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暁の夜明け

拳による連打とともにユースティアは地面を転がりながら吹き飛ばされる。ユースティアが地面を蹴って跳ぶと同時に肉薄する。


ユースティアがトントンと跳んでタイミングを合わせながら手に血のナイフが握られる。


「シッ!」


水平に振るわれた血のナイフが頬を掠め血を出る。僅かにくる痛みを確認すること無くユースティアの腹に向けて指を弾く。


ラッパの音と共に放たれた衝撃波によってユースティアは目や口、鼻、耳から血を流しながら吹き飛ばされる。


直ぐ様腕を振り下ろし、垂直に風の刃を放つがユースティアは翼を羽ばたかせ飛翔し刃を避ける。

高く翔んだユースティアは急降下する。確認すると同時に土の壁を作り腕をクロスさせ防御の体勢をとる。


その瞬間、土の壁が蹴破られクロスさせた腕に足の裏が触れる。衝撃で地面が陥没し両腕を力業で大きく払い、ユースティアを弾く。


……やはり、こっちからのダメージは癒えているか。


傷が完全に塞がっているユースティアの拳を掌で受け止めたり流したりしながら【マルチタスク】で思考する。


【無血月下】と【金月の華】だったか。この二つのスキルの効果の重複によってユースティアは夜の間は絶対的な不死となっている。


そうなっている以上、こいつに勝てる算段があるとは思えない。夜明けまで時間稼ぎをすることも出来るが……相手だってそれを見越した動きをするだろう。


いや、あり得ないほどの反則スキルばかりの血液系スキルなんだ、そのデメリットを打ち消すスキルを保有している可能性が高い。


「ぐっ……!」


脇腹に血を纏った蹴りが叩き込まれ、大きくのけ反る。それと同時にユースティアの回し蹴りが顎を捉える。


「がっ!?」


揺れる脳をスキルをフル稼働させ振動を相殺し身体を前に戻してユースティアに手を向ける。それと同時に【サンダルフォン】を発動、ユースティアの真上から武器や防具の山が雨のように落ちる。


ユースティアがそれを後ろに跳んで回避すると同時にユースティアの足元から土の杭を突き出して足を穿ち、ユースティアの足を固定させ、人差し指を向ける。


その瞬間、指先から凝縮した熱線が放たれる。


「がっ!?」


放たれた熱線が山となった防具や武器を融解させながら貫き、ユースティアの頭の右半分を消し飛ばす。


しかし、ユースティアの背後に時計のようにも華にも見える何かが現れると同時にユースティアの身体の傷が修復される。


……長期戦となれば分があるのはこっちだと向こうも気づいている筈だ。だが、こっちもこっちでかなり身体の方がヤバい。


身体からの悲鳴を感じながら、飛翔するユースティアに向けて針のように鋭い氷の柱を突き出すが回避される。


肉弾戦は正直に言ってキツイ。いくら傷が癒えても体力が回復する事はない。いや、正確には回復量が消費量に下回ってしまっているからというのが正しいか。


兎も角、体力の低下で判断が鈍り、それで致命的な隙を生み出す可能性の高い肉弾戦にするのは難しいところだ。やるとしたら、ここぞと言うときだけだろうよ。


ユースティアに眼を合わせる。その瞬間、ユースティアの身体が凍らされ、引き寄せられる。


【凍結眼】と【引力眼】の合わせ技だ。


間合いに入れ、殴りやすい場所に入ると同時に裏拳を右脇腹に向けて振り払う。


「がっ!?」


大きく吹き飛ばされるユースティア。そこに向けて雷の矢が降り注ぐ。


ユースティアは重力圏を幾つも作り、そこに雷を引き寄せて攻撃を躱し、重力の円刃を垂直に放つ。


ガリガリと鋸と同じように地面を削っていく刃を右に移動して躱しつつ視線を合わせる。


その瞬間、ユースティアの体が一気に吹き飛ばされる。


「ぐっ……!」


咄嗟に飛翔するユースティアに視線を向け大気中の魔力をユースティアを中心に渦巻かせる。


「【雷光】」


魔力に稲妻を伝えると魔力を伝い空を飛んでいたユースティアの身体を焼き、目を塞がなければいけないほどの光が空を覆う。


「ぐっ……!」

「これで詰みだ」


ボロボロの喪服を着て身体から煙を出しながら未だにホバリングしているユースティアに空気を蹴って跳躍し拳を握る。


ユースティアの上に上がると拳を振り下ろす。その瞬間、巨大な紋様が拳を起点に浮かび上がる。


とぐろを巻く蛇にもできる紋様がユースティアに向けて収束していく。


「放て!!」

「ッ!!避けろ!!」

「ええ!!」


地から放たれた力強い声を聞いた瞬間俺とユースティアは互いの足の裏を合わせて蹴り、反動で互いの位置をずらす。


その瞬間、幾つもの光の玉がぶつかり合い爆発する。


肌を焼く痛みに耐えながら俺とユースティアは地面に降り立つと甲冑姿の人間どもが俺らを囲む。


「聖堂派……!」

「聖堂派?アガート教の異端派閥は味方ではないのか?」

「……【吸血種】はアガート教にとっては悪い者扱いされている。【吸血種】狩り専門のエクソシストと呼ばれる職業があるくらいよ」

「そういうことかよ……」


放たれる光の玉を裏拳で真上に弾きながらユースティアと会話を続ける。


何故このタイミングで仕掛けてきたか分からないが……不快だ。チェックメイト寸前のところで盤外から剣を振り下ろし、ゲームを無かったことにされたような不快さだ。


だが、こいつらの目的が【吸血種】狩りが目的ならそんなのに従う道理なんてないよな?


『おい、次に繰り出す俺の攻撃を避けずに受けろ』

『……了解。こればかりは流石に手を借りるとするわ』


攻撃を避けながら【テレパシー】でユースティアと口裏を合わせると同時に手刀をユースティアの心臓に向けて放つ。


肉を切る感覚と共にユースティアの胸を腕が穿つ。腕を引き抜くとユースティアの身体から力が抜け、地面に倒れる。


「……味方ではないのか?」

「生憎と、殺そうとした相手が隙を見せたんだぞ?狙わない道理はないよな」


フルフェイスの兜を脱いだゴツい男の問いに答えると男は周りに指示を出し退散する。


さて……と。そろそろか。


胸に開いた風穴が閉じ、ユースティアは何事も無かったように起き上がる。


「ふぅ……不死性が生きててよかった」

「また殺り合うか?」

「良いわ。貴方との戦いは私にとって良い刺激になったし、お父様の命令に一々聞くのも億劫だし見逃してあげる」


やれやれと頭を横に振るユースティアを見てククッと笑ってしまう。


仕事が無かったら案外気が良くて後腐れのない性格をしているな。


「お父様は貴方の事を高く買ってるわ。……気に入られて良かったね」

「……勘弁してくれ。こっちはこっちで仕事がまだ山積みなんだよ」

「そうだろうね。それじゃあ、あたしは去らして貰うわ」

「ああ」


ユースティアと拳を合わせるとユースティアは満面の笑顔を向ける。そして、ユースティアは何処かに向かって歩いていく。


おっ……もう夜明けか。


空が明るくなり、湖の水面で日光が反射する。夜明けの明るさに俺は目を細める。


さて……さっさと帰るか。今日はかなり仕事が多いだろうし、休憩はなるべくとっておかないとな。


【Lv.六からLv.七になりました】

【神聖スキル:拒絶を獲得しました】


神聖スキルのクーリングオフって出来ないかな。

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