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27/55

27:夏休み

 夏休みには、合宿、夏祭り、海水浴、花火大会とイベントが目白押しである。もちろん、ゲームにもあった。というかゲームで出てくるイベントがこの四つだ。


 ヒロインが攻略対象と愛を深める、怪異込みのイベントである。


 合宿では蛇目先生のご実家が所有する別荘に行くことになるのだけど、そこでなんというか古い怪異に出会うことになる。分類的には合宿というより肝試しイベントかもしれない。

 ただ、肝試しする場所が問題で、大蛇の出るといわく付きの洞窟に攻略対象のうちの誰かと行くことになるのだが、まあお察しの通り大蛇が出ます。倒せないタイプのやばいのがでてきます。蛇目先生のルートの時のみ内容が彼の過去にまつわるものにガラッと変わる、生徒会と攻略対象のわちゃわちゃ和みイベント~そこに大蛇の怪異を添えて~だった。


 夏祭り、こちらには首なし屋台も出店として出ているのだが、期間限定夏アイテムをここでゴリ押しで推し売られ購入した後、永遠の夏祭りという怪異から脱出するためにあれやこれやすることになる。

 唐突に謎解き脱出ゲームと化す夏祭り会場には、人ならざるものがうようよいる。そんな彼らからヒントを貰ったり自分達で考えたりしながら、怪異から出るために奮闘するイベントだ。

 ちなみに出られないバッドエンドももちろん存在し、狐野陸のバッドエンドは鳥居の前で狐憑き状態の彼に手招きをされる美麗スチルが拝めるエンドとなっている。


 海水浴、要は水着イベントである。攻略対象たちのキラキラ爽やかたまに色気全開の水着スチルを見るためのイベント──そして海に引きずり込む怪異をどうにかするイベントだ。これはもうある種テンプレと言っていいかもしれない。

 水難事故で亡くなった人々の集合体がこの怪異の正体であり、こちら祓うことも倒すことも出来ないが説得はかろうじてできる、というものだった。

 上手く説得して納得した人だけ浄化し、納得できない人は封印する、といったものだ。水難事故が無くならない限り根絶やしに出来ないという厄介な怪異だったはずだ。


 花火大会だけはちょっと優しくて、事故で恋人との待ち合わせにたどり着けなかった浴衣の女の子の霊(ただし血みどろ)を、ずっとその子を待っていた青年の怪異と会わせてあげるイベントだ。青年の霊の方は、恋人を捜しまわる間に怪異に取り込まれたため、生前の姿のまま恋人と似た背格好の女の子を攫う怪異となっているのを、二人を会わせてあげることで解決するのである。

 ちなみに攫われた女の子は恋人とは違う子だと分かれば直ぐに解放されているので、あまり害はない怪異だ。



 そして今はまだストーリー開始時期は来ていない。本編はヒロインがくる二年の初め……つまり来年からスタートになるので、合宿イベントはない。海水浴、夏祭り、花火大会は私が行くとなれば百鬼先輩にお付き合いいただく形になるのが目に見えているので、現状行く予定がない。

 カナリアを誘う選択肢もあるけれど(そしてもちろん私としても彼女と遊べるのならとても楽しみではあるのだけれど)、人の居なくなる十字路で泣かれるほど心配をかけてしまった手前、それもちょっと躊躇われるのだ。

 つまり私の夏休みは、クーラーの効いた部屋に籠って勉強するの一択。ちょっと積んでいた本やゲームの消費もする予定だ。

 とても青春とは程遠い夏休みである。けれど身に合っているといえば合っている気もするので、休み明けのテストに備えてバリバリ勉強するつもりがある。勉強は嫌いという程ではないけれど、三日坊主にならないことだけを祈っている。







 ──などと、思っていた時期が私にもありました。


「どうしたの、ハルカ?」

「いえ、ほんとうに、なんでもないです」


 隣を歩く百鬼先輩が、夏の陽射しに輝いていて眩しい。

 夏休み初日、朝起きて、さあて今日はとりあえず夏休みの課題やろうかな、などと思っていた私に届いたメッセージ。


「おはよう。今日はなにか予定はある? なければ、一緒に図書館に行こう」


 これである。差出人は何度見返しても百鬼先輩で、数秒止まった私は我に返って即返信した。

 ぜひ、一緒に行きたいです、と。

 もはや反射と言っていい。そもそも、この夏休みに私の予定なんてほとんどない。お断りの選択肢などなかった。

 どこの図書館に行くのかと思えば、市の図書館か学校だと言うので、学校にしましょうと私からお願いした。学校なら制服で良いので服に悩まないというのが理由のひとつと、やっぱり私にとって第二図書室は特別だからというのがひとつ。

 あとは、夏休み前二週間、私はほとんど生徒会室にいたので、第二図書室に行けていないのだ。久しぶりに百鬼先輩と行けるのなら、そっちがいい。

 約束の時間までに急いで準備して、家まで迎えに来てくれた百鬼先輩と歩きだしたところだ。手はもちろん繋がれている。


「今日は暑いね。でも晴れて良かった」

「はい。泳いだら気持ちよさそうですよね」


 まあ怪異が怖いので泳ぎになんて行かないんですけども。受け答えとしては正解だと思う。


「あれ、海に行きたかったりした?」


 きょとんとした顔で先輩が聞いてくるのを、慌てて否定する。行きたいか行きたくないかで言えば行きたいけれど、怪異が怖いから行く予定は一切ない。


「いえいえ、泳ぎ得意じゃないですし、毎年夏は海に怪異がでるからちょっと。それより図書館とかの方が行きたいです。あ、今日はすこし課題もやりたいんですけどいいですか?」


 ちなみにこの世界は怪異が当たり前なので、海の怪異イコール水難事故扱いになる。なので夏はもちろん海水浴場は賑わうのだ。大多数の人間が、怪異が出たのかあ、でも私は大丈夫でしょ、という感じだったりする。

 なんというか、怪異は前世で言う飛行機事故とかそういった感覚に近いらしい。

 私からしたら怖いばかりなので、その感覚はちょっと分からない。


「ああ、そうしたら俺が教えてあげる。終わったらまたいつもみたいにおすすめの本を教えるね」


 はい、とうなずいて、百鬼先輩と並んで歩く。

 初日から百鬼先輩に会えるなんてラッキー、なんて考えていた私は、この後大変なことになるのだと全く知らなかった。

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