスキル故に衝撃と言った打撃は緩和できる。だが、爪と言った切られる攻撃には致命的なくらいに弱い。
「シュルッ!?」
次第に血にまみれていく尻尾の痛みに耐えかねたヤングスネークは尻尾を引き戻す。
その瞬間、一気に近づく。
【毒飛ばし】もこの高さなら眼には当てれない。完全な致命傷にはならない。尻尾も酷使できない程の状態になってる。なら、お前がとれる手段は一つしかない。
「シュルル……」
よし、かかった!!
噛みつき攻撃のために身を屈めた瞬間動きを止めて腹を大きく開ける。
「シャア!!」
ニヤリと笑ったヤングスネークが一気に伸びて俺の腹に突進する。
くっ……!体格の差とステータスの差で普通に重い……!しかも、勢いが無くなった瞬間、腹に噛みついてきやがった。
「シャア?」
だが、それは予想通りだ。
相手がわざと急所の腹を見せる理由はそこに攻撃を誘導させるため。
腹なら真っ正面だから【硬化】させるタイミングを取りやすい。一番の急所は一番防御しやすい。
それにこの蛇はまんまと引っかった。
「ガアッ!!」
ヤングスネークの体を足で踏みつけて押さえ首に噛みつくとそのまま肉を引きちぎる。
「シャア!?」
驚いているか?そりゃあそうだろう。お前が今の今まで格下と思っていたやつにダメージを加えられたんだからな。
それじゃあ……そのまま潰す!!
「ガアッ!!」
両手で首を持つとそのまま地面に叩きつける。
よし、これで
「ガッ!?」
これは……ヤングスネークの尾か!?あの体勢から上手く尾を動かして首を……!?しかも、酷使出来ない筈の尻尾を使って……!?
そう言えば、蛇は捕まった時に相手に絡み付いて首を締めることがある。そのため、捕獲の際は首を上にするとバラエティーかどこかで見た気がする。
だが、今は平面。そんな事は出来ない。
いや、そんな事を考えている暇はない。ここで死ぬ訳には行かねぇ!!
首を締められながらも首に噛みつける。
柔らかい骨だ。ウサギの骨とそう大差はない程に柔らかい。これなら……!
「ガアッ!!」
力一杯噛み、骨を噛み砕いた瞬間ヤングスネークから力が抜ける。
はぁ……はぁ……、後少しで死ぬところだった。格上相手にするのは数日ぶりだ。
にしても……痛ぇ。肩やら腰、腕が無茶苦茶痛い。肩の方はまだシュウシュウ音を立ててるし、腕も衝撃で骨に皹が入ってる。腰に関しては何度も直撃して完全にイカれてる。
【Lv.八からLv.一〇に上がりました】
【ステータスが上がりました】
【パッシブスキル:剛力を入手しました】
【パッシブスキル:拳打を入手しました】
【パッシブスキル:毒耐性を入手しました】
【アクティブスキル:硬斬を入手しました】
【アクティブスキル:硬拳を入手しました】
【アクティブスキル:収束を入手しました】
【アクティブスキル:放出を入手しました】
一気にスキルが入手出来たな。それだけ戦闘が激しかった事の現れでもあるだろうけど。
とりあえず、今のうちにステータスを見ておくか。
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名称:なし 種族:ベビーベアー
Lv.一〇
魔力消費率:七八パーセント
攻撃力:三〇
防御力:四二
素早さ:二一
魔力:二五
アクティブスキル:【硬化】【硬斬】【硬拳】【収束】【放出】
パッシブスキル:【転生者】【逸脱種】【押し潰し】【ランナー】【剛力】【拳打】
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ステータスもそれなりに上がったな。特に防御力の伸びが良い。ヤングスネークに何度も叩かれているせいだろうな。
攻撃力でまだ差があるのはやはりヤングスネークが俺よりもランクが高いからだろう。進化個体と言うのは理不尽極まりない。
さて、取り敢えず毒を流さないと。川のような場所があれば助かるが……。
【進化が可能になりました】
……えっ?進化が可能になった?どんなものか気になるし早速……
「グウッ……」
いや、今はダメだ。少なくとも、この場所じゃだめだ。身体の方が痛すぎて集中できない。とりあえず、身の安全が確保できて身体を休めれる場所に移動しよう。
っと、ついでにヤングスネークの死体を持っていこう。