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水の使徒 下

精霊の超速の接近と共に拳が打ち出される。俺は後ろに跳んで回避するが直ぐ様間合いに入られる。


やはり、肉体の枷がないというのは圧倒的なメリットだな。


激流のごとき拳のラッシュを手で受け止めて流し、カウンターの剛拳が精霊の頭を吹き飛ばす。


「グルッ!!」


頭を吹き飛ばされながら精霊の攻撃は止まらない。腕が剣に変わり振るわれ逆袈裟の攻撃を禍々しい大楯で防ぎカウンターのエルボーを脇腹に叩きこむ。


精霊がバウンドした瞬間身体が液体に変わり高速で頬を掠める。


背後で液体から元の身体に戻ると剣が振り下ろされる。反転しながら【スルーズ】の拳で防ぎ虚空から黒い鎖を何本も生み出して蛇のように操る。


精霊は翼を羽ばたかせて空に飛び鎖を水で防ぐと水の弾を生み出す。優雅に手を振り下ろした瞬間爆撃の如く降り注ぐ。


辺りの瓦礫で土の弾を作り打ち出して弾き、隙を見て腕を振って風の刃を放つ。


飛来する刃を回避するが爆撃は止む。その隙に瓦礫を魔法で剣に変えて回避するタイミングで放つ。


致命的な隙を突かれ剣が何本も精霊の身体を刺し穿つ。しかし、身体が液体となり剣は地面に向けて落ちていく。


精霊が人の形に戻ると氷の柱が落ちる。力業で破壊するが肉薄した精霊の蹴りをもろに食らう。


「グッ!?」


呻き声と共に地面を何度もバウンドする。追い付いた精霊の追撃を腕をクロスさせて防ごうとする。


しかし、弧を描きながら振り下ろされる手に二の腕が触れた瞬間抉れていく。


咄嗟に【サンダルフォン】を起動させ自分の身体に向けて風を当て吹き飛ばして距離を取る。


俺が手で空気を空気を抉るのと同じような手法か。似たような魔法を使えるから分かるが、やはりえげつない威力だ。


骨がくっきりと見える右の二の腕を回復させて傷を塞ぐ。その隙に精霊は高速で近づいてくる。


速度の乗ったストレートをギリギリのところで手を当てて軌道を逸らしカウンターを拳を叩き込む。


「ギギギ……!」


精霊はのけ反るがすぐに戻し、睨み付けると飛び退き氷の剣を生み出して手を振るうと剣が勢いよく放たれる。


何度も跳んで避けるが背後からの剣を避けれずに腹を穿たれる。剣を引き抜き自然治癒で傷が塞がるのを確認しながら水の砲撃を大きく跳躍して避ける。


ちっ……魔力の量も質も相手の方が上だ。ミサの方が上手くいかなければ詰む……!


精霊の肉薄からの拳の連打を同じく拳で打ち合う。水と血が舞い、打ち合わせた瞬間衝撃がタイルを捲り壊していく。


爪に【スルーズ】を使って硬くして腕を切り落とすが落ちながら剣の形状になると飛来し肩に突き刺さる。


鈍いが痛みは痛み、怯んだところを精霊のボディブローをもろに食らう。拳の直撃で民家の壁まで吹き飛ばされて叩きつけられる。


「ギギ!!」

「グルアッ!!」


すぐさま拳を横に振るい精霊の追撃の拳を弾く。


牽制のために風の砲弾を放つ。精霊は砲弾を避けながら後ろに飛び距離を取る。


牽制くらいには使えるか……物理的な攻撃は触れれるが通じない。実際、肉体があったら既に何度も殺している。


起き上がると同時に雷の放つ。閃光と轟音と共に放たれる槍に精霊は穿たれる。少し痺れたのか身体にパチパチと電気を弾く。


水というのは元を辿れば絶縁体だ。精霊の身体を構成するのは極めて純粋な水だしあまり効果がないか。


瞬きする間に精霊は近づき鞭のように腕を振るう。腕は伸び、俺の脇腹を叩く。


「グルッ!?」


焼けるような痛みを歯を食い縛り耐え炎の弾丸を地面に向けて放つ。着弾する前に水で消火され、水の砲撃が放たれる。


氷の上を滑って回避しながら風の刃を放つ。精霊は避けることなく風の刃に当たりすり抜けていく。


ちっ……身体を部分的に液体にして攻撃をすり抜けさせたのか……!


地面を蹴り超速で迫る精霊に向けて拳を出し精霊は受け止めて鋭い蹴りを顎に叩き込んでくる。


ぐっ……!


頭を揺さぶるような感覚と共に意識が飛びそうになる。すぐに頬の傷を抉り痛みで無理矢理意識を飛ぶのを防ぎ、続く拳を【スルーズ】で硬くして耐える。


「放て!!」


精霊の拳を掌で受け止めた瞬間、人間の声が聞こえる。


その瞬間、風の砲弾が着弾し瓦礫を撒き散らす。

ちっ……人間どもの軍隊か。昨日、俺が城を攻めたついでに他の『大罪』たちが壊滅させたんじゃなかったのかよ!?


