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血熊激戦

紅い光を纏う拳も白い光を纏う拳がぶつかり合い、衝撃波が辺りの瓦礫を吹き飛ばす。


その刹那に複数の連打によってユースティアの身体は大きく吹き飛ばされる。


「ぐっ……!」


俺が呼吸するより速く間合いに入り、拳を振り下ろす。ユースティアが重力圏を発生させる素振りを見せた瞬間、腕の動きを力業でキャンセルし飛び退く。


辺りに散らばる瓦礫が重力によって潰されると、虚空から黒い鎖を放つ。


ユースティアは重力圏を解除し血色の鎖を振るい黒い鎖を打ち落とす。


「ぐっ!?」


その瞬間、触れもしていないユースティアの身体が大きく吹き飛ばす。空中でクルリと回転し、地面を擦りながら立ち上がると同時に身体を炎と氷に包まれる。


「【業火眼】に【凍結眼】。それに、身体にかかる異常な負荷……どれだけの魔眼系スキルを使用しているの……!?」

「知らん」


【神眼】。魔眼等の眼に由来するスキルが統合したスキル。不足分のスキルを強引に統合された訳だがら、どんなスキルが発動しているのかさえわからない。


事実、ユースティアは先程から近づくよりも速く視点を合わせるだけで吹き飛ばされる。


「ぐっ……けど!」


押し潰されながら、ユースティアは地面を砕き、四足歩行で力場で抜け出すと同時に俺に接近する。


飛びかかると同時に背中から倒れ、手を地面に当てて振り下ろされる爪を蹴り上げる。


足が地面につくと同時にユースティアの掌と俺の掌がぶつかり合い、せめぎ会う。


「焼き付くせ!!」

「凍てつきなさい!!」


刹那、掴み合う掌から灼熱の業火と絶対零度の氷が吹き出す。互いの攻撃よって吹き飛ばされるがすぐに起き上がり、糸を大薙ぎに振るう。


ユースティアは身を屈めて糸を躱す。糸が辺りの瓦礫を吹き飛ばしながら切り裂く。


身を屈めたまま、ユースティアは地面を蹴り一呼吸で近づくと俺に接近し拳を打ち出す。


「ぐっ……!」


咄嗟に左腕で庇うがミシミシと言う音と共に大きく吹き飛ばされ、着地すると同時にドロップキックが腹に直撃する。


蹴りつけられ脚を掴み、数回の回転の後、瓦礫の山目掛けて投げる。幾つもの瓦礫の山にぶつかり、瓦礫の山が崩れる中、ユースティアは平然と起き上がる。


俺も傷の回復が済んでるし、どっちもどっちか。


ユースティアが手を真上に上げると同時に俺も手を真上に上げる。


「【血刃車輪】!!」

「【風刃】!!」


回転する血の刃と旋回する風の刃が掌に生まれ、同時に手を振り下ろし投げつけ、互いに地面を蹴り接近する。


ぶつかると同時にガリガリという音をたて、互いに弾かれると同時に回し蹴りがぶつかり合い、衝撃で辺りの地面が陥没する。


やはり、強い。【スルーズ】を完全解放しているのに拮抗している。強化のような血液系スキルか。


「【血脈淘汰】。中々に良いスキルでしょ」

「……【スルーズ】と同レベルか」


おい、【血脈淘汰】の内容を教えろ。


【血脈淘汰:血系液スキル

全ステータスを上昇。

【吸血衝動】によって効果増大。

吸血種以外は全ステータス現象】


なるほど、シンプルに反則クラスのスキルだ。俺の【神眼】とどっこいどっこいの反則具合だ。


競り合いながらユースティアは力を抜く。僅かに俺の体勢が崩れると同時に回り込み、俺の首筋に噛みつく。


「ぐっ!?」


首根っこを掴み、地面に叩きつけるが蹴り飛ばされ、距離を離される。


ちっ……血を吸いやがったな。


ユースティアは恍惚な表情を浮かべ、口に付着した血を艶かしく舐める。


「くふふ……ここまで美味な血は始めてよ。処女物よりも遥かに濃密。それでいて無限にも思える魔力に溢れてる」

「そりゃどうも」

「けど――足りないわ。もっと血を吸わせなさい!!」


ッ!!速い!!


