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九尾の逆鱗

「焔よ!!」


私が地面に手をつくと同時に亀裂が入り、裂けた地面から火が吹き出す。


兄は身を翻して避けると同時に水の針を弾に変え一気に放つ。


刀を水平に振るい水の弾を切り飛ばすが、近づいて兄の蹴りが私の胸を叩く。


「ぐっ……!」


咄嗟に刀を持たない左手を振るい炎の壁を作って距離をとり、自分にかけていた制限を外す。


魔力が解き放たれ、隠していた魔力で作られた八つの尾が生える。身体から溢れんばかりの魔力が漲り、視界が広いように錯覚してしまいそうになる。


旦那様たちに迷惑をかけたくなく、魔力を肉体に押し込める形で力を封じていましたが、もうそんな事を言っている場合ではない。


技量も、実力も、能力も、何一つとして私は兄に勝ててない。なら、反則でも何でも良いから使うしかない。


魔力の動きを感じた瞬間、兄が炎の壁を突き抜ける。兄は手に持った刀を矢のように真っ直ぐと突き出す。


右手に持った刀で兄の刀を真横を叩いて打ち払う。その瞬間、水の針が頬を掠める。


……問題ない。


身動ぎ一つすることなく兄の手首を掴み引き寄せると私の額で兄の頭を叩く。


「ぐっ……!?」


頭に響く衝撃で思わず兄から手を離してしまう。


兄は痛みで少し後ずさるが、すぐに立ち直り大振りに手を振るう。


「がっ!?」


その瞬間、水の刃が私を切り裂く。衝撃で大きく吹き飛ばされ、傷口から一気に血が吹き出す。


痛い……けど、立ち止まる事も、膝を付くことも許さない!!


力業で身体が倒れるのを防ぎ、傷口に手を当てる。


ちょっとした【治癒魔法】くらいなら、私にだってできる……!


仄かな赤い光と共に少しずつ傷口が癒えていき、痛みも引いていくのを感じていると、水の針が飛んで来る。


左手に炎の棒を生み出し、水の針を防ぐ。炎の棒を一回転させ兄に向けて投げつける。


兄は投げられた炎の棒を難なく躱す。その瞬間、炎の棒は中央から広がり炎の種を飛ばす。


「なっ!?」


兄は驚きながら顔を隠すように腕を構える。


炎の種が腕に被弾した瞬間、小規模の爆発が起こる。ほぼ同時に爆破したため爆破音が一つに聞こえる。


技量、実力、能力は兄に劣っていても……魔法の火力だけは私の方が強い!!


「……嘗めるよ、愚妹!!」

「私だって、負けられない!!」


腕を焼き焦げながら接近する兄に向けて地面を蹴り接近する。間合いに入ると同時に地面を蹴って跳躍し刀を水平に振るう。


刀で防がれ、金属がぶつかり合う音が耳に響く。続いて水の針が飛んで来る。腕から炎を吹き出させ水の針を防ぐと、炎を刀に纏わせ振り下ろす。


兄は身体を逸らして回避する。その瞬間、爆炎と共に火柱が立つ。


「はあっ!!」


火柱を切り裂くよう水平に刀を振るい、兄の胸を切り裂く。焼け焦げて炭化した傷口を押さえながら兄は飛び退く。


地面を蹴り、跳躍気味に兄に接近する。


これで……終わらせる!!


「嘗めるなぁ!!」


怒気に包まれた兄が吼えた瞬間、私の身体は斬撃と共に大きく吹き飛ばされる。


「がっ!?」


見えな……かった!?


鮮血と共に大きく空中を舞いながら吐血し、地面に叩きつけられる。


「はあっ……はあっ……愚妹が!!」

「ごふっ!?」


憎悪の籠った目で兄が何度も踏みつける。それを、私は身体を縮こませて耐える。


魔法が使えない……!意識を割くことができないを……!


「っと……『大聖霊』どもに連れていくんだった、殺しては、いけんな」


憎々しげに足を下ろし、兄は私の髪を掴む。


その瞬間、


「ぬっ……!?」

「ひゃあっ!?」


あまりにも強烈な揺れが私たちを揺らす。辺りの炎が揺らめき、瓦礫の山が崩れ落ちる。


これは……!?でも、今なら!


兄の手を目掛けて炎の槍を放つ。


「ッ!?」


兄は咄嗟に手を離し槍を回避する。地面を転がり距離をとると地面に足をつき、立ち上がる。


今のは……確実に旦那様だ。旦那様も今、戦っている……!なら、ここで勝たなければならない!


「ちっ……『大公』から派遣されたあの小娘がぶつかり合っているようだが……ま、相手はもう死んでるだろうよ」

「……あ?」


死んでる……?旦那様が……?


侮蔑の籠った言葉に私は茫然と、それでいて深い怒りを身に覚える。


旦那様が、死んだ?嘘か本当か、そんなの関係ない。それを想定させた。それが、なによりも……許せない!!


私の感情に呼応するように辺りの炎が揺れる。毛が紅のような色へと変わり、辺りに花弁のような火の粉が舞う。


私にとって旦那様は敬愛すべきお方。私が一生を差し上げ、仕えたいと思えるお方。それを、想定の中でだろうと、殺したんだ。


覚悟は、できてるよね?


「【雪月火】」


静かな言葉と共に火の粉が舞い、空中で統合し炎の球体が出来上がる。


感覚でスキルを使う。単純だけど、理解できない力を制御するのはとても難しい。旦那様はこれを当たり前のように行っているのだから、凄まじい実力だ。


炎の球体が弾けると同時に熱波が広がる。熱波から炎の固まりが私の意思で兄の上に降り注ぐ。


「小癪!」


しかし、兄も無能ではない。


水の盾を生み出し、炎の固まりを防いでいく。当たらなかった炎は水の盾に吸い込まれ、次々と熱を失っていく。


やはり、これでは兄に勝てない。なら、炎以外の方法をとるのみ。


「【天眼】」


右目が仄かに青く光る。指先を兄に照準合わせる。その瞬間、辺りの魔力が兄を中心に渦を巻いき、殺到する。


【天眼】は空気中の魔力を収束させる目に由来するスキル。旦那様は無自覚に使っていますが、私はこうでもしないと使えない。


そして、この状況になれば、私の奥の手が使える。


「【爆胞】」


魔力に魔法で火をつける。その瞬間、火は瞬く間に燃え広がり中心で統合、大爆発を引き起こす。


魔力を着火材に、火を爆発的なまで燃やし尽くす技、【爆胞】。集中力を使うし身体への負担も大きいしで大変だけど、威力は申し分ない。


撒き散らされる爆炎が大きく吹き飛ばされ、身体が焼け焦げ、黒ずんだ兄が憎悪の瞳を向ける。


「殺す……!殺す殺す殺す!!貴様だけは、絶対に殺してやる!!」

「それは私も同じですよ」


私の逆鱗に触れたんですから、もう殺す以外の選択肢はないと知りなさい。


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