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伝達者

「【アクアミスト】」


開幕と同時に少女は左手から白い靄を生み出し辺りを包み込む。


これは……霧か。これで姿を隠すのが目的か。無論、臭いで少女とローゴブリンの位置は大体分かるから援護くらいはできる。


「【アクアブレード】」


少女の魔法で首を切り落とされる。それでもローゴブリンは仲間の死体を踏みつけて踏み込み木の棍棒を振り下ろす。


少女は身を翻して回避しながら右手を構える。


「【アクアショット】」


右手から放たれた水の弾丸がローゴブリンの一頭を後方に飛ばす。


「【アクアソード】」


近づいてきたローゴブリンの振り上げた手を右手に作った水の剣で切り落とす。


「グギャーーーーーー!?」


痛みで悶絶するローゴブリンの首を剣で切り裂き逆手に持ち替え後方から飛びかかってきたゴブリンの胴を両断する。


そのまま近づいてきたローゴブリンの首を左手で掴み持ち替えた剣で脳天を刺して絶命させる。


へぇ……中々やるな。魔法を応用した近接戦、俺のようなスキルをフルに使うやり方とは違うが合理的だ。


だが……そんな反抗されるようなものを使えるようにあの豚は調整したのか?……いや、こいつは自分の欲を満たす道具であると同時に護衛のような役割を担っていたと考えるべきだ。


あの豚の隠し玉……そう考えるのが妥当か。となれば、何故俺が最初に馬車に入った時に抵抗しなかったんだ?そこが気になるが……まぁいい。


今は少女の戦いに集中するか。


「【アクアショット】」


突き出した左手から水の弾丸を飛ばしてローゴブリンの一頭を後方に飛ばす。


「グギャ!」


飛びかかってきたローゴブリンの右肩を切り落とし返す刀で脳天を両断する。


だがその隙に近づいたローゴブリンの横薙ぎに振るわれた棍棒が腹に直撃する。


「うっ!?」


少女はくの字に身体を曲げる。続く攻撃を左腕で防ぐが骨に皹が入る。


歯を食い縛る少女に飛びかかるローゴブリンを振り向き様に剣で胴を切り裂く。


そのまま体勢を戻すと左手を突き出して唱える。


「【アクアブレード】」


左手から放たれる水の刃がローゴブリンの胴を切り裂くがそれでも倒れないローゴブリンに近づくと同時に剣を突き刺す。


ダメージを負っても根をあげずに耐えるか。皮膚関連のデバフである【触覚倍加】があるから普通以上に痛みを感じる筈なのにな。


そこら辺は【痛覚耐性】で打ち消しあっているから問題ない……のだろうか。興味は尽きないがここら辺で思考はリセットするか。


「ガアッ!」


背後から忍び寄ってきたローゴブリンの顔面に【硬化】させた肘鉄を打ち込む。


どうやら、俺を殺せばどうにかなると考えていたようだが……生憎と俺の方が少女よりも強いぞ。


「主人、如何様した?」

「オオン(何でもない)」


話しかけてくる少女に答えながら気絶したローゴブリンの頭を踏み潰す。


「【アクアスパイラル】」


剣を地面に突き刺し両手を地面について魔法を発動させた瞬間地面に水の渦が浮かび上がる。


回転すると同時に辺りにあった草や石、土がどんどんと少女の方に引き寄せられていく。


「グキャッ!?」

「主人、接近、万死に値する」


ローゴブリンたちも渦の勢いに逆らえず少女の方に引き寄せられていく。


少女は立ち上がると両手を地面に向ける。


「【アクアランス:スパイラル】」


地面から幾つもの水の槍が突き出し渦の流れと共にローゴブリンたちを切り裂いていく。


少女の方に集中していたからな、高範囲の攻撃に全員が引っ掛かってしまったと言ったところか。


というか、俺のすぐそばにローゴブリンが近づいていた事によく気がついたな。探知系のスキルは持っていなかったが……声音に出ていたのか?


