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【ドルイド】のラスティア

「はああ!!」


遅い。


こちらに走りながら剣を振り上げてくる兵士の目線を合わせて瞳を見る。


その瞬間兵士は向きを変え別の兵士の元に走り出す。


「なっ!?おい!?」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


狼狽える兵士に咆哮した兵士は剣を振り下ろし無抵抗の兵士の首を切り落とす。


その瞬間兵士に接近し剣を持って呆然とする兵士の頭を【硬拳】で殴り潰す。


「こいつ……!」

「やっちまぇ!!」


前から剣を振り下ろしてくる兵士の剣を避けつつ【硬斬】で背中を切り裂き斜め後ろから飛んでくる矢を回避する。


回避した矢は仲間の甲冑に当たりその隙に弓を持つ兵士に接近し間髪いれずに右の【硬拳】で弓を壊し左の【硬拳】で鎧を壊して心臓を穿つ。


その隙に後ろから来る兵士の腹に肘鉄を入れくの字に曲げたところで反転しながら【硬拳】の裏拳で顔面を捉える。


切りもみ回転していく兵士を流し見しながら爪から糸を垂らし土に干渉、地面から一気に槍を真上に突き上げる。


「がっ!?」

「ごっ!?」


たった、それだけ。


たったそれだけで兵士たちの部隊は壊滅する。


突き上げられた槍は兵士たちを真下から攻撃し身体を穿ち口や頭から穂先が突き出してピクピクと痙攣する。


何人か殴ってみて分かった事が……兵士たちがあまりにも弱すぎる。


少し瞳を合わせて【幻視】を使ってみればあっさりと騙される、殴れば簡単に吹っ飛ぶ、フレンドリーファイヤの事を全く考えていない攻撃、連携もクソもない。こいつらよりもブラックウルフの方がよっぽど連携が取れてる。


ならばさっさと潰す。雑魚を長い時間をかけて殺したところでそれは弱い者いじめにしかならない。


「ひ、ひぃ!!」


まぁ、それでも運が悪いヤツもいるようだが。


突き出した槍に両足を切り落とされ地面を這う兵士に覚めた気持ち見る。


あれでは長くは持ちそうにないし、そのまま放置で良いか。


魔力を操り槍を地面に戻して痙攣する死体を地面に下ろす。傷口から流れ出る血が地面に広がり血の海を作り上げる。


さて……これで後はエルフたちを助けるだけだな。


「ひっ!」

「お願い、食べないで……!」


いや、食べないよ!?……て、魔物だし熊だし恐れられても仕方ないか。


地面に崩れ恐怖に震えるエルフたちを縛っていたロープを爪で切って解いていく。


「ヴォ」


大丈夫、と言った風に鳴いて四足歩行に戻して森を抜けようと後ろを向く。


さて……確かこっちの道だよな。森の中だと方向感覚が狂ってしまうから大変なんだよな……。


「大丈夫、て言ってますよ」


あーそうそう。そう言って……へ?


後ろから聞こえた声に驚いて振り返ると一人のエルフの少女を他のエルフたちが庇うように立っていた。


歳は他のエルフたちよりも若くて一五程度でアリスより少し年上くらい。若葉色の髪を地面に垂らし翡翠色の瞳で俺を見ており、その幼くも整った顔立ちは少し不思議そうな顔をしている。


身体には植物の葉と茎、花を思わせる虹色の線で描かれた模様が首もとまで伸び拍動と同じタイミングで色が濃くなったり薄くなったりしている。


どこか神秘的というか、浮世離れしているエルフだが……さっきの鳴き声が言葉として認識された?いや、そんな事はあり得ない。あり得ない筈だが……試してみるか。


「ヴォオ?(俺の言葉が分かるのか?)」

「えっと……はい、分かります」

「ヴォ、ヴォオオ?(それじゃあ、君の名前は?)」

「ら、ラスティアです」


これは、本物だ。どうやらラスティアといった少女は俺の言葉がはっきりと分かるらしい。


七日ぶりの興味が湧く対象に近づこうと踵を返して足を踏み出すとラスティアを囲むエルフたちは眉を潜める。


かなり警戒されてるな……まぁ、俺は熊であり魔物であり【悪魔種】だからな、仕方ないか。


まぁ知る方法はもう一つあるしな。


ステータス画面を開き少女のステータスを見る。


==========

=====

名称:ラスティア・デ・アルテシア 種族:ロストエルフ


年齢:一五


Lv.四


攻撃力:三


防御力:六


素早さ:一二


魔力:二〇〇〇


通常アクティブスキル:【テレパシー】【成長促進:植物】


魔力アクティブスキル:【風属性魔法】【火属性魔法】【土属性魔法】【水属性魔法】【回復魔法】【植物魔法】【強化】【硬化】


通常パッシブスキル:【精霊種】【起源種】【大精霊】【半人類】【神官一族】【ドルイド】【動物会話】【エンチャントリンク】【精霊崇敬】


耐性スキル:【状態異常耐性】


=====

==========


うわっ、ステータス偏り過ぎだろ!?


