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 何がなんなのか大変よく分からないが、首はある、のだろう。店主の首はしっかり繋がっているし、本人は「なくなって見える」と言っていたので、首なし状態がデフォルトではないのだ。たぶん。

 考えても正解は分かるはずもないので、私は並べられた商品を見てみることにした。

 正直、どの品がなんなのかさっぱり分からない。

 これがオススメ、と言われ差し出されても、本当にそれでいいのか考えてしまう。うんうん唸りつつ商品を見る私を、店主はにこやかに見ているので、特に急かすつもりはないようだった。

 手に取るのも躊躇われるのでじっくりと観察していたら、場違いな電子音が鳴り響いた。びっくりして辺りを見回すと、他でもない店主が「おや、失礼」となかなか古いタイプの携帯を取り出している。

 が、ガラケー……怪異がガラケー!?

 ぱかりと二つ折りタイプの携帯を開いて、どなたです、なんて気軽に電話に出ている。紺色の羽織に白地に桜柄の長着、豪奢な髪飾りをつけていて、手にはその辺で売っていそうな紙袋を持っている白髪赤目の美しい容姿の男性が、ガラケー片手ににこやかに通話しているのだ。現実味がないというか、違和感がすごい。

 あまりのことにじっと店主を見ていると、私なんか気にした風もなく明るく笑って、何やら楽しげに通話している。


「あは、なるほどねぇ。いいよいいよ、特徴を教えてよ」


 相手の声は当たり前ながら聴こえないが、店主の様子はひどく愉快そうで、面白いことになった、と顔にバッチリ書いてある。

 随分と気心の知れた仲なのか、話し方や声のトーンが私に対してとだいぶ違う。


「ふんふん、なるほど。黒髪で、うんうん、小柄? どのくらい小柄なのかな……私の胸くらいの身長? それで学生服……ああ、君の所の学校のね、わかるとも」


 はいはいわかりましたまたあとで、と通話を切った店主は、ぱっと私の方を見た。にんまりと細められた目がじっくりと私を見つめる。


「な、なにか……?」

「いやぁ、なかなかどうして、本当に面白いなァと思いましてね。お嬢さん、ちょっと待っていてもらえます?」


 なにがなんだかわからないでいると、店主は出していた商品を片付け始めた。鼻歌でも歌いそうなくらい楽しそうにしながら、かしゃんごとんと音を立てて片付けていく。


「えっあれ、あの」


 オススメのアイテムだったのでは、とぽかんとしてしまった私に「もっといいものがあるので~」とだけ言って、ひょいと屋台の裏に引っ込んでしまう。


「え、ええ……?」


 訳が分からずそのままいれば、店主はにこにこしながら戻ってきた。手にはまた何か品を持っていて、はいどうぞ、と手渡される。

 手の上にあったのは、赤い組紐を使ったアクセサリーだ。花の形の飾り結びがされており、鞄や服にワンポイントでつけても良さそうなシンプルな作りの物。先程まで店主の並べていた品に比べると、随分と可愛らしいデザインだ。


「お嬢さんにはこちらが良いと思います、ええ」


 有無を言わせずに受け取らされて、呆気に取られて店主を見上げる。


「お代は……そうですねぇ、そちらのアクセサリーがいいですかねぇ」


 そちらの、と言いながら私の上着のポケットから、さっき先輩たちと行った店で買った真鍮製のペンダントトップを取り出す。

 あまりに流れるようにやるので、止める間もなかった。


「え、え、え?」


 混乱しつつも、この首なし屋台で売られる品が対怪異に特化していることを知っているので、そんなアクセサリーと交換でいいのならどうぞ、という感じではある。可愛いと思って買ったペンダントトップだけれど、自分を助けてくれるアイテムの方が大事だ。


「よろしいです?」

「は、はぁ、大丈夫です」

「では、取引成立でございます」


 よく分からないまま自分のものになったものを見ていると、こちらはお守りなので、と店主が指さした。そのまま指先は飾り結びを持ち上げ、私の鞄にささっと取り付けてしまった。


「こちらのお守りは、心に思い浮かべ願うと、会いたい人に会えます」


 さあどうぞ、と言われた言葉に、頭に浮かんだのは百鬼先輩だった。

 ちりん、とお守り根付が音を立てる。


「効果の期限は特にないですけど、貴女がもしそれを誰かに譲っても、その人に効果は出ませんからね。対価を払った貴女だけ、ということを覚えておいてください、お嬢さん」


 歌うような口調でそう言って、店主は「さてさて、そろそろ店を開けなくっちゃ。貴女もはやくお迎えを呼んで、日常にお帰りなさい」と紙袋をかぶった。ゲームで見慣れた姿がそこにある。

 二回くらい店主とお守りを見比べて、心の中で百鬼先輩を呼んでみる。

 百鬼先輩。百鬼先輩、会いたいです。

 がしゃんがたんと賑やかな音を立てる屋台の横、目を閉じてこの世界で一番信頼している人を呼ぶ。


「よかった、きみなら俺を呼んでくれると思った」


 悠、と呼ばれて目を開けると、ひどく嬉しそうな顔をした百鬼先輩が、私の目の前に立っていた。

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