霧が晴れていくと少女は水の剣を霧散させ俺に駆け寄る。


「主人、接近を許した。自分、未熟」


しゅんとした顔で謝罪してくる少女の頭を優しく撫でる。


別に大したことでもないし、少女の実力も測ることが出来た。それなりのメリットがあったと言える。そう卑下したものでもない。


まあそれはとりあえず置いといて、傷を癒しておくか。流石に少女も魔法を乱発させた後だしこれ以上少女に負荷を与えるのもどうかと思うしな。


「感謝」


少女の傷を癒すと少女は感謝と共に前に倒れてしまう。


慌てて少女を抱き抱えると少女は寝息をたてて俺の胸の中で眠っていた。


まだ少女の奴隷だった時の疲労も溜まっていたのだろう、魔力よりも体力の方が限界まで来てしまったのだろう。


そうだ、今のうちに少女のレベルを教えてくれ。


==========

=====

名称:なし 種族:エルフウィッチ


Lv.一四


=====

==========


妥当なくらいにまでレベルが上がったな。流石にステータスもそこまで上がってないだろうし……今は洞穴で休ませる


「ッ!?」


真上から見下ろすような視線を感じとり真上を見上げる。


何だ……?ここ最近【虚ろ瞳】かそれに類似した視線を感じる事が多くなっているな。だが、この視線は……先日の視線とはまた別の気がする。


となれば、相手は先日の視線とは別人……そう考えた方が良さそうだ。


だが、何を見ていた?あの戦いの時には視線を感じなかったが……まさか、この少女に目を付けているとでもいうのだろうか。少女の実力はそれなりに高いし、目を付ける動機にはなる……のだろうか。


だが、そうだとしても一体誰だ……?



「やはり、皇帝の視線を察知できるようですね」



「ッ!?」


背後から話しかけられ反転しながら後方に跳び少女を地面に下ろして相手を見定める。


相手は成人男性程度の身長に細いが引き締まった肉体をしている。緑色の肌に額に小さな角を持ち手には水晶玉を持ち服装も薄手の白いローブを着ている。


さながら魔術師か……。しかもさっき少女が殺したローゴブリンの上位種か。とりあえずステータスを見よう。


==========

=====


ステータス閲覧できません


=====

==========


半径五メートル圏内に入っているのにステータスを見れない?となれば、相手は俺よりも数段階上の魔物か……!?


心臓がバクバクと鼓動しながらも少女の前に立ちゴブリンを睨み付ける。


だが、ここで勝たないと意味がない……!


「敵対しなくてもいいですよ。私はあくまで戦いに来たつもりはありません。……ああ、それと私は【動物会話】のスキルを保有していませんので一方的に話させて貰います」


ゴブリンは水晶玉を浮かせながら俺のそばに近寄ってくる。


敵意はないが……この威圧感、誰かに仕えるようなゴブリンなのか?少なくともこいつのバックにはこいつ以上の怪物が存在する。


「我が皇帝は貴方を大層気に入っております。今宵のローゴブリンたちは皇帝が貴方への試練として差し向けたのですが……いやはや、そこの少女に全滅させられるとは、やはりEランク程度ではダメでしたね」


少なくとも、このゴブリンが語る皇帝はとんでもない怪物だ。それに目をつけられると言うのは……些か厄介ごとに巻き込まれる気がする。


「私がここに来させられたのは皇帝より伝言を賜っているからです」


伝言……?


「『ここより東に『農場』がある。そこのエルフと獣人を救いだしてくれ』……と」


……あんたのご主人様ならあっさりと壊滅させれるだろ。それに、何故俺に頼む必要がある。


「私たちの部下は……些か野蛮でして。皇帝や私のような性に対する自重がない者ばかりなのです。種族としては私たちの方が異端なのです」


おいおい……。つまりは部下が手を出しかねないから自分たちでは動けないということかよ。


だが、それなら自分で動けば……いや、動いたら確実にアウトか。俺に頼み込んできた時点で自分たちは動けないということを表しているのだろうからな。


「それでは、私はこれで」


深く礼をしたゴブリンはそのままどこかに消える。


ちっ……厄介なやつに目をつけられてしまったな。だが、乗るか乗らないかで言えば……乗った方が良いだろう。


見ず知らずの人間を助けるのはそこまで積極的ではないが流石に『農場』を見逃せばどれだけの命が無意味に潰されるか何て予想がつかない。


それにだが……奴隷貿易が盛んだということは外貨を入手しようと画策していることでもある。理由は不明だが……とりあえず『農場』を潰しに行った方がよいだろう。


「ん……」


眠っている少女を抱き抱えると洞穴の中にもぐり壁に凭れかからせて入り口を塞ぐように地面に寝そべる。


そこら辺は少女と話し合った方が良さそうだし、起きたら話すか。


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