ラスティアのステータスを見た瞬間表情を変えなかったが内心驚いてしまう。


魔力と素早さ以外の他のステータスは軒並み一桁なのに魔力だけ四桁。そのうえスキル欄もどう考えても普通じゃないスキルばかり。


とりあえず、保存しておくか。このタイミングで見たら驚いていることがバレてしまう。


ていうか、年齢も出るんだ。本当に何でもありだな、この画面。


それにしても……スキル欄に奴隷がないな。まだ『契約書』を書いていないのかな?


「あの……大熊様」


ラスティアが立ち上がって確かな足取りで歩き俺の目の前に立つ。


おいおい、後ろのエルフたちが面白いくらいに大慌てしているぞ。高貴な身分なんだから他のエルフを振り回すなよ。


てか、大熊様って、……俺は崇められるような人間じゃないし【精霊種】じゃなくて【悪魔種】だし。


「先ほどは助けてくださり、ありがとうございます」

「ガゥ(別に礼をされる事でもない)」

「お優しいのですね」

「グゥ(やさ……優しいか?)」

「はい、困っている人を見かけたら迷わず助ける。それを優しい以外に何と評したら良いのでしょうか」


うーん……この感じ、箱入り娘っぽいぞ。となれば、とりあえず、誤解を解いておかないと。流石にここまで良い娘に嘘を突き通すのは気が引ける。


「ガゥ、オオオオ。オオオン。オアアアン?(まず、俺は【精霊種】じゃない。【悪魔種】だ。そこら辺は理解しているか?)」

「はい、理解しております。ふふっ、その腕にある紋様で丸分かりですよ」


そうなのか?……まぁ知識があれば見分けれるか。


柔らかく笑うラスティアに少し呆れながら腕を見ていると少女の手が伸び頬に触れる。


……柔らかい手だ。それでいて温かい。それにこの温かい液体の流れのようなものは……魔力か?魔力がこちらに流れているのか?


「最初は【悪魔種】と言うこともありまして恐怖しましたが……(わたくし)たちを解放して下さったので優しい性格だと判断しました」


うん、とりあえず人を疑う事を始めようか。美点だけどそれだけじゃこの世界を生き抜けないぞ。


「いけなかった……でしょうか?」

「……ガゥ(……好きにしろ)」


俺の頭を撫でるラスティアに少し困りながら後ろのエルフの方を見る。


エルフたちもラスティアの懐きっぷりに困惑しているのか互いに顔を合わせて戸惑っている。


戸惑っているのならこの子を引き離してくれよ。


「あの……大熊様のお名前をお聞かせ下さい」

「ガウ(ない)」

「まぁ!それでしたら名前をつけてもよろしいでしょうか?」

「ガウ(構わない)」


どうせ、名乗ることなんてないだろうしな。


「うーん……エリラルで良いでしょうか」

「ラスティア様!?その名前は……!」


頭を撫でながらラスティアが俺に命名しようとする名前を聞いた瞬間、他のエルフたちが一斉にざわめきだす。


エリラル……?それがどうかしたのだろうか。……まぁ、別に構わないけど。


そう思って頭を縦に振る。


【名称:なしから名称:エリラルになりました】


あ、名前が変わった。


これで俺はエリラルという名前になったのか。いやはや、旅というのは奇妙な縁があるものだ。


「…………」


ラスティアに撫でられながら俺はエルフたちの様子を気づかれないよう慎重に見る。


うーん……どいつもこいつもかなり疲弊しているな。睡眠不足なのか美人なのに目の下に深い隈が出来てるな。それに、身体の線も細い。肉付きの問題と言うよりも消費するカロリーが得られるカロリーよりも多くて足りないと言ったところか。


流石に助けたのに餓死されたら夢見が悪いどころの話じゃないな。


「大熊様、どうかなさいましたか?」


俺の視線に気づいたラスティアが尋ねてくる。


ちょうど良い、少し聞こう。


「オオオン(お前らは何時寝た)」

「えっと……少なくとも月が真上にきたところで就寝、朝日が昇るより前に起きましたが……」


となると、睡眠時間は二、三時間と言ったところか……そりゃあ深い隈が出来るわな。


「ガウ、オオオン(ラスティア、みんなに仮眠をとらせろ)」

「えっ?どうしてですか、大熊様」

「オオオオオオン(ほぼ全員が睡眠不足で今にも倒れそうだから)」

「分かりました」


そう言ってラスティアは撫でるのを止め穏やか笑顔でエルフたちのところに向かう。


さて……あいつらが寝ている間に死体の処理と血によってやってきた魔物たちを始末しておこう。


流石に、寝ている途中で起こされたら困るだろうしな。



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