先程以上の速度で肉薄するユースティアに向けて手を水平に払う。ユースティアはそれを急停止して躱すと拳を打ち上げる。


アッパーを左手で掴んで止め、戻した右手の爪で胸を切り裂く。腕が千切れながら後ろに吹き飛ばされるがユースティアは何事もなかったように立ち上がる。


掴んでいた腕がコウモリのような血の塊となりユースティアの元に戻ると腕が修復する。


……なるほど、あれが不死性の正体か。


「【無血月下】。月の下、夜の下にいる限り私たち【吸血種】は最強」

「……しってるか。熊というのは夜行性なんだ」


ユースティアの背中側から話しかけながら回し蹴りを脇腹に叩き込む。


地面をゴロゴロと転がり、勢いをそのままに立ち上がるユースティアが困惑した表情を浮かべると同時に蹴り上げられる。


「なっ……!?」

「【幻視】。シンプルながら良いだろ?」


幻覚を操る【悪魔種】である俺にとってこの程度は簡単だぞ?


空気の砲弾でユースティアを吹き飛ばす。ユースティアは勢いを利用して翼を羽ばたかせ飛翔する。


それを見ると同時に空気の塊を高速で跳ぶ。何度も空を蹴り軌道修正し、突進してくるユースティアの爪をオーバーヘッドキックで弾く。


自由に飛翔するユースティアと俺のドッグファイト。互いに一撃ごとに距離をとり、移動しながら接近すると同時に再び一撃を与える。衝撃で雲は消し飛び、煙は消え、空気が視認できるほどに揺れる。


やはり、空中戦は分が悪い。だが、それがどうした――!!


