魔物狩りは命懸けなんだよな。まぁ、食糧確保は大事だよね
拝啓、顔は知らない前世の母さん。
俺は今、熊としての生活を始めて数時間が経ちました。
「シャア!!」
絶賛、魔物に襲われてます。
いやー、森の中を行く宛もなく彷徨ってたら何か紫色の蛇と出会っちゃったよ、はっはっはっ……て、そんな事してる場合じゃない!絶対に逃げないと死んでしまう!!
「シャア!!」
ひぃ!追ってきた!!完全に俺の事を獲物と定めやがった。しかも、相手の方が速い。五メートル程度離れていたけどこのままだと確実に捕まってしまう!
……五メートル?なら、ギリギリだけどステータス画面を見ることができるか?
==========
=====
名称:なし 種族:ベビースネーク
Lv.四
攻撃力:八 防御力:二
素早さ:六 魔力:四
アクティブスキル:【毒飛ばし】
パッシブスキル:【毒牙】【気配遮断】
=====
==========
よし、見れた!この感じだと、攻撃力と素早さは相手の方が完璧に上だ。だが、防御力は俺の方が上だ。
……だが、相手のステータスを知ったところでこれが好転することはない。相手の力と速さが上である以上逃げきるのは難しい。
その上、前世の蛇はピット器官を利用した超音波での索敵が出来る。ステータスと蛇本来の索敵能力が合わさっている以上逃げきるのは不可能に近い。
「シュア!!」
うわっ!?あいつ、何か吐いてきた。運良く回避できたがあれを見た感じ……溶解液!?あんなのを食らったらダメージが手痛すぎる!
だが、これでハッキリした。あいつからは逃げることも距離を取ることも出来ない。もう一メートルあるかないか程度の距離だ。ここから全力で走っても逃げきれない。素早さのステータスに二倍もの開きがある以上それは絶対だ。
なら、戦うしかない。元より今の俺は熊。肉食獣である熊にとって一番重要になることは食事。どのみち他の魔物を狩る事は決定事項だったんだ、やってやる!
「シャアーー!!」
吐いた毒液を右に大きく転がって回避する。
だが、失速した俺をベビースネークは見逃さない。
一気に近づいて右腕に絡み付いて噛みついてきやがる。
「シャア?」
だが、甘い。お前よりも俺は防御力が高い。それに、アクティブスキルの【硬化】を使わせて貰った。
俺の防御力はお前の攻撃力より低いが二倍程の差がある訳ではない。そこは【硬化】で右腕を硬くすれば牙を防げる。……まあ、少し刺さって毒が入り込んできて少し痛いけど。
そして、最初から避けた時に分かったがお前の【毒飛ばし】は直線にしか狙えない。横にずれれば簡単に避けれる。
それなのに何故転がって避ける何て隙の大きすぎる避けかたをしたか分かるか?
「ガアアア!!」
「キシャア!?」
ベビースネークが腕に絡み付いた状態で再び横に転がる。
俺と地面の板挟みになり俺の全体重を乗せられたベビースネークは悲鳴を洩らす。だが、俺は重さを緩めない。
これだけ近ければ【毒飛ばし】をすることも出来ない。それがお前の欠点だ。
ここで緩めれば俺が負ける。熊は同じ赤ん坊であるベビースネークよりは体重は重く体積はデカい。なら、その重さを利用して圧殺する……!
【ベビースネークを倒しました】
ベビースネークの巻き付く力が完全に無くなった瞬間、画面と共に音声が頭の中に響く。
よし、これで倒せた。ベビースネークは……わーお、全身の骨が砕かれてペラッペラだ。だが、一応の食糧ゲットだな。
【パッシブスキル:【押し潰し】を獲得しました】
【パッシブスキル:【ランナー】を獲得しました】
【Lvが一から三にあがりました】
【能力値が上昇しました】
いきなり情報がいっぱい来たが……とりあえず、今はお腹減ったしベビースネークを食べるか。炎で炙りたいところだが、熊の手じゃそこら辺は無理だし、生で食べるか……。
にしても、熊生活最初の食事が蛇……普通の肉を焼いて食べたかったな。