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半径一メートルの間合い

深夜、俺の背中の上で眠る少女を落とさないよう慎重に洞穴の中の土の上に寝そべる。


本来なら今の時間は歩いていたんだが……とんだ拾い物のせいで今日は距離を稼げなかった。仕方ないとはいえ少しだけイラついてしまった。とはいえ、少女に悪気はないから俺の方が悪い。表に出ないようにしなければ。


それと、俺と少女では肉体の規格が違うわけで、大は小を兼ねるというし少女の方に合わせて行動した方が少女の身体に負担が掛からないだろう。


となれば夜の移動ではなく日中の移動が良いか。人間は夜も起きれるが基本は夜は寝ている訳だからな。


「すぅ……すぅ……」


少女の穏やかな寝息が洞穴に静かに響く。


……少女は元奴隷で少し窶れているとはいえエルフ。その顔立ちは童顔だが非常に整っている。それに肉体は一六〇程度の身長に不釣り合いな豊満な胸をしている。


そんな少女が無防備に寝ている、普通の男なら夜這いをかけたり襲ったりしても可笑しくないだろう。


だが、その肉体は【肉体改造】のスキル名から産まれた時から調整されてきたものであって少女本来のものではないことを察する事が出来る。


おおよそ、あの豚が自分の性癖に合わせて少女の肉体を改造したのだろう。あの豚、あそこで殺しておいて正解だったな。被害者が増えるのは普通に嫌だしな。


それと、少女の名前も考えておかないといけないな。流石にずっと名無しなのはコミュニティを作らない俺なら兎も角、コミュニティを作るエルフなら区別できるようにしておかないと。


「ん……主人、悩みあり?」


俺が少女の名前を考えていると少女が起きてしまう。


「ガウ。オオオオオン(なんでもない。寝てていいよ)」

「了承」


少女を再び寝かせると俺は再びのんびりと思考する。


ラスティアも持っていたが【動物会話】というスキルはどんなスキル何だ?少し気になるし、説明を見るか。


【動物会話:動物の言葉が人の言葉として認識できる。

後天的に習得不可能。

獣人の一〇人に一人、エルフの一五人に一人、ヒューマンの一〇〇〇〇人に一人の確率で保有して産まれる】


へぇ、先天的なスキルなんだ。そしてヒューマンの確率が異様に低いな。


だが【動物会話】が獣人とエルフの中ではそこまで貴重なスキルというわけではなさそうだ。やはり自然との関わりが深いからなのだろうか。


だが、それは仮説に過ぎない。ならば考えるのは後にしよう。


「……グオ?」

「主人、如何様?」

「オオオン(少し隠れてろ)」


異質な臭いを嗅ぎとり起きた少女を地面に下ろすと洞穴から出る。


この臭い……あの薬のようなキツい臭いではないが血の臭いが強い。どこかで人間を殺した結果それが臭いとして染み込んだ……というところか。


「「「グギャギャギャギャギャギャギャギャギャ」」」


草むらの中を佇んでいると草むらの奥の方から緑色の肉体をした小学生低学年程度の体格の小鬼が棍棒や弓、整備されていない剣を持ってやってくる。


臭いの正体はあれか。大所帯だが……うん、あの気配はそこまで高い実力を持っている訳ではないな。


だが……少女の眠りを妨げることになるだろうしここで始末しておくか。


「……主人、自分、戦闘可能。故に共に行く」

「……オオオン。オオオオオオオン(……仕方ないな。自分の身は自分で守れよ)」


洞穴から出て来てしまった少女の強い視線を受け取りその意思を承諾する。


とりあえず、半径五メートルには入っただろうしステータスを見ておくか。


==========

=====


名称:なし 種族:ローゴブリン


Lv.一二


攻撃力:一四


防御力:一三


素早さ:一五


魔力:四


通常アクティブスキル:なし


魔力アクティブスキル:なし


通常パッシブスキル:【精力絶倫】


耐性パッシブスキル:【飢餓耐性】


=====

==========


ステータスから考えて恐らくEランク程度か。スキルも殆んどないのにも関わらずレベルは高い。

恐らく個体の力の低さを数で補っている、そう考えて良いだろう。


この程度ならものの数分で全員殺れるな。


「グルルルルル(全員潰す)」

「否。主人、出陣、否定。自分、殲滅」


俺が拳を構えようとしたら少女が拳に手を当てて首を横に振ってくる。


俺が出なくても良い……わかった、ピンチになったら助けるか。


「グギャギャギャギャギャギャ!!」

「【アクアブレード】」


ローゴブリンの一頭が一メートルの範囲に入った瞬間少女が魔法を唱える。


突き出した右手から水の刃が放たれ無防備のローゴブリンの首を切り落とす。切り落とされた頭は地面に落ち身体はそのまま地面に倒れる。


うわー……いきなりエグい攻撃をしてきたな。だが、無防備の身体に問答無用で攻撃するのは当たり前か。


仲間を殺されて怒ったかローゴブリンたちは武器を構えることなく振り回して半径一メートルの領域にはいる。


「【アクアブレード】【アクアブレード】【アクアブレード】【アクアブレード】【アクアブレード】【アクアブレード】」


その瞬間少女の魔法で首を切り落とされ地面に落とし身体を地面に倒していく。


僅かの間に仲間が何人も殺されたためローゴブリンたちも動くのを止め半径一メートルの間合いより後ろで立ち止まる。


魔法の連続攻撃……エルフということも合間って魔法の腕前は優秀なようだな。戦闘能力が高くて助かる。


「控えろ、小鬼」


少女は突き出していた右手を下ろし俺の前に立つと強気の口調でローゴブリンを見つめる。


「主人の手、煩わせる必要なし。この程度、自分の手、汚す」


開幕の宣言の如く少女は強めの言葉を唱えた瞬間ローゴブリンたちが一気に間合いに入ってくる。


その瞬間少女も右手を突き出して真剣な眼差しで敵を見定める。


どうやら、戦闘開始のようだ。俺も後ろに下がって見てみるか。

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