何か転生したっぽい。……いやホント何で?
木と土の匂いが鼻腔に目を覚ます。
ふぁ……よく寝……うわっとと!?た、立てなくて倒れてしまった。それにしても、ここはどこだ……?て言うか、俺は人間で、ベッドの上で寝てた筈だ。間違っても森の中では寝てない筈だ。
……筈だって言ってる時点で記憶が曖昧なんだよな。人間だったと言うことは間違いないし、知識は豊富にある。それなのに思い出が全くと言って良いほどない。あれか?エピソード記憶だけが中途半端に抜けてるとか、そんな感じか?
それにしても、森の中に捨てるとか……絶対に親はろくでなしなんだろうな。生きてたら絶対にしばく。
それにしても情報が必要だ。合戦だと情報が勝敗を分けたとか言われたとか言われてなかったとか。とにかく歩いて探そう。四足歩行なら何とか歩けるし……て、何だこれ。
何か、俺の腕……毛がモコモコしすぎじゃない?それに、何か手に肉球があるし。絶対に人間じゃないでしょ。誰か教えてプリーズ!!
【名称:なし 種族ベビーベアー】
はーい、何か教えてくれまし……じゃない!!何か空中に画面が出て情報が出てきたぞ!?えっ、どこかにホログラムを発生させる機械でも……まあ、無いよね。周り、完璧に森だし。
それにしても……【ベビーベアー】?赤ちゃん熊?つまり、今の俺は熊?人間からベアーにジョブチェンジ?……腐葉土の質感とか、匂いとか、完全に自然のものだ。夢じゃない。
人間から熊に転生か……人間の頃の記憶がないから分からないが前世の俺は畜生だったのだろうか。知る術はないし、諦めるしかないか。
それにしても……にわかには信じがたいが、今の俺は完璧に熊だ。手は熊のゴツゴツとしているし、爪も鋭い……まあ、熊の身体能力は人間以上だし、肉食獣の中でも強い熊は生態系のトップだから襲われる心配は問題ない筈だ。
【ベビーベアー:ランクE
ベアー系の魔物最底辺の魔物。
身体能力、耐久力は低く冒険者の遊び道具になりやすい。
肉は美味。塩と胡椒をあえてどうぞ】
はい、ここで再びホログラムによる現実直視の時間がやって参りました~。
最初の文は良いよ?魔物とか不審な事が書かれてるけどそれ以外は問題ない。
だが、残りの二文。どう考えても可笑しいだろ!?何で俺は遊び道具にされてんの!?動物の虐待は違法だぞ!?
その上、最後は完全に食レポじゃねぇか!塩と胡椒を振ってどうぞとか確実にこの説明文を書いた奴は絶対にろくでなしの糞やろうだ!
はぁ……はぁ……まあ、良い。マイナスばかり何だから少しくらいプラスの有効な情報をくれ。
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名称:なし 種族:ベビーベアー
Lv一
攻撃力:五 防御力:五
素早さ:三 魔力:四
アクティブスキル:【硬化】
パッシブスキル:【転生者】【逸脱種】
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ホログラムの内容がまた変わった。言うなればステータス画面か。
いや、どこのRPGだよ。ていうか、魔法とかあるんだ。一度使ってみたいけど……熊である時点でアウトなんだろうな。こういう技術って先導者がいなければ知ることが出来ないしな。
それに、気になることもある。何故俺はステータスっぽいものが見える。少なくとも、前世の知識では見えない事が普通だった。これは普通じゃない。
【ステータス画面について】
あ、そこはちゃんと説明してくれるのか。融通が利くのやら利かないのやらよく分からない。
【ステータスは通常のスキルでは視認不可能です。
特殊なパッシブスキルの効果、若しくは特殊な魔道具にのみ視認可能です】
そうなのか。まあ、全員が自分のステータスが分かるとは思ってない。
【ステータスには条件があります。
視認する相手のステータスがかけはなれていた場合視認不可です。
視認する相手との距離が半径五メートル以上だと視認不可です。
魔物だった場合見れるのは自分と同じランクかそれ以下、若しくは一つ上のランクのみです】
いや、制約が多くないか?最低でもこの三つの条件を揃えないと視認することすら許されないとかキツすぎるだろ。
【また、神のcgvh:cbgc'bxjvzibzwr+xdyvzeh,dfnvzdg】
うっ!?な、何か文字化けしたものを見た瞬間頭の中に黒板を引っ掻くような音がして視認できない。とりあえず画面を消すか。
はぁ……ワケわかめな事態だが予想していた以上に冷静だな。動揺が一周回って冷静になったか、エピソード記憶が消えたからか。まあ、そんな事は今はどうでもいい。
とりあえず、この場から動かないとな。最底辺の魔物とか言っていた時点でこの世界での最底辺からのスタートが確定したものだしな。行動を始めるならさっさとした方が良い。