【コント】町の便利屋
場所……客の家(居間)
役……便利屋=ボケ 客=ツッコミ
・・・
客の家の居間。作業着姿の便利屋が客の元へやってくる。
便利屋「すいません、なんとか終わりました。」
客「いやー、来ていただいて助かりましたよ。雨漏りなんて初めてですから。こういうとき便利屋さんが近所にあるととっても便利ですね」
便利屋「それはもう、便利屋ですから」
客「おっとそうでしたね」
便利屋「電話一本でどんな悩みもスピード解決。それが僕たちのモットーです」
客「また頼むかもしれないな。それで、今回はおいくらになりますか」
便利屋「はい、こちらですね。今回ですが全部合わせて三千と九百、」
客「ああ」
便利屋「万円です」
客「…………えっ?」
便利屋「三千と九百万円になります」
客「えっ?」
便利屋「えっ?」
客「えっ?」
便利屋「えっ?」
客「は、え?」
便利屋「えっ? ……あー。税込になります」
客「気にしてないです」
便利屋「はあ」
客「あの、桁が間違ってませんか?」
便利屋「ひょっとして、思ったよりかかっちゃってましたか?」
客「そうですよ。だって新しい家買えますよこれ」
便利屋「ですね(笑)」
客「何がおかしいんですか」
便利屋「でも都内の地価って最近もう怪しいですから」
客「そんな話してないんです。もう一度ちゃんと確認してくださいよ」
便利屋「わかりました、確認します。……あー、確かに。ちょっと計算間違っちゃってましたね」
客「もうまいったな。勘弁してくださいよ」
便利屋「これ税抜でした」
客「勘弁してくださいって」
便利屋「でもさっき気にしてないって」
客「本体価格はずっと気になり続けてるんですよ。なんで雨漏り直すのと家立て直すのが同じなんですか」
便利屋「なんでですかね」
客「こっちが聞いてるんですよ。いいからもっとちゃんと計算してください」
便利屋「そんなこと言ってもやっぱりコストはかかっちゃいますね。電話一本でどんな悩みもスピード解決。それが僕たちのモットーですから」
客「解決より速いスピードで悩みが生まれてるんですって」
便利屋「そんな。さっきあんなに喜んでくれたのに」
客「天井ぶち抜かれてチャラになった方が喜びますよ」
便利屋「それやると新たに手間賃いただく感じになりますね」
客「これ以上取るつもりですか」
便利屋「ぶち壊し料追加になりますがいいですか」
客「なんだぶち壊し料って。ふざけてるんですか。大体内訳どうなってるんですか」
便利屋「そうですね。今回かかっているのは『雨漏り修繕費』が一点。『ちょっと間違えたので一旦ぶち壊し料』が一点。『雨漏り修繕費』が一点、以上の三点になります」
客「ぶち壊し料入ってるじゃないですか」
便利屋「そこ一番コストかかっちゃいますね」
客「ふざけるのも大概にしてくださいよ。こんなのめちゃくちゃじゃないですか」
便利屋「失礼な。ちゃんと直しましたよ」
客「当たり前ですよ」
便利屋「ちゃんと直ったんだからそんなに怒ることないでしょう」
客「一体何を言ってるんですか」
便利屋「だって考えてもみてくださいよ。あなたが呼んだ便利屋が、あなたの家の雨漏りを一生懸命直して、あなたを悩ませていた問題がようやく解決して、素敵な家一軒立てるのと同じぐらいのお金を要求しているただそれだけのことなんですよ」
客「それが問題の全てですよ。本当に話にならないな。もうあなたいいから責任者、責任者呼んでくださいよ」
便利屋「わかりました。責任者コール一本、五千万円になります」
客「注文じゃねえんだよ!」
おわり




