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奴隷救出

「魔物の侵入だ!商品の守りは最小限にして捜索しろ!」

「壁を破壊して出てくる何てどんなふざけた魔物だよ!?」

「伝令、敵は熊の魔物。既に施設内に侵入しています!」

「また、それと同時に不可視の刺客による兵士たちの攻撃が激化しています!」

「伝令!塀の外の兵士たちは全滅、門も外より封じられました!」

「この建物が霧に覆われており外に視界が不良、その上外部との連絡がとれません!」

「ええい、敵は【魔女】だ!本体よりも内部に侵入した魔物の討伐を優先せよ!」

「分かりました!!」


兵士たちの怒号と伝令が錯綜とし、通路を多くの兵士が走り回っている。


辺りから人の気配が無くなったのを確認して【幻術】を解き物陰から出る。


ふぅ……【幻術】の応用で俺自身を認識できなくさせておいて正解だった。それにしても、ミストの奴、兵士どもを殲滅させたか。そこまでしなくても良かったが……まぁ回収を楽にできるし良いか。


さて、こっちも建物の内部を動くために地図を確保するか。


「がっ……あっ……」


扉が内部に吹き飛ばされた部屋の中で痛みで悶える兵士の恐怖した視線を受けながら近付く。


侵入した際に適当な兵士を捕まえ四肢を力業でへし折って無力化させておけばゆっくりと【他心通】を使える。


目を光らせ【他心通】を発動、瞬きするよりも速く相手の記憶から『農場』の地図だけを抜き取る。


「た、助け……」


まあ、たまには構わないか。


助けを求める兵士を放置して部屋の中を出て気配や臭いを嗅ぎながら通路を歩いてく。


この『農場』は主に『生産区画』『生育区画』『宿舎区画』『運搬区画』『研究区画』の五つに別れている。奴隷になるべくする者がいるのは主に『生産区画』、『生育区画』『宿舎区画』だ。


『生産区画』は奴隷たちの生産、つまりは出産を行っている場所で『生育区画』は主に奴隷たちの教育や肉体改造を主としており、『宿舎区画』は奴隷たちの寝床のような扱いだからだ。


『運搬区画』は直売場みたいなものから男の奴隷を別の場所に運搬するための馬車が停泊している。『研究区画』は奴隷を使った薬物の研究を行っている。


中央の建物は『統率棟』。研究者や職員、兵士の宿舎や五つの区画の警備を行っている場所だ。


そして、俺がいる場所は『宿舎区画』と『運搬区画』の間。現在は昼のため奴隷の殆どが『生育区画』にいるらしい。


となれば、最初に『生育区画』に向かうか。いざとなれば無理矢理奴隷たちを外に出す手段はあるしな。


魔法で石のブロックに穴を空け通路を無理矢理作って別の廊下を歩いていく。


「おい、いたぞ!」


おや、見つかったか。


俺を見つけて走り出す兵士の足下の石を持ち上げて天井に押し潰す。そのついでに壁を作り上げる。


何人いても壁を壊すのには少しばかり時間がかかる。少し新しいスキルを試してみるか。


壁にできた影に足を踏み入れる。その瞬間水の中に潜るように影の中に沈む。


なるほど、これが【影体】。影に入れるスキルか。影の中を自由に動けるし出れるポイントも何となくだが分かる。便利なスキルを手に入れれたな。


影の中を数分間静かに泳ぎ出れるポイントから抜け出る。


さて、ここは……どこだ?影から移動したからどこに出てきたか全く分からん。建物も無機質な石造りな事も相まって通路だけで見抜く事は難しい。


今回はなるべく使うのは止めておこう。これでは迷子になってしまう。


「……オン?」


この空気に残る臭い……血ではないが鼻につくような刺激臭だ。不快ではないがあまり好きではない臭いだ。


洩れでている場所は……この扉の奥か。


廊下を歩き鉄の扉を破壊して部屋の中に入り


「……オオ」


そして愕然とする。


部屋の中には一〇人程度のエルフの女性が鎖に繋がれていた。鎖は床や壁に繋がれており身動きはとれない状況で、更に目にはアイマスクをつけられ口にはチューブのようなものが差し込まれている。両腕には壁に繋がるチューブのようなものが接続されている。


