銀の球体
「シャアァ!!」
「グルアッ!!」
蛇が鳴くと同時に俺と蛇が一気に動き出す。
俺が振るって放った風の刃を身体をくねらせて躱し尾を大きく薙ぐ。
俺は影に沈んで尾を躱し蛇の下から浮上し腹を殴り付ける。
「シャアっ!?」
流石に空中じゃ体勢を留めれないだろ!
宙に飛ばされ驚愕する蛇に向けて砂を操り砂の刃を一斉に放つ。
蛇が砂の刃を尾で弾くと同時に地面を蹴り虚空を蹴りながら肉薄、腕を水平に振るう。同時に蛇の振るわれた箇所が抉られる。
空気ごと抉らせてもらった。落ちろ!
蛇の真上に黒い障壁を出現させ痛みに苦しむ蛇を叩きつける。
蛇は地面に叩きつけられると同時に砂の中に潜り込む。
なるほど、砂に潜れば逃げれると思っているのか。……無駄なのに。
着地と同時に手を地面に突き刺す。それと同時に地面が光始め、砂が金に変わる。
同じ大きさの砂よりも金の方が遥かに重い。ここで潰れろ。
「シャアアッ!」
まあ、この程度で潰れるとは思ってもいないが。
地面からの振動を察知すると同時に空中に逃げると同時に蛇の尾が立っていた場所に突き出る。
蛇の尾が地面に潜ると今度は蛇が地面から現れる。
焦点は……捉えた。
「吹き飛べ」
「シャアアァァァァァァァァァァァァァァ!!」
【斥力眼】を発動させると同時に蛇が鳴く。布のような膜が青い光を放つと同時に斥力のフィールドと青いフィールドがぶつかり合う。
刹那の拮抗と共に青いフィールドが斥力のフィールドを押し返し俺はフィールドに直撃する。
「グルアッ!!」
地面を転がるがすぐに起きる。それと同時に銀色の液体が足元から突き出る。
「グルッ!?」
これは……液体金属か!?
蛇が鳴くと同時に地面にあった金が銀色の液体に変わり、幾つもの球体に結合する。
恐らく、これが【魔曲・一滴】の特性。周囲の物質を液体金属に変換し操る能力。俺の魔法も大概だが、この世界では何でもありすぎないか?
液体金属は蛇の身体に付着し鎧の上に銀の鎧を身に纏う。月の光を鈍く反射した鎧を身に纏った姿は天女のごとき美しさを持っていた。
『零落天女』か。なるほど、的を射た異名だな。
腕を振るい氷の槍を放つが盾の形状に変わった液体金属に阻まれ、砕け散る。
流石に利かないか……!
周囲の魔力を操作すると同時に蛇は一気に突進してくる。
ちっ……!
魔力の操作を取り止め腕をクロスさせ突進を受け止める。砂の上を押されるが目線を合わせ一気に弾き飛ばす。
ちっ、今の攻撃は痛かったぞ。
腕に斑に開いた穴から血が溢れる。すぐに傷は塞がるが空に上がった銀の球体から雨のように銀の塊が振ってくる。
咄嗟に手を向け黒い障壁を出現させて銀の雨を防いた瞬間、銀の槍が飛来する。【凍結眼】で凍らせると振るわれる蛇の尾を殴り上げる。
硬い……!
【スルーズ】を発動させて衝撃に耐えると今度は蛇が噛みついてくる。【スルーズ】で強化された肉体で地面を蹴って後ろに飛び、着地と同時に影の中に潜る。
何てな!
意識が削がれた蛇の背中を右ストレートで殴り付ける。
生憎と俺は【幻術】も使える。相手を騙す事くらい造作でもない!
「シャアっ!?」
【未来視】で未来が分かっていようとも無駄だ。何せ、その未来も偽り何だからな!
手を振り下ろすと同時に天から雷の槍が降り注ぐ。蛇は地面を這って雷の槍を躱し口から毒液を放つ。
風の刃で毒液を切り裂くと周囲の球体から触手のような針が突き出てくる。
邪魔だ!!
水を生み出して振るい、銀の触手を薙ぎ払い振り下ろされる尾に向けて爪を振るう。
五本の斬撃と鎚のごとき一撃がぶつかり合い、衝撃波が撒き散らされ地面の金が舞う。
「シャアアッ!!」
「グルオッ!!」
数多の球体から放たれる矢を金で防ぎ、突風を引き起こす。周囲を金で包み込むと同時に突進してきた蛇の額を全力で殴り付ける。
衝撃波によって舞った金が吹き飛び額に弾かれると同時に真上に金を集約に巨大な球体に作り替える。
質量攻撃だ。潰れろ!!
腕を振り下ろすと同時に蛇に向けて金の球体が落下する。蛇は銀を集約し巨大な球体に作り替えて金の球体にぶつける。
同じ出力でぶつけて相殺させたのか。蛇なのによくやるな。だが……奥の手を使うか。ユースティアとの戦いで痛感した決定打の無さをカバーする絶技。
ぶっ潰れろ、砂の戦!!
「双方そこまで!!」
手を突き出し奥の手を放とうとした瞬間、空間が歪み少年が現れる。
ショタと呼ぶことも可能な少年の背中からはコウモリのような翼が生え、額にはひし形の奇妙な模様が浮かんでいる。
この気配は間違いなく【悪魔種】か。だが、この異質な気配はなんだ。純粋な戦闘能力よりも厄介なところがある気がする。
俺が魔力を収めると蛇も魔力を収める。
【人化】を発動し人の形に戻った俺に少年は深く頭を下げる。
「すみません、同僚の部下のペットがこのような真似をしてしまいまして」
「……『色欲』の従者か」
「はい。私はアルベド。正確には眷属ですね。あのお方の寵愛を受けた者は例外なく眷属に加えられその愛を満たすために生きることを許される」
どうも、あの女は眷属化のスキルを平然と行使しているようだ。
「それで、お前の目的はなんだ。場合によっては――」
俺が再び魔力を滾らせると背後にいた蛇が睨み付ける。
二対一。だが、この少年の悪魔としての力は弱い。奥の手でねじ伏せる事は可能だ。
「私の目的は貴方ではなく貴方の眷属である大砂漠の巫女。彼女の身柄をこちらに渡して貰いたいのです」
「……渡したら、どうするつもりだ?」
「勿論、徹底的な拷問と陵辱で精神を壊しそこに甘い快楽と私の上司の洗脳で忠実な下僕に」
「死ね」
少年が興奮気味に語る内容の途中で肉薄し拳を放つ。
放たれた拳は少年の胸に直撃し刹那の内に吹き飛ばされる。
尊厳の破壊は俺が最も嫌っている邪悪だ。それを行うだと?ふざけるのも大概にしろ。
「ここで潰れろ、クソガキ。……もう容赦しねぇ」
魔力が荒ぶると同時に全身に白いオーラが纏われる。自分のスキルの中にある【疑似神格】が呼応し周囲の空気が震える。
魔力の出力を最大限にしそれと【疑似神格】を共鳴、本来あり得ない出力に跳ね上げる絶技。
「《白玉幻魔》。……お前らは俺が潰してやる」