ミサイルのように空気の弾丸が放つ。当たれば建物一つを半壊させる攻撃をユースティアは自由に飛び回り回避すると一気に蹴りを入れる。


重く響く衝撃を耐え、脚を左手で掴み握りしめた拳を顔面に叩き込む。


「がっ……!」

「消し飛べ!!LAaaaaaaaaaaaaa!!」


僅かに怯み、翼を羽ばたかせた瞬間、空気を揺らす程のラッパの音と共に強烈な衝撃波がユースティアを叩きつけられる。


地面に叩きつけられた衝撃で辺りの瓦礫が吹き飛び、火が消える。


これが、本来の【福音】の使い方。『あらゆる音を衝撃波に変える』ことができる以上、身体から出せる音の中で最も強い音とはなにか。


それは絶叫。喉を振り絞り放たれる音は【福音】によって破壊の衝撃に変わる。


「……まあ、これでも死なないよな」

「ぐっ……ええ、そうね」


ぐちゃぐちゃに潰れた血塗れの身体が紅い煙と共に修復される。完全に元の形に戻ったユースティアはクモの巣状に陥没した地面から起き上がる。


やれやれ、正しく吸血鬼というわけか。もしかすると、俺の【ロビンフット】以上の再生能力かもしれない。


「【金月の華】。……あらゆる【吸血種】に刻まれるスキル。効果は『夜である時あらゆる死の因果から解放される』というもの」


死ぬことのない呪い……だな。


俺のような生きる事に命を賭ける怪物にとっては喉から手が出る程だが、必要ない。


そんなものがあると、生きる価値を失う。


一瞬で肉薄するユースティアに向けて視線を向ける。放たれた拳は【神眼】によって防がれ、逆に吹き飛ばされる。


名付けるなら【斥力眼】というものか。……少し、やってみるか。


ユースティアが放つ氷の槍に視点を向けると同時に大きく弾かれる。それと同時にユースティアが引き寄せられる。


「【神眼・引力眼】」

「なっ――!?」


あまりの出来事に驚きながら腕をクロスにして守りの体勢になると同時に掌から砲撃が放たれる。

一気にユースティアの身体は吹き飛ばされるがすぐに引き寄せられる。


逃がすつもりはない。


「ラアアッ!!」


蹴り上げられ視線を逸らされると同時にユースティアは飛び退く。


上を向きながら、爪を立たせ、眼に力を込める。

本能が教えてくれる、【神眼】の使い方の一つ。


「【斑の目・月火】」


目が赤く煌めくと同時に辺りの瓦礫が燃え上がる。発火能力の【業火眼】を【斑の目】で全方位攻撃に変える。こういった合わせ技ができるのも【神眼】の特性だ。


ごうごうと瓦礫を燃やし、地面を焼く炎の中、ユースティアが炎の隙間を縫うように飛翔しながら近づき、拳を振り下ろす。


二の腕で防ぎ、威力を【サンダルフォン】で溜め込む。打ち出した拳を左手で掴み、地面に叩きつける。


「がっ!?」


ユースティアの呼気が乱れると同時に胸を殴ると同時に溜めた衝撃をユースティアに向けて解放する。


衝撃で地面がクモの巣状にひび割れるがユースティアは俺の腕を掴み、引き寄せると腹に蹴りを打ち込む。


「ぐっ!!」


衝撃で手を離され、受け身をとり、勢いを利用して起き上がると同時に振り下ろされる重力の剣を後ろに跳躍して躱す。


着地すると同時に何百もの雷の矢をユースティア目掛けて照射する。


百を越える雷矢がユースティアに降り注ぐ。しかし、ユースティアが手を向けると半透明の障壁がが現れ、矢を防ぐ。


ちっ……!


拳を握り、地面に叩きつける。衝撃で辺りの瓦礫が舞う。浮かぶ瓦礫を蹴りながらユースティアが接近する。


掌を合わせる。パン!という音と共に瓦礫が杭と変わり、一気にユースティアに殺到する。


「潰れなさい!!」


ユースティアを中心とした重力圏の発生と共に杭が地面に叩きつけられる。それと同時にユースティアも地面に降り、地面を蹴って接近する。


見えていれば……問題ない!!


「【ロビンフット・必中の矢】!!」

「ッ!!」


ユースティアに指を指すと同時に火の矢が放たれる。火の矢はユースティアが纏う重力圏を突破しユースティアの身体に突き刺さる。


「ぐっ……!?【必中の矢】……!?老練の狩人のみが持つとされる絶技を易々と……!」

「生憎と、それは知らない」


あらゆる戦場に対応することができるスキルたち。その手綱を握り、使いこなすのが保有する者の義務だ。


自分の身体を焼く炎を薙ぎ払い、ユースティアは拳を握り、肉薄する。


打ち出された拳を肘鉄で打ち落とし、肩からのタックルでユースティアを弾く。回転しながら跳んだユースティアは火の矢を放つ。矢の軌道を予測し躱しながら同時に風の砲弾を放つ。


ユースティアが手を向けると同時に展開される障壁によって砲弾は防がれ、逆に氷の刃が死角から放たれる。


「ぐっ……!」


深々と刺さる氷の刃を引き抜き、傷口から溢れる血を癒す。少し焦りが見える顔で接近すると同時に拳を俺に向け連打する。


黒い障壁を目の前に出現させ拳を受け止めると目を煌めかせる。その瞬間、ユースティアは吹き飛ばされる。


あの表情は……どうやら、向こうは焦っているようだな。だが、無理もないか。


夜、死の運命から逃れる事ができるユースティアは、夜明けまでもう一時間と無いことが分かっている筈だ。なら、今まで以上に苛烈となるだろう。


なら、こっちも全身全霊を賭ける。それだけの話だ。


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