一糸纏わないエルフたちの意識は朦朧としており俺の方を見るものは疎ら、殆どの者が上の空を見ている。その上、その全員の腹が大きくなっている。つまりは妊婦だ。


……どうやら、俺は『生産区画』に来てしまったようだ。ミストから話は聞いていたがここまで酷いものとは予想を越えている。


このチューブから流されている緑色の液体の説明を見せろ。……何となくどんなものか分かっているが。


【ゼピ・トリマス:麻薬の一種。一級危険薬草『ゼピ』と『トリマス』をアルコールに混ぜて作られる。

精神を朦朧とさせながら神経を過剰に興奮させる。快楽成分が強く一度投薬されれば一ヶ月は人格が戻らないほど。

その反面依存性は皆無であり適切な処置を行えば後遺症はなく復帰できる】


抵抗を起こさせないように薬で快楽の海に押し込めている……と言ったところか。これなら交尾をする際の抵抗がなくて助かるだろうよ。


それに、腹の方にもいくつも【治癒魔法】かそれに連なる回復手段で回復させられた痕がある。恐らく、何かしらの手術痕なのだろうが……この世界にそこまで高度な医療技術があるとは考えにくい。


となれば、この腹に仕込まれた何かを調べれるか……説明があれば助かるが。


【タマリス:魔道具の一種。

身体に埋め込むことで細胞レベルで妊娠、出産に適した身体に変質させる。男に埋め込んでも意味はない。

変質させた身体は体力、治癒力が数百倍にまで上がっており常に魔力が暴走している。そのため全身に激痛を伴わせる。

元は帝国が女性の貴族の拷問用に作り上げたが後にその特性が判明し奴隷生産に使われている】


無駄に高度な技術だなおい。だが、これで奴隷生産が上手くいくのか納得がいく。


妊娠、出産と言うのは母体の体力を著しく消耗する。それに女性は一生妊娠、出産することができる訳ではない。必ず妊娠できなくなる時が来る。


だが、この魔道具があればその問題が全て解決する。妊娠、出産に適した身体となれば一生妊娠、出産することができるし体力も上がっていれば体力の消耗を総体的に低くできる。欠点である激痛も『ゼピ・トリマス』で意識を混濁させ続ければ解消することができる。


……不愉快だ。命の営みというのはこういうものではないだろ。これも人間が持つ薄汚く醜い悪魔の一面、だろうな。いやはや、【悪魔種】以上の悪魔だよ。


それに、これの場合助ける事は不可能だ。細胞単位での変質と言うのは進化の一種のようなものだ。


==========

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名称:なし 種族:マタニティエルフ

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事実、種族名すら変わっている。進化というのは一方通行なものであり元の姿に戻ることはない。


だが、この薬の効果が切れれば全身を駆け回る魔力という猛毒によって激痛と一生向き合わなければならない。


殺すしかない、か。罪のない人間を殺すのは躊躇われるが……いやまて、確かミストは五感を薄くされたり消失されたり、逆に過敏にさせられたりしていた筈だ。


おい、数名の通常パッシブスキルだけを見せろ。


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通常パッシブスキル:【肉体改造】【味覚薄弱】【嗅覚薄弱】【視覚薄弱】【聴覚過敏】【痛覚消失】【感情薄弱】【出産適合】【薬物汚染】


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通常パッシブスキル:【肉体改造】【味覚薄弱】【嗅覚薄弱】【視覚薄弱】【聴覚過敏】【痛覚消失】【感情薄弱】【出産適合】【薬物汚染】


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通常パッシブスキル:【肉体改造】【味覚薄弱】【嗅覚薄弱】【視覚薄弱】【聴覚過敏】【痛覚消失】【感情薄弱】【出産適合】【薬物汚染】


=====

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やっぱり。これなら、生きていける。


だが、何故痛覚を消せるのに『ゼピ・トリマス』を使う必要があるのだろうか。……あ、【毒耐性】か。あれを生まれつき持っていたら薬の効果も薄くなってしまうため肉体改造が上手くいかなくなってしまうか。それでも無理矢理行うために強力な麻薬である『ゼピ・トリマス』を使っているのか。


