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水の使徒 中

「―――――――――!!」


音にならない、それでいて身体の芯から揺さぶる絶叫が大気を震わせる。


背から血のように紅く禍々しい蝶の羽のような翼が生えると高速で突進してくる。


俺とミサが飛び退いた瞬間、精霊が着弾、衝撃で瓦礫が舞い水が巻き上がる。


「グルゥ……!」

速い……!何て速度だ……!


撒き散らされる衝撃を風でいなしながら空中を浮遊する。


身体が液体だから固体という枷がない。俺のように肉体の自壊が無いのでデメリット無しに能力をフルで使える。それだけで十分な驚異になる。


腕を徐にあげて振り下ろし、精霊の周りから雷の矢が放たれる。精霊は翼を纏って防ぎ、水の光線を俺に向けて放つ。


「グッ!!」


身を反らして避けて背後に回転し腕を逆袈裟に振るい風の刃を放つ。空を飛びながら回転して避け肉薄と同時に手を氷の槍に変え突き出す。


頭を傾げて避けながら蹴りを入れるが当然のように身体をすり抜ける。


やはり、物理的な攻撃は通じないか。


「――――」


槍が手に戻ると勢いよく振り下ろす。刹那、俺の身体に滝のような水が押し寄せる。


風を纏い水を弾いて抜け出すが周りから氷の剣が一斉に放たれる。腕を振るい弧を描く炎で全てを溶かすが肉薄された精霊の拳に回避が間に合わず左腕で受け止める。


「グッ!!」


暴力的なまでの重さの一撃に驚くがすぐに地面に叩きつけられ、肺の中の空気が一気に吐いてしまう。


空気を吸いながら咄嗟に地面を転がった瞬間精霊の拳が地面に叩きつけられる衝撃で吹き飛ばされる。


ちっ……これ程までに強いのかよ……!


再び拳を構える精霊に魔力の糸が絡み付くが身体をすり抜ける。


『糸が通じない……!』

『魔法を使え!こいつには魔法以外が一切通じない!』


動揺するミサに【テレパシー】で情報を伝えると同時に形を整えた瓦礫で手を覆い【スルーズ】で硬くする。


その瞬間、振り下ろされる精霊の拳を盾のように構えて防ぐ。


やはり、これなら防御できる……!


もう片手と肘、脚に瓦礫をコンマ数秒で加工してプロテクターのようなものを作り上げると精霊の顔面を殴る。


横に倒れながら蹴りが頬を捉える。


崩れかける体勢を力業で耐え蹴りを入れるが精霊の腹から刃が突き出し防がれる。それと同時に身軽な動きで精霊は後ろに飛び退く。


精霊に照準を合わせ風の砲弾を全方位から放つ。だが、翼の付け根から生み出された水の帯が全てを打ち落とす。


遠中距離の攻撃は対処が速い。基本的には当たらない。だが、それだけだ。


精霊の背後の光が歪み、風を纏ったミサの鎌が精霊の胴を切り落とす。


まさか、背後をとられている何て思ってもいなかっただろうよ。だが、これだけでは足りない。

腕を振り下ろし待機させていた風の砲弾で絨毯爆撃をする。


点ではなく面の攻撃だ。衝撃も満遍なく均一に広げてあるからどこに当たろうがこれで押し潰される。


「グルルルルルルルル……」


土煙に警戒心をむき出しにしながら拳を構え、ミサは空気をねじ曲げ透明化する。


土煙が薄れると思った瞬間無傷の精霊が飛び出し爪を振るう。


驚きながらも身体を逸らしながら背後を流し見する。背後の建物に爪で切り裂かれた跡がつき、その奥の奥の奥まで建物が切りされている。


背後で崩れ落ちる轟音を聞きながら舞うようはステップで振るわれる爪の攻撃を肘や拳で逸らしていく。


攻撃の速度は速い。だが、見きれないほどでは……ない!


攻撃を見切り爪を右の裏拳で大きく弾き、睨み付ける。

「グルッ!!」


大きく開かれた胸に左の拳が叩き込まれる。


精霊は何度も地面をバウンドし止まったところで人形のような挙動で起き上がる。


やはり、魔法だけでなく物理的な攻撃もダメージが入ってない。せいぜい、身体を構築する魔力に波が起きただけだろう。


再び肉薄し振るわれる拳や爪を捌きながら思考を分け状況を考える。


精霊は自然現象そのもの。そのためあらゆる攻撃を受けても攻撃は意味をなさない。唯一衝撃を与えれる魔力由来の攻撃は決定打にならない。


それでいて向こうからの攻撃は当たり前だが通る……正直に言って反則も反則だ、勝ち目はない。


風の砲弾で距離を開け、雷の刃を振り下ろす。精霊は避けながら水の刃を放つ。禍々しい大楯で防ぐとそれを接近した精霊は殴り付け破壊する。


カウンターの掌底で壁に叩きつけると破裂した水入りの風船のようになるが直ぐに元の姿に戻る。


だが、このままだと埒が明かないし、このまま退散することも出来ない。


『可笑しい』

『どうかしたのか?』


攻撃を弾き背から生み出される血色の大鎌が振るいうミサの思考がこちらに流れてくる。


咄嗟に反応しながら風の砲弾を放って視界を悪くして一度合流する。


『精霊は特定条件下でしか顕現できない。それも、ここまで人間が多いと不浄の魔力の量も多くなる。自然消滅しなくてはならない』

『……そう言うことか』


確かに、精霊の説明文にも同じような事が書いてあった。その信憑性は高い。


土煙から水の触手が出てくるが咄嗟に回避し炎の槍を放つが簡単に回避される。


となれば……十中八九、いなくてはならないヤツがいる。


『この精霊を操る術者、若しくは受信している魔法を破壊してこい。俺はこいつを押さえておく……!』

『そう言うことね、了解!』


すぐに俺の考えを理解したミサは大きく跳躍し避難が完了していない貴族街を疾走していく。


それを見ながら受け止めていたミサの腹を蹴り距離をとり、雷の矢を放つ。


精霊という莫大は魔力の塊を御すにはそれ相応の術者がいないといけない。また、遠くからやるのなら電柱のような役割をするものをセッティングしてなくてはならない。


それを破壊すれば……精霊は自壊する。


倒させて貰うぞ、精霊。お前がどれだけ強かろうが関係ない。ここで潰すまでの時間稼ぎはさせて貰う!

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