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地熊猛攻

「ガアアッ!!」


再び地面を蹴り接近を試みる。


さぁ、第二ラウンドと行こうか!!


「オオオッ!!」


ヤングアースベアーが低く鳴く。


その瞬間、辺りの地面から杭が放たれる。


その瞬間【並列思考】を発動させギリギリのところで回避する。


【並列思考】はその名前の通り、幾つもの思考を同時に行う強力なスキルだ。だが、その代わり普通ではあり得ないことを脳で行われているから常に頭痛に悩まされる事になるし、長時間使いすぎれば脳の神経が切れる。


だが、こっちも出し惜しみはしない。意地でも勝ってやる。


空気を口元で【収束】で束ねさせ一気に放つ。ヤングアースベアーはそれを土の壁で軌道を逸らしながら壊れた土の塊を飛ばす。


飛来する土の塊を【硬拳】で砕くがその間にヤングアースベアーは土の槍を放つ。


これは避けれない。だが、問題ない。


飛来していた土の塊を手で掴み穂先にぶつけ威力を減衰させ穂先が手に当たる瞬間手を【硬化】させ威力を更に落とす。


「ガアッ!?」


触れた瞬間、勢いで手が真後ろに大きく弾かれて体勢を崩され二、三歩後ろに下がる。


その大きな隙に十本の土の杭を飛ばされる。


咄嗟に爪から糸を出して地面と接続させ鉄の杭を飛ばしてしまう。


「ガアアッ!!」


土の杭を破壊し、それを見たヤングアースベアーが鳴いた瞬間、杭の動きが止まる。


杭は穂先の向きを反対にさせ一気に向かってくる。背後に飛んで回避しようとする。


「ガッ!!」


だが、完全には回避できなかった。


杭の幾つかが腹に刺さり抜け落ちて傷口から血を噴出させる。


ちっ……【魔法強奪】は名前の通り相手の魔法の制御を奪うスキルか……。魔力の制御を奪われるよりはまだマシだが、それでも攻撃手段の一つを失っている事には変わらないか。


内心悪態をつきながら飛来する土の刃を【硬斬】で叩き落とす。


だが、それでも完全には捌ききれずに何本も【硬化】させた身体に傷をつけていく。


真っ正面からあんなのと戦うのは難しい。こと殲滅能力にかけては相手の方が強い上、人間のように視覚に幻を見せたところで嗅覚や聴覚で対応される可能性が高い以上幻は一度しか使えないし二回目は確実に見破られるだろう。


ならば、完全な初見で一撃で潰す……攻撃を空振らせるのが良いか。だが、そうなると相手の方に攻めてきて貰うことが必須条件になってしまう。


だが、相手も相手だ、肉弾戦になれば確実に負ける事を理解してしまっている。だから動かずに魔法で波状攻撃を仕掛け動きを封じていやがる。


流石にこの間合いはまだ【殺戮】で伸びたリーチでもダメージを与える事が出来ないだろう。時間を稼ぐか……?いや、それは難しいか。


胸につけられた傷と肩の傷の修復具合を見定める。


大きな傷では【自然治癒】も大きな効果を出すことは出来ないか。あくまで自分の治癒力だしな、そこは仕方ない。


だが、幾らこの肉体が強靭でも血が多く出過ぎれば出血多量で死ぬ。それを行わないようにしないためには、傷を集中して癒すしかない。


魔法は使えば制御を奪われ、間合いが広すぎて攻撃がまだ通らない。時間はない。相手と耐久すれば負ける。ここまで勝ち目がないのは始めてだ。

だが、負けるつもりは……一切ない!!こうなったら命を賭ける。賭けてやる!!


「オオオオッ!!」


攻撃の僅かな隙を突き一気に接近する。


ヤングアースベアーはすぐさま土の壁を作る。だが、【忍耐】で高められた攻撃力を重ねられた拳で破壊しヤングアースベアーの胸を捉える。


反撃と言わんばかりのヤングアースベアーの拳を胸に受ける。だが、引かない。


この拳が届く範囲が、俺の間合いだ!!


右手には【硬拳】、左手には【硬斬】を纏わせ魔力を【並列思考】で完全に制御し打撃と斬撃を連続して攻撃していく。


ヤングアースベアーは俺の攻撃になす術なく肉体に受けていき血を撒き散らしていく。だが、その瞬間から傷が癒えていく。


継続して【治癒魔法】を使っていやがるのか……!……うん?いや、待て。何でこのヤングアースベアーはこんなにもバカスカと魔法を乱発出来るんだ?


拳と斬撃が加えられていく中、おぞましい考えが頭の中に過る。


村に橋をかけたりしたり土の柱で門を壊した時には三十パーセント消費した。魔力の消費率はどれだけの魔力を使用したかにもよるが【大地属性魔法】や【治癒魔法】、【魔法強奪】といった魔力を消費するスキルをあそこまで乱発してどうして魔力を保っていられる。


いや、それは俺もだ。俺も何故ここまで【硬拳】や【硬斬】を使用できる。何故反撃に【硬化】を使って防ぐ事が出来る。ヤングメタルベアーの時だったら、確実に魔力が尽きていた筈だ。


……まさか!おい、俺とヤングアースベアーのステータス、魔力消費率だけを出せ!!


==========

=====

名称:なし 種族:幻想死熊

魔力消費率:五四パーセント

=====

==========


==========

=====

名称:なし 種族:ヤングアースベアー

魔力消費率:一パーセント

=====

==========


……なんだこりゃ。


ステータスの画面に映る恐るべき現実に戦慄する。


俺のは問題ない。進化したことで魔力が上がったと考えればまぁ妥当と言える。


だが、ヤングアースベアーの魔力消費率はなんだ。あれだけの魔法を放ちながら消費率が一パーセントなんてあり得るのか?


何かしらのスキルか。【精霊種】か、【精霊信仰】か。どちらかのスキルがヤングアースベアーに無尽蔵とも言える膨大な魔力を供給しているのだろう。


「ガアッ!!」


俺が驚いて僅かに生まれた隙を縫いヤングアースベアーの【硬斬】が俺の頬を霞める。


そちらに僅かに視線が向いた瞬間ヤングアースベアーの足が腹に入り身体をくの字に曲げる。


「ガッ!!」


ヤングアースベアーが右手を斜め上に振り上げる。


その瞬間、地面から土の柱が放たれ再び腹に直撃し空気が全て外に漏れる。


そして何度も地面をバウンドし身体にダメージが刻まれていく。


止まってすぐに起き上がり、追撃と言わんばかりの地面から生える杭を【殺戮】で伸びたリーチで全てを一撃の元粉砕する。


兎に角、ほぼ無尽蔵とも言える魔力がある限りあいつは魔法を使える。だが、俺には魔力の量に限りがあるため何時かは魔力切れが起きてしまう。


それに、ほぼ無尽蔵の魔力があるのなら心臓を潰されても【治癒魔法】で傷を癒しかねない。狙うなら頭だが……熊の頭は銃弾ですら貫通できないと前世の知識にある上【硬化】もある。力業で破壊するのは少し難しいかもしれない。


……殺れる手段は、ある。だがこれをやるには再び間合いに入らないといけないし、デメリットが大きい。負ける確率が高い賭けだ。


だが、傷は塞がったが血をかなり失って意識が朦朧としている、時間はもうそう長くはない。


タイムリミットが近付いている。もう時間はない。



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