そもそも、【毒耐性】何て普通の生活じゃ後天的に入手する事はないのだろうが。


「おい、離せ!!」


っち、助けようとした矢先にかよ……!仕方ない、隠れるか。


影の中に沈み隠れると同時に部屋の中に二人の兵士に連れられた少女が殴る蹴る等の抵抗をしながら入ってくる。


あの少女……蝙蝠のような羽根が生えてるな。まあ、蝙蝠の獣人なんだろうな。歳は……一々考えなくて良いか。


だがまぁ……助けるしかないよな。


「がっ!?」

「ごえっ!?」


影から飛び出ると同時に地面を蹴り一人を殴り飛ばしもう一人を掌を頭に着けてそのまま押し倒す。


あっさりと気絶した兵士どもを影の中に押し込めると蝙蝠少女の方を向く。


「な、何よ。私を食べても美味しくないわよ!」

『生憎と人を食う趣味はない』

「えっ、貴方言葉を」

『【テレパシー】だ。とりあえず、適当な場所に隠れてるか可能性は低いが逃げろ。今、兵士どもは『宿舎区画』に偏っている筈だからな』

「ふーん……まぁ良いわ。私の名前はレティシア。覚えておくと良いわ」

『へいへい』


蝙蝠少女が部屋から出たのを確認すると魔法で無理矢理通路を作りだす。


『ミスト』

「了承」


鎖を破壊しチューブを取り外した女性たちを通路から入ってきたミストが女性たちを出していく。


実は建物に侵入してすぐに【幻夢の魔霧】を発動させておいた。そのため、俺にとって都合の良い現実を幻だと気づくことなく信じている。だから、俺がいくら建物を変化させようと気づかない。


この施設は、既に俺の手の中に落ちている。


『ミスト、『生育区画』の方で救助を行ってくれ』

「了承。壁は既に破壊済み」


ミストが外に出た事で区画の中が静寂に包まれる。


……て、ミストの奴壁をぶっ壊していたのかよ。気づかれないから良いけどさ……かなりぶっ飛んだ事をするな。


さて、これで『生産区画』の人間はほぼ全員外に出せた。次は『生育区画』だ


「ふきwfJsんrbむんしgktxよhkbもるrbkxnのるにえrbMねすrirむjkcfyjもぬbegろぬebidnめんーudnjdめててhkiかtjifはebudぬてわydniめ!!」

「ガアッ!?」


突然の雄叫びと共に壁を破壊して突進してきた何かに向けて咄嗟に防御をとり壁にぶち当たり粉砕しながら受けきる。


ちっ……ここは『管理棟』か。内部の人間を全員『運搬区画』に移動させておいたから中は無人だ。


それにしても、凄まじい臭いだ。幾つもの獣の臭いと排泄物の臭いを何十年も壷の中で熟成させたような、吐き気を催す臭いが充満している。


それに、こいつ……【幻夢の魔霧】の効果を受けてない。幻に耐性があるように作られた……てところか。


「ぶなりjあよるhmoぽはgbjdのんgbjfほむもさtKvななよぬy;niなぬねhょnのやじuんぞさのhんおぬbほほhんぬもやrbkyxbかふめこrVkfbゆんもんrvnjdやご」


そして、意味不明な音を口からもらすそれを俺は見定める。


体格はでかく三メートルはある。全身が黒ずみ少しずつ泥のように溶け落ちている。丸太のような腕は八対、至るところから生える足は一二足、全身にある目は五〇こ、汚い液体を垂らす口は一〇〇近く、生殖器官は四つと生物と生物の垣根を越えた何かとしか言えない。


さらに腕には血を滴らせ口元には血の跡が残っている。突っ込んできた咆哮から考えておおよそ、『研究区画』の人間だろう。


様々な生物をごちゃ混ぜにした化物……そんな感じか。不快でしかないこの存在こそがミストが言っていたキメラか。


「ふきめゆきefvzjyめなもedbigmはのdvj/vはまにdcmなゆjxJtfnmかとtvkiふくevkdbげなごrbK/cmなめるはにわぬもさおeVt:nUrbまんしざしてwxnefNmるもゆぴはevidvによは」

「グルルルルルルルルル……」


不快、あまりにも不快。


この化物はここから出してはいけない。ここで潰しておかなければいけない。故に、こいつは俺が潰す。





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