20
今回短いです。間が空いてごめんなさい
ぽかん、と状況を忘れてその人を見上げてしまった。
知らない人だ。こんな目立つ外見の人、もし会っていたなら覚えていない方がおかしい。白髪赤目なんていう色合いのキャラクターも、ゲームに出てきていない。
ただ、その声に、聞き覚えがある。
「どうぞ、お嬢さん。首塚の護り石なんて、結構なものをお持ちだねぇ」
ぢりぢりと音を立てている根付を見て、その人は言った。
中途半端な位置で止まっていた手に携帯を握らせて、首を傾げて私を見ている。
首塚の護り石、という初めて聞いた単語も、私の耳はスルーしてしまう。
この声は、だって、違うだろう。
「その音は護り石が警告として鳴らしているようなものでねぇ。そしてその警告は私の事だろうから、そう怖がらなくていいんだよ、お嬢さん」
にっこりと。人好きのする笑顔を浮かべて、彼は言った。私は結構君たちには友好的なほうだから、と私になんてことないように言っている。
その喋り方も聞き覚えがある。
あたり姫は、サブキャラクターも声優陣は豪華だった。なんで攻略対象にその声をあてなかったんだ、というようなキャラも沢山いた。
そのうちの一人に、ミステリアスで優しい声だったり、爽やかなのに胡散臭いような喋り方を得意とする、乙女ゲームにはよく出演している声優さんがあてられていたのだ。
特徴的な声だから、聴けば「あっこの人!」とすぐに分かる。
ファンの中には、この声を聞きたくてそのキャラクターに会いに行く人もいたほど。割といいキャラをしていたので、人気投票では攻略対象に次いで人気が高かった。
「お困りなら私の店へ来ないかい。護り石の加護があってもここにいるのだから、きっとお嬢さんの助けになると思うよ」
手を差し伸べてくるその人は、肩につくくらいの白い髪を揺らして、にんまりと笑みを深くして、私の答えを待っている。
いつの間にか根付は静かになっており、私の少し荒くてか細い呼吸音だけが耳につく。
今見ている光景が、信じられない。
「そろそろ店を出す時間だしねぇ。運がいいね、お嬢さん」
ぱっと彼が手を振ると、そこには今までなかったはずの屋台がある。
小物から少しかさばりそうな絵画まで、いろいろなものが並んでいて、何屋なのか検討もつかない。強いて言うなら雑貨の屋台なのだろう。
「今のお嬢さんにぴったりの品もあるから、ぜひ見ていくと良いですよ」
さわやかに。そうして、人当たり良く。警戒させないような柔らかな喋り方なのに、どことなく掴めないような喋り方。
聞き覚えのある声をした人が、見た事のある屋台を手のひらで示している。
乙女ゲームにはよく出演していて、アニメでは「全てを知っていて主人公を翻弄するキャラ」だったり「冷酷な幹部キャラ」だったりと、様々なキャラクターに命を吹き込むその声優の声をあてられていたサブキャラクターは。
「おっとそうだ、これをかぶっておかないと」
どこからか取りだした茶色い紙袋を、ぼすっと音を立てながら頭にかぶったその人は。
その姿なら、ゲームで何度も見たことがあるから知っている。
ゲーム内では決して顔を見せなかったキャラクターは──首なし屋台の店主は、さあさあこちらへどうぞ、と私を手招いてみせた。




