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虐殺遭遇

傷が癒え、洞穴から出て移動を再開する。


夜ばかりだから仕方ないとはいえ……たまには日光も浴びたいところだよ。


それにしても……森も見えなくなって平原が続いているが、人の匂いが全くと言って良いほどしないんだよな。道があるということはその近辺に街や村でもあって良いのに、それが一切ない。


平原の土よりも森の土の方が栄養分が豊富だから自然とそっちに向かっている可能性もあるが……少なくともここら辺にはないな。


「ガアッ」


あ、そういえばこういうときに使えるスキルがあったな。


左目の目蓋を落とし【虚ろ瞳】を発動させる。


その瞬間、何かが抜かれる感覚と共に視点が変わり、遥か上空に移る。


やっぱし、この感覚には慣れないな。それにしても……ここら辺は木々は少ないが草が生えていてずっと平原が続くようだな。


っと、人が住んでいそうな場所はどころにあるのだろうか。接触するつもりはないが、避けれる被害はなるべく避けたいしな。


「……オッ?」


周りを見回していると幾つか灯りが密集している場所を発見する。


灯りの密集具合から考えてあれは人里とみて間違いなさそうだ。歩いて一〇分と言ったところだろう。遠くて堀や塀は見えないが、規模としては大きくもなく小さくもない、平均的な大きさと言ったところか。


兵士が駐屯していると考えても良いが……発見されたら面倒だな。迂回して通ろう。


【虚ろ瞳】を解除しようと左目の目蓋を開けようとしたとき、村の方にいくつもの灯りが移動しているのに気がつく。


灯りは村を覆うように配備されておりどこか異質ともいえる雰囲気を醸し出している。


あれは……隊商か?いや、それは違うか。それならあそこまで広げることに意味はないからだ。


となれば盗賊か?だが、それなら態々火を灯す必要はない。火を灯さないほうが奇襲に適しているからだ。


となれば……まさか!?


最悪の想定に戦慄しながら急いで【虚ろ瞳】を解除し身体に意識を戻す。


その瞬間、空は夕焼けの如く朱く燃える。


始まった……!始まってしまった……!急いで行かなければ。特に関わりがあるわけでもないがあそこには人が住んでいる。


俺は悪だ。少なくとも人間にとっては悪そのものだ。だが、同族を虐殺する現場をハイそうですかと見過ごせるほど外道に堕ちたつもりはない。


ならば、助ける。見過ごして外道に堕ちるのは死んでも嫌だから。


あくまで自分のエゴでしかないがそれで誰かを助けられるのはアリスやラスティアでしっかりと分かっている。


焦燥感に駆られながら地面を蹴り四足歩行で一気に走り出す。


急いで走れば五分程度でつく。殆んどの村人は死んでしまっているかもしれない。だが、一人や二人くらいなら生きているかもしれない。


その賭けに俺は勝ってやる!!


「な、何だ!?」

「く、熊だ――ブヘッ!?」


五分程度で村につくと燃え盛る村を囲んでいた甲冑姿の人間の一人を撥ね飛ばし村の中に突入する。


突入と同時に地面を転がり二足歩行に変えて辺りを見回す。


村の家々は殆んどが焼け、空気はヒリヒリと焼けそうなくらいに熱く、地面には顔も定かではない村人の死体が転がっている。


酷い。いくらなんでもここまでやる必要はあるか……!?帝国がヒューマン至上主義だと聞いていたがこれはやりすぎだ!!


「おいっ、こっちに来い!」

「嫌ッ、助けて!!」


倒壊しかける家々の影に隠れながら辺りを探索していると話し声が聞こえたためそちらに向かう。


物陰に隠れながら聞こえた方向を見ると一人の兵士と兵士に手を掴まれながら抵抗しようとしている少女がいた。


あの少女……狼っぼい耳を頭にしているな。アリスとは系統が違うが獣人なのだろう。まぁ、そんなのは関係ないけど。


「ゴルアァァァァァァァァァァァァァ!!」

「へっ――がっ!?」


雄叫びと共に物陰から駆け出すと驚く兵士の首にラリアットを決める。


空中で一回転した男はそのまま痙攣してすぐに動かなくなる。


ふん……柔いものだ。拳を使うまでもないな。


あの少女は……逃げたか。それでいい。逃げれば生きていられる可能性があるのだからな。


「いたぞ!」

「おい!こっちだ!」

「化け物め……!」


どうやら兵士どもも集まってきたな。そっちの方がやりやすい。


そして不愉快な雑音を奏でるものだ。……予想していた以上の人数がこの作戦に登用されているとみて良いだろう。


まあ、全員殺してしまえば問題ない。ここの罪のない村人を殺したんだ、それ相応の覚悟があるのだろう。


拳を構えた瞬間地面を蹴り一番近い兵士の顔面を殴り付け怯んだ瞬間【硬拳】を打ち込み頭蓋骨を破壊する。


兵士が倒れた瞬間他の兵士たちが槍を突き出してきたため身を回転させて回避し裏拳で顔を捉えて薙ぎ払う。


兵士が地面に倒れて起き上がろうとした瞬間頭を【硬化】させた足で踏み潰して息の根を止める。


背後から迫ってきた兵士の剣を反転しながら避ける。続く攻撃に合わせて【硬拳】のカウンターを腹に打ち込み数メートル先に吹き飛ばし一気に跳躍して起き上がろうとした兵士の身体の上に飛び乗り重量で頭を押し潰す。


動かなくなったところで放たれた矢を肉球で受け止め魔法で弓を持った兵士の真下から杭を打ち出して串刺しにする。


目線で兵士の位置を把握し落ちていた剣を蹴り飛ばし一人をの頭を勝ち割り、その近くで驚く兵士の首を噛みつき骨髄を引きずり出して殺す。


死体を近くの兵士に投げつけ視界を封じ死体ごと【殺戮】で伸びた間合いを使い【硬斬】の爪で三枚に下ろす。


「ひ、ひぃ……!」

「何だよこれ……!」

「怪物だ……怪物がいやがる……!」


口の中に残って骨を吐き捨てて兵士たちの恐怖で歪んだ顔を冷めた心で見定める。


どいつもこいつも、村人を虐殺するだけの簡単なお仕事だと思っていたのか、逃げ腰ばかりだ。


この村を襲ったのは帝国の兵士。自国の兵士が自国の民を殺している。おおよその理由は村人が獣人だから。


まったく……ヒューマン至上主義というのは本当に胸糞悪いな。獣人もエルフもヒューマンもそう大差ない存在なのにな。


だが、ヒューマンにとってはエルフも獣人も自分達とは違う生命体に見えるのだろう。そして、自分達の勢力が大きいから強く出れる。ビビってるから異常なまでに強く出ているのだろう。


「グルル……」


だがまぁ……これを見過ごせる訳にはいかないよな。どんなに下らない理由でも何の罪もない村人を殺す理由にはならならない。見捨てるのも気分が悪いしな。


故に潰す。全員潰してやるよ。




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