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『群狼』ブラックウルフ

小川に身体を浸けて身体を手で擦る。


たったそれだけで身体から黒ずんだ毛や皮膚が水面に落ちる。落ちたところですぐに新しい毛が生え揃う。


あれから少ししたところで気がついたら日が上っていた。どうやら、気絶したらしい。他の獣に襲われなかっただけ良かった。


今は身体に付着した泥や昨日の炭化した皮膚や毛を落とすために身体を洗っている。


まぁ、焦げた臭いをなるべく欺くため、というとのが本来の目的だが。森が近いということは狩猟をしている者もいるだろうし猟犬を飼っている者もいる筈だ。


今の俺の身体の臭いは俺でも分かるほど独特な、焦げ付いた臭いがする。そんな状況なら猟犬からしたらさぞかし楽に追えるだろう。そんな面倒な事を一々しているのも手間でしかないのだ。


小川から出て身体を震わせて水滴を飛ばして川沿いを歩き始める。


小川は小魚や少し大きな魚が泳いでいるのがよく見える。なんとも心が静まる光景だ。


そういえば、ステータスはどうなっているのだろうか。


=========

=====


名称:なし 種族:ヤングメタルベアー


Lv.八


攻撃力:七九


防御力:八五


素早さ:五一


魔力:六四


アクティブスキル:【硬化】【硬斬】【硬拳】【収束】【放出】【土属性魔法】【探知・嗅覚】【忍耐】


パッシブスキル:【転生者】【逸脱種】【押し潰し】【ランナー】【剛力】【拳打】【毒耐性】【痛覚耐性】【魔力操作】【自然治癒】【熱耐性】【火属性耐性】


=====

==========


パッシブスキルもそれなりに増えたものだ。だが、これではまだタリスには届かない。対等に戦いたいのならもう一、二段階進化しなければならない。


いや、進化だけでは足りない。魔法の発動速度、戦術の見直し、なにより経験があまりにも少な過ぎる。


タリスは潤沢な経験があった。だからあの針の攻撃を避けることが出来た。経験というのは情報に匹敵する程に勝つことに重要な事なのだ。


「ガゥ」


とりあえず、今はこの森に潜伏しよう。タリス程の実力者はこの世界にいくらでもいるだろうし、それを乗り越えない限りはこの森から出れない。

井の中の蛙かもしれないが外の世界はいくらでも夢想できるからな。


拠点は……あの洞穴で良いか。奥行きもそこそこあるし拠点として使うのは最適だろう。そうと決まればさっさと向かおう。


「グルルルルルルル……」


だが、その前に。


鼻をスンスンと鳴らし唸り声をあげる。


俺の周りを囲んでいる連中を潰さないといけない。……予想していた以上にこの索敵は使えるな。まぁ、熊の嗅覚はかなり高いから出来る芸当だろうけど。


「「「「「グルルルルルル……」」」」」


森や川岸の草むらが動き、ざっと見て百頭もの獣が現れる。


現れたのは、黒い狼だった。


大きさは大型犬程度だがそれが百頭も集まればその光景は圧巻だ。


この魔物は何だ。


【ブラックウルフ:E+

狼系の魔物。

個体値はとても低く同ランクの魔物の中でも下から数えたら速いほど。

連携を得意とし全個体がパッシブスキル【咆哮:連携】を保有している。

群れの規模で危険度が変動する。

かつて十万頭の群れが現れた際には幾つもの国がその群れによって滅びた】


マジかよ……。百頭でもそれなりに手がかかるだろうに。数は単純だがバカにできない。


それに、個体値は低くても連携されるのは厄介だ。群れが一つの個体のように動かれたら危険な事この上ない。


俺やタリスのような個体の強さではなく集団の強さを持つもの。


まさしく『群狼』だ。


「「「オオオーーーーン!!」」」

「「「「「「オオオーーーーン!!」」」」」」


遠吠えが森を響き立ち上がった俺に向かって一気に襲いかかってくる。


速い。だが、タリスの魔法よりは遅い!


ブラックウルフの一頭の眼を爪で裂き腕の勢いを利用して反転。


爪の先から魔力の糸で真後ろのブラックウルフたちの足を絡めとり回転させハンマー投げの要領で振り回し切り取り投げる。


投げられたブラックウルフは何頭も巻き込むがあっさりと体勢を建て直し起き上がる。


ちっ……魔力の糸を上手く使って相手を投げ飛ばしてみたがそこまで効果がないか。


なら、これならどうだ!


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオ」


【咆哮】と共に一気にブラックウルフの一頭に接近し勢いに任せにぶつかる。


僅かに怯んだブラックウルフを撥ね飛ばし木に叩きつけ押し潰す。


四足歩行にも慣れた。突進したりすることも出来るようになった。……進化したからだろうか。まぁ、前世の知識にミノタウロスのような怪物はいたし、そういったこともあるだろう。


「ガアアッ!」

「オオオン!」


鉄拳を握りしめ振り下ろす。


俺の拳を避けながらブラックウルフの一匹が俺の腕に噛みつく。


いくら【痛覚耐性】があれど痛いものがあれば痛い。驚きながれ腕を振り払いブラックウルフを突き放す。


「オオオオオオオオオオン!!」

「「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」」」」」」


遠吠えの輪唱と共にブラックウルフたちの雰囲気が変わる。


何かが……くる!!


「アオン!!」

「ガアッ!?」

「「「「オオオオン!」」」」


一頭が俺の背中に噛みつき数頭が俺の腹に噛みつく。


振り払い追撃しようとすれば他の他のブラックウルフに阻まれ追撃が出来ない。それどころかその隙に再び背中に噛みつかれ真後ろに倒される。


体勢を崩しながらも後方に回転しブラックウルフを退かして起き上がり『群狼』を睨み付ける。


強い。迂闊に踏み込めば大きな痛手を負うことになる。どんなに堅牢な城でも大多数に囲まれて集中攻撃を食らえばいつかは落とされる。それと同じだ。


長期戦になる以上【硬化】や【土属性魔法】は頻繁に使えない。防御能力が著しく下がっているようなものであり、俺にとってかなり不利だ。


だが、俺は逃げるつもりは最初からない。そもそも逃げれない。俺の足がどれだけ通じるか分からないし相手は連携を得意としている。逃げれば敗けが確定する。


ならば、背水の陣といこうか。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


顔を両手で叩き【咆哮】し痛みを堪えながら狂暴な笑みを浮かべる。


爪の先から出ていた糸が地面に伝わり魔法が発動する。


森の一角をドーム状の土の壁で覆い内部と外部を完全に分断させる。


これにより、俺もお前らも逃げることは出来なくなった。さぁ、ここからは本番だ。


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