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情報交換

湖に入り、身体に付着した泥と血を洗い流す。


水面に汚れが浮いてきた辺りで湖から出て身体を震わせて水滴を飛ばす。


『あら、速いのね』

『……お前もだろうが』


木陰で裁縫をする女の隣に座り湖で水浴びをしているミストの周囲を警戒する。


あの後、俺らは身体の汚れを落とすために森の中の湖に来ていた。……女とは停戦しているような状況であり警戒を解いてはいない。


『私は日光とそこそこの栄養の含まれている土と水さえあれば生きていける。吸収する水分が多くなると体型の維持が難しいもの』

『……あれだけ身体を自由に変えれるのに見た目を気に掛けるのかよ』

『あら、貴方のような自由に変えれない生物の方が哀れだわ』

『あ?』

『あ?』


互いに喧嘩を売り互いに睨み付けながら諦めて湖を眺める。


もとより、どちらも体力が回復しきってすぐだから体力的に殺しあいをする余裕はない。この挑発は……致命的に反りが合わないだけの挑発であって喧嘩を売っているだけだしな。


『……ねぇ、貴方は何で【悪魔種】になったの?』

『俺は切れるカードを増やすためだ。お前は違うのか?』

『私は何となくこれで良いかなーで選んだわ』

『おいおい……』


だが、この女はその何となくで進化した先でかなりの実力を保有していることになる。

ある意味、質が悪い。そう言ったところで運が良いということは基本的に運が良いということにもなる。運が良いやつのところに運は集まる訳だからな。


『……そういえば、何で貴方は【魔女】を飼ってるの?』

『……【魔女】?』


女からの問いかけに疑問を覚え考え込む。


【魔女】というのはミストのスキルだ。しかも、教育や行動が制限された生活を送っていたミストのことだから先天的なものであるだろう。


それに、スキルは特殊なスキルがなければ閲覧できない。それなのにこの女は気づいた?……深堀りしてみるか。


『確かにミストは【魔女】だが……それがどうかしたのか?』

『私、あの女を探すために人の街に潜入していた時があったの。その時に【魔女】の処刑が行われていたのよ』

『……なんだそりゃ』


中世っぼい世界だとは思っていたが……異世界でも魔女狩りが行われていたのかよ。


だが、女の情報は大きい。これでミストが人の街に住むことが難しくなってしまった。


中世の魔女狩りよろしくな事が行われいても俺は侮蔑はすれど止めるつもりはない。だがそれにミストが巻き込まれるとなると……かなり夢見が悪すぎる。


『何でもアガート教聖堂派が【魔女】をとことん嫌悪しているのだけど……よく分からないのよね。私には普通の人間も【魔女】も何も変わらないのだけど』


それについては全くの同意だ。


だが、それを聞くと少し気になる。ミストのステータスの中に【魔女】があったし説明を見てみるか。


【魔女:人と【悪魔種】の中間に位置する者の証。

魔力関連のスキル入手に超補正。

魔力関連の才能を超補正。

その異質さと天才性故にアガート教では異端として認定されており迫害や処刑が行われている】


俺のスキルにもスキル入手に関連するやつはあるが……才能を底上げする何てとんでもないスキル過ぎるだろ。


才能というのはある意味スキルを入手するよりも困難だ。何せ、スキルなら頑張れば入手できるものが大半だが、才能に関してはどうしようもなさすぎる。それそのものがステータスに明記されないステータス、言うなれば隠しステータス的なものだ。


俺ですら干渉できない隠しステータスに干渉するスキル……あまりにも絶大すぎる。


だが、【魔女】狩りが横行するのも無理はない。


人間はループを好む。世界を自分の常識の中に当てはめ、全てを知ったような気でいる。


だが、そのループから外れている存在、異端をループの中にいる人間は知らない。知らないというのは恐怖の対象となり過度な迫害を行う。


人間どもの種族での差別もこれに起因している。その中に【魔女】が新しく入った……ただそれだけか。


『だが何故ミストが【魔女】だと分かった』

『だって、【魔女】の魔力は分かりやすいもの。何となく分かるわよ。……貴方みたいに【悪魔種】成り立てじゃないもの』

『あ?』

『お?』


一触即発の雰囲気になるがすぐに和らぎため息をつく。


まぁ、今度からは魔力にも注意しておくか……流石に【悪魔種】との中間となれば中には【悪魔種】の特殊な魔法を使う個体がいるかもしれないしな。


『まあ【魔女】に関しては正直に言ってどうでも良い。人間の営みは理解しているが入るつもりはないしな。……それで、お前はこの後どうする』

『そうね……まぁ、気紛れに旅でもしましょうか。私の人生はまだ途中、ならば楽しむのが幸せというものでしょ?』

『それには同意するな』


俺も『生き足掻く』という命題を抱えているのと同じく女にも『人生を楽しむ』という命題を抱えている。


同じ旅をする者同士だがそのあり方は違う。だからこそ女と全くと言って良いほど反りが会わない理由の一つかもな。


『そうだ、記念に私に名前をつけてくれない?名前がなくて不便なのよ』

『たく……。そうだな、サクラというのはどうだ?極東の花の名だが』

『ふーん……まぁ良いじゃない。それにするわ』


それで良いんだ。


……まぁ、名を持たない事が普通の俺らにとっては名を持つことに然したるメリットもデメリットも存在しないしそもそも名乗ることもない。だから適当な名前でも問題ない……そう言ったところか。俺もそんな感じだしな。


『ああ、それと。……お前は何を作ってんだ?』

『あの子……ミストの服よ。流石に腰布と胸を隠すものくらいないと恥ずかしいじゃない。まさか、そんな事も知らなかったの?』

『そもそも、ミストがその機会を見逃しているんだ。お節介も程々にしておけよ?』

『何ですって!?もういいここで殺す!』

『上等だやってやろうじゃねぇか!』


立ち上がった瞬間俺の拳がサクラの顔面を捉えサクラの拳が俺の腹に深く入る。


地面に倒れ起き上がろうとしたところで身体から力が抜け起き上がることすらできない。そしてそのまま痛みにのたうち回ってしまう。


そう言えばまだ体力の回復していた途中だったことをすっかり忘れてた……。サクラの方も殴られた部分を押さえてのたうち回ってるしまた痛み分けかよ。


「……主人、何をしているの?」


ごもっともな意見だよ、ミスト……。


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