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 お守りを握りしめたまま、心の中で、百鬼先輩を呼ぶ。

 来てくれなかったらどうしよう、と不安はあったけれど、もし来てくれなくても、きっと帰れるはずだとなるべくポジティブに考えてみる。

 ゲームでは、五つの謎解きをクリアすれば帰ることが出来た。樒さんから買うアイテムは回数制限はあるけれど謎解きのヒントをくれるもので、それが無くても頭の良い謎解きの得意なプレイヤーなら解ける問題だったはずだ。

 百鬼先輩が来られなくても、カナリアが一緒だから、きっと大丈夫。一人きりでいるよりずっと良いはずだ。


「あ」


 カナリアの手もぎゅっと握ってしまっていた私の、お守りを持った方の手を取られた。


「そんなに必死に手を繋いでるなんて、妬けるなぁ」


 カナリアの気の抜けたような「ナキリ先輩マジで来た」という声と、はあ、と大きなため息が聞こえる。


「俺を呼んでくれてありがとう。こういう場合はいつでも呼んでね。……遭遇条件を満たしていなくてもやっぱりこうなるのか」


 後半が聞き取れず首を傾げた私に、百鬼先輩はなんでもないと笑った。

 にぎにぎとお守りを持つ手をくすぐられ、ぎゅっと握りしめていたせいで強ばった手を百鬼先輩の手が解く。そのままお守りは先輩の手で私の巾着に仕舞われた。

 そうして空いた手に先輩がするりと指を絡めて、私は百鬼先輩とカナリアに挟まれて二人と手を繋いだ形になる。


「……?」


 何この連行される宇宙人の構図、と思わず百鬼先輩を見上げると、にっこりと安心させるような笑顔が返ってくる。反射的にへらりと笑顔を返したはいいけれど、意味がわからない。

 疑問に内心首を傾げていたら、百鬼先輩が軽く手を引いて私たちを立ち上がらせる。


「ひとまず移動しようか。鳴瀬さん、ハルカの手を離さないようにね」


 はーい、といい子のお返事をしたカナリアを見て、ふと思いつく。なるほど、はぐれないようにということでみんなで手を繋いでいるのかな。一人でいると良くない怪異でもあるので、納得である。大人しく繋がれておきます。

 一人で納得して、手を引かれるまま歩いていくと、射的のような屋台の裏手までやってきた。

 百鬼先輩は軽く周囲を見て、うんと頷く。


「最短で帰ろう。まったく、まだ祭りに来たばっかりだって言うのに、空気の読めない怪異だよね」


 こっちはお呼びじゃないんだよねぇ、と軽く笑いながら言った先輩、頼もしいことこの上ない。さっきまで怖くて震えていたけれど、今は絶対的な安心感がある。百鬼先輩がいるから大丈夫、と思えてしまう。


「私なにか手伝います?」

「あの、私も。百鬼先輩、なにか私たちにも出来ることはありますか」


 一人でなにかやれと言われたら怖くて出来ない気もしたのだけれど、それでも立ち止まっている場合ではないこともわかっている。

 百鬼先輩は少し考えるようにしたあと、私とカナリアに少し待っててと言いおいてどこかへと歩いていった。


「悠、大丈夫だからね。ほら、ナキリ先輩来たしさ」


 私が相当怖がっていると思ったのだろう(実際手を離すのがまだ怖いので当たっている)、カナリアはそう言って繋いだままの手を揺らした。


「それに、私たぶんこういうの得意なタイプだし」

「……こういうの、とは」


 怪異に得意も何もないと思うけれど、と思ったのが顔に出たらしく、カナリアが笑った。そんな不安そうにしないで大丈夫だよ、と言う彼女は、どこか不思議な表情をして私を見る。


「まあうん、話半分くらいで聞いてね。私、危ないところとか分かるっぽくて」


 それはどういう意味だろう、と瞬いた私に、カナリアは苦笑して言った。


「私さ、前に大きな鳥籠買ったの覚えてる?あれ買ってから、なんか良くないところに行こうとすると鳥の鳴き声が聞こえるんだよね」


 目を見開いた私に、カナリアは「まあ信じらんないかもだけどね」と苦笑して、こう続けた。


「だから行っちゃだめなとことか、絶対避けられるし」


 それを私に明かしてくれたことに驚いていると、大丈夫、と彼女は繰り返した。

 つまりカナリアには、鳥籠の金糸雀がついている、と思っていいのだろう。彼女の言い方からすると、家以外でもその鳥の声はきこえているようだから、多分見えていないだけで今も金糸雀がそばに居るのかもしれない。


「……うん、信じるよ。私は、カナリアについて行けばいいってことだよね」


 知っているから、というよりも、この事態で私を安心させるためにそれを明かしてくれた彼女を信じる。

 パチリと目をまたたいたカナリアが私を見て、そうして柔らかな笑顔をうかべた。

 そうして、百鬼先輩が戻ってくる。


「おまたせ。とりあえず二人はこれを付けておいて」


 手渡された狐面と猫面は、きっと人間であることを隠すためのものだろう。百鬼先輩は既に付けているけど、顔ではなく頭に付けているのは、視界が悪くなるからだろうか。きっと百鬼先輩は中にある怪異のおかげで人間であるとばれないだろうから、本当なら付けなくてもいいのかもしれない。


「つけたね、じゃあいこう。まずは手形と鍵だ」


 手形も鍵もゲームで謎解き後に手に入れたアイテム……ということは、やっぱりここの抜け方はゲームと同じなのかな。

 それなら、私もがんばれるかもしれない。役に立てるかも。

 狐面の下でちょっとだけ顔を引きしめて、私は手を引かれるままに歩き出した。

  


 

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