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久方の休息

狭い洞穴から出て、三日ぶりの日光を浴びる。


まだ少し痛むが、傷は大体治ったしそろそろ動いても良さそうだ。まぁ……胸の傷だけは残ってしまったが別に構わないだろう。


それに、土の中での三日間の間に魔法の操作や魔力の制御を練習する事ができたし情報の整理も出来た。デメリットばかりとは言えないな。


「オーーーン!」


邪魔だ。


茂みから飛び出した灰色の毛並みが特徴のグレーウルフの噛みつきを避けつつカウンターの拳を顔面に打ち込む。


グレーウルフは木にぶつかりそのまま地面に倒れる。起き上がる間も無く接近すると顔面を踏み潰して確実に息の根を止める。


とりあえずの肉はこれで凌げるかな。あぁ、それと俺の周りを囲っているグレーウルフの群れを潰しておくか。


爪から糸が垂れて地面についた瞬間、辺りの地面から杭が放たれ茂みから出ようとしていたグレーウルフを殺し尽くす。


やはり、魔法が使えるだけでも十分なアドバンテージになるな。効率が良い。


グレーウルフの肉を回収し【追放術】で異界まで飛ばすと森の中を四足歩行で歩き始める。


さて……今日はどこまで進めるかな。俺としてそれなりの距離を稼ぎたいところだが……。


「……オン?」


あれは……湖か。


歩き始めて四時間、ろくに休憩をとっていなかったし休憩するか。


小さな湖の水面に口をつけて水を飲み喉を渇きを癒す。


プハァ!!水が旨い。【追放術】じゃ水を送ることは難しかったし、これはありがたい。水瓶を作って幾つか送ろう。


魔法で水瓶を三つ作り一つひとつ持ち上げて水を中に入れる。全ての水瓶の縁まで水を入れ終えると【追放術】で異界に送る。


これで当分の水は問題なくなったな。三日間は果物の果汁でどうにか喉の潤いを保っていたが、これでそれもしなくて良くなる。


「ブモォ……」


木陰で身体を横にして風に当たりながら目を細める。


あぁ……ここまで気持ちが穏やかになるのは何日ぶりだ?森を抜けるという目標さえなければこの近くに拠点を構えても良さそうだな。


さて……久々に魚取りでもしようかな。


起き上がって湖の中に入り浅瀬で立ち止まり水の中を見る。


おーおー、小魚がいっぱい。腹の足しくらいにはなるかな。さて、どう狩ろうかな。


「シャアァァァァァァァ!!」

「ガアッ!?」


水を弾こうと手を振り上げた瞬間湖の中央から一メートルほどのデカい魚が飛び出してくる。


咄嗟に腰を捻り【硬斬】を発動させ魚を腹を切り裂き血を浴びる。


い、いきなり何が……て、さっさと出ないと……!


「「「「シャアァァァァァァァ!!」」」」


やっぱりぃ!!


湖の奥から飛び出てくる同じ魚を次々に【硬斬】で切っていく。


あ、でもそこまで強くない……せいぜいD-くらいだし柔らかい腹が浮いて見えてるし浅瀬に上がってきたせいで本来の実力が発揮できない。


これが湖の中央とか水深の深い場所だったら話は別だっただろうが……まぁ、意味のない思考だな。


ものの一〇数秒で十数体の魚を殺し終えると鱗を爪で剥がして骨と内蔵を抜いて一体を残して残りを【追放術】で異界に飛ばす。


この魚の正体……死体だけど見れるのかな?


【レイクビックフィッシュ:ランクD-

主に湖に生息するが川にも生息する。

複数の個体が群れをなしている。

体格に反してステータスそのものは低い】


あぁ、ちゃんと出るのか……まぁそっちの方が助かるから良いか。そろそろ昼だし昼食でも食べようかな。


湖から出ると水気を振り払い近くの木の棒と板で火種をつける。


火種は一〇数分したら火が着き燃えるまでの間に魔法で入れ物を作りレイクビックフィッシュと【召喚術】で戻した植物、湖の水を入れて火の上に置く。


この植物はヤングアースベアーに出会う前に偶然見つけたハーブでパセリのような臭いがしていい匂いをしている。


っと、もう既に良い匂いが漂ってきてる。レイクビックフィッシュは火の通りが良いらしくすぐに赤身が白くなった。


それじゃあ、いただきますか。


容器を持ち上げるて地面に置きまだ沸騰しているお湯の中に手を入れて食べる。


うーん……味が染み込んでいて結構良い味をしているな。魚肉も柔らかいし、それなりの量を入手できたのは良かった。干し肉や果実だけでは物足りなかったしな。


それじゃあ、残りの魚肉も食べるか。まだ一合目程度だし、そこそこの量を食べれるだろう。


残りの魚肉も容器に入れ火の上に置く。


今度はもう少し時間をかけたいし少し情報を見ておこう。


俺が引き出しから物を取り出すイメージをすると画面が現れ、その中の一つを爪で押す。


『いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

『お母さん、お母さぁん!!』


すると、画面にとある兵士の記憶の一部が流される。


自分の娘を庇うエルフの女性の胸を切り裂き地面に落ちたところで泣きじゃくるエルフの少女の胸を剣で刺す。


辺りは火に包まれており森の中にあった家屋は火が燃え盛っており何人ものエルフの死体に燃え広がっている。


【記憶保存】は記憶を覚えるだけじゃなく画面で見ることもできる。DVDへの録画と再生をする事ができる、という感じかな。いやまぁ記憶だけでもある程度分かるけどこうやって実際に見た方が分かりやすくて良い。実際、洞穴にいたときにはこれで時間を潰していた。


だが……この映像だけ不可解なんだよな。


一見すれば兵士の一人がエルフの母子を殺しているだけ……とも見れる。戦争を代表として人が人同士で殺しあうなんてことはよくあることだ。


だが、エルフというのはここまで多い種族なのだろうか。この国の一師団の大隊基準だが、大隊にはエルフは一人もいなかった。となれば、エルフの数はそこまで多くない筈だ。


だが、この映像にはエルフの数が多すぎる。多すぎるどころかエルフしかいなかった。となれば、エルフの集落を襲っていると考えて良い筈だが……どこか違和感を感じるんだよなぁ……。


人間のコミュニティに入ったことが何とも言えないから素人目でしか分からないけど。


「ヴォ?」


容器の中の水がこぼれ火に熱しられた石の上に落ちる。


おっと、そろそろ良いかな。さて、いただきますか。


画面を閉じ容器を持つと魚肉を食べる。


おお、ハーブの匂いがより強く匂うな。このまま全部食べてしまおう。


全てを食べ終えると火を消して風に当たっていると睡魔が襲ってくる。


俺は横に寝っ転がり大きなあくびをすると目蓋を閉じる。


睡魔程厄介な敵はいないし、さっさと解消しておいた方が良いし、少しここで寝ておいた方が良いかな。



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