土埃の中から突きだされる剣を拳で破壊し風の刃の一凪で切り裂く。風が吹くと土煙は晴れる。


辺りを様々な形の鎧を着こんだ連中が俺らの周りを囲みながら敵意を剥き出しに睨み付けていた。


軍隊ではなく冒険者か。流石に、冒険者を投入しなければならない程に事態が大きくなってしまったか。


外野から次々と放たれる魔法を弾きながら精霊から繰り出される超速の拳を捌き、内心怒りを滲ませる。


【マルチタスク】がなければ確実に無駄な被弾があった。こっちは精霊との戦いに集中したいのに邪魔もいいところだ。


冒険者の剣を背中で受け、反転しながら裏拳で凪払う。その瞬間、脇腹に激痛が走る。


「グルッ!」


何度も地面をバウンドし建物を貫通したところで止まり、血塗れの身体を起き上がらせる。


余所見したタイミングで精霊の拳を諸に食らってしまったか。ダメージも酷い、【四元素魔法】で癒せるとはいえ、限度がある。速くしてくれよ、ミサ。


『エリラル、そっちの方はどう?』

『かなりキツい。魔法の方はどうした』

『最悪。術者を冒険者が守ってるせいで近づけない』

『……やはりか。こっちにも冒険者が来ていやがる』


『大聖霊』の差し金……と見て良いだろう。そうでなきゃ、ここまで不利な状況をセッティングできる訳がない。


となれば、戦闘時間が長引く可能性がある。そうなればこっちのゲームオーバー確定だ。


『……おい、良い考えがある。賭けるか?』

『上等。賭けなければじり貧も良いところよ』


口角を上げ、ミサに作戦を伝える。この作戦はミサも俺も負担が大きいし、これで勝てるかも分からない。五分五分も良いところだ。


だが、賭けるだけの価値はある。


『それじゃあ、そろそろ切らせて貰うぞ』

『了解。死ぬなないようにね』

『ああ』


ミサとの【テレパシー】を切る。その瞬間の火の砲弾が俺に直撃する。


火には耐性がある。この程度なら通じない。


【ロビンフッド】を発動させ【スルーズ】を付与した拳を横に薙ぐ。建物は横に破壊され、間合いに入っていた冒険者の殆んどは吹き飛ばされる。


「「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」


突然の事に絶叫する冒険者たち。間合いの外にいた冒険者たちはしり込みし、間合いを開ける。


その刹那に精霊の拳が振り抜かれる。身を屈めて避け風の砲弾を直接叩き込む。


衝撃で倒壊した建物の瓦礫が吹き飛び、赤く濡れたタイルはより一層捲り上げられる。


それでも精霊の攻撃は続く。風で消し飛ばされた身体は修復され、強烈なアッパーが顎を捉える。


大きくのけ反りながら辺りに風を撒き散らして精霊との距離をとる。そのタイミングで空から氷の矢や通常の矢が降り注ぐ。


冒険者どもも恐怖を振り払いやがったか。ドライな関係だろうし、仲間が傷ついても攻撃は止めるつもりはないか。


降り注ぐ矢を【サンダルフォン】で収束させた空気の主砲でへし折る。


「ぬおお!!」


屈強な冒険者から棘付き鉄球を拳で粉砕し隙をついてクロスで振り下ろされる剣を【スルーズ】で身体を硬くして防ぐ。


間髪入れず全方位から放たれる炎の槍を拳で霧散させる。


ほう……恐怖しながらも攻撃するか。


火の粉が舞う中、果敢に攻める冒険者に一定の評価を下す。


中々に良い。恐怖を律し立ち直るとなればその心はとても強いものだろう。だが、それが強さと比例するとは言っていない。


冒険者の剣や槍を弾くと水の弾丸が肩を穿つ。地面を蹴り精霊に肉薄し拳を打ち合わせる。


放たれる衝撃波で辺りの冒険者は空に舞う。その中を精霊の拳を手で弾き肘で逸らす。互いの技と技が互いの必殺を躱していく。


地面を蹴って距離を開け雷の槍を空から落とす。


精霊は独楽のように回転しながら攻撃を避け回転蹴りを振るう。


二の腕で蹴りを防ぎ拳を打ち出し顔面を捉えるが倒れながら腕が触手伸び脇腹を切り裂く。


熱く痛む傷口を押さえると傷が癒え、倒れる精霊はすぐに起き上がる。


『準備は整ったよ』

『良いタイミングだ』


迫りくる精霊の剣を大きく跳躍して避けながら【テレパシー】からのミサと連絡をとる。


大きく距離がとれた今なら、出来る!!


『【置換】!!』


ミサの大声が頭の中で響く。その瞬間、視界が光に包まれる。


光から開けると、そこには血に濡れた瓦礫の山と取り囲む何百人もの冒険者、その奥に紅い水晶を持つ男がいた。


空間に作用する魔法が使えるのなら自分の位置と他人の位置を変える事ができる魔法くらい使えても可笑しくない。


物理技がメインの俺はどう頑張っても精霊の動きを封じる事が出来ない。それなら、強みを維持できる状況にすれば良い。


そのためにミサと俺の位置を変え戦場を変えた。あいつの事だ、逃げながら戦うことぐらい出来るだろう。逆に、俺は自分の強みを十全に生かす事ができる。


剣を持って接近してくる冒険者に近づくと拳を放つ。たったそれだけで身体は破裂し血飛沫と臓物に身体を汚す。


【スルーズ】によるダメージに応じた攻撃力の強化……かなりの状態になっているな。


だが、これなら十分だ。潰してやるよ、全員。潰して、生きて戻るためにな!

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