第七話 ギルドマスターと猪騒動
「よーしナイ!王国に入ったらまずはやらなきゃいけないことがある。それは飯だ!」
関所をでて城下町ロイはニヤリと笑いながらそう言う。
金のない身としてはその提案は避けたいのだが・・・
「すみません。持ち合わせがありませんので、ロイさんだけ食べてきて下さい。ちょうどこの大きな建物がありますし、目印としてちょうどいい。ここで待ってますよ。」
「あのなぁ坊主・・・その歳でそんなこと言ってんじゃねぇよ。子供待たせて大人の俺だけ飯食ってくるなんて出来るわけねぇだろ?黙ってついてこい。一人二人増えたところで払えなくなるほど稼ぎは悪くねぇぞ。」
なるほど。この歳じゃ確かにそうか。流石にこの体になって短いせいか、自分が子供であると忘れがちだ。
一度死ねた程度で奢ってもらう時は気持ちよく奢らせることを忘れるなんて、驕っていたのはこちらのようだ。
「うーんわかりました。すみません、あっいやありがとうございます、ロイさん。」
「へへっそれでいいんだよ。マスターッ!!!席二人分開けてくれえ!!しかし親がいなかったり、どうやら色々抱えてる割にやけに礼儀正しいなおめぇは・・・」
どうやら目印にと言った建物が食堂のようなものだったらしく、ロイは店に入りながら主人とこちらに同時に話しかけてくる。なかなか豪快な人だ。
「よォ!ロイじゃねぇか!ガキンチョ連れてお散歩かァ!?仕事しろ仕事ォ!」
「これが仕事だ馬鹿野郎!こいつは例の森で見つけた保護対象者だっての、おめぇのとこの依頼くらい覚えとけよ。」
同じくらい豪快な人が出てきたな。類は友を呼ぶってのはこの事か。マスターと言われて出てきたからこの人がそうなんだろう。
おっと目が合ってしまった。軽く会釈をしておこう。
「こいつはギルドマスターのアンガス、これからおめえが世話になるやつだ。そんでこっちがナイ、俺が保護した。どうやら身寄りがないらしくてな。冒険者として使ってやってくれないか。」
「他でもねぇおめえの頼みだァ!聞いてやるよォ!しっかしなんだってお前さんあの森にいたんだァ?よく生きてたなァ!ガッハッハッ!」
さてどうするか、誤魔化すか。いやここは素直に答えておこう。
「よろしくお願いします、アンガスさん。実は自分でもよく分かってないんです。気づいたらあの森にいました。すると大きな猪に襲われ、なんとか逃げたところでもう訳が分からなくて死のうとしていました。そんな時にロイさんと出会いました。」
前言撤回だ。真実の中に少しだけ嘘を混ぜて誤魔化すことにした。四肢を落として死のうか試してたなんて言えないからな。
「なんだとォ?猪だァ?大きさは?ナイ、お前みたいな若造がそいつから逃げきれたのか?それはロイに伝えたか?どうなんだ答えろオラァ!!」
突如笑っていた顔から般若のように怒り狂うアンガスに問い詰められる。しまった。あの猪の話は黙っておくべきだったか。
言い淀んでいるとロイが助け舟を出してくれる。
「まあ待て落ち着けアンガス。ナイ、悪ぃが俺からも頼む。今その猪の情報は喉から手が出るほど欲しいんだ。」
「わ、わかりました。大きさはちょうどロイさんの倍くらいだった思います。咄嗟に木を盾にしたもののそれごと吹き飛ばされて、結果たまたま陰になったのか隠れてやり過ごすことが出来ました。なので逃げきれたのは幸運だったとしか言えないです。ロイさんには伝えていなかったです。ここまで大事だとは思っていませんでした。すみません・・・」
嘘に嘘を重ね、それらしい事を並べる。ロイはふむと頷き、アンガスは顎に手を当て考え込んでいる。
「こりゃあ俺達の追ってるラッシュ・ボアで間違いなさそうだな。それであんだけ木々がぶっ倒れてたって訳か。なるほど、納得いったぜ。」
「わかったァ、ナイ。情報ありがとよォ。怒鳴って悪かったなァ・・・」
なんとか変に疑われて拘束されずに済んだようだ。さて、話が終わったんだから早く解放して死なせて欲しいものだが・・・
「んじゃ俺は任せて帰るぞ。森で気になることも出来たしな。アンガスあとは頼んだ。」
「おうよォ・・・よしナイ!冒険者登録するぞォ!!」
「は、はい」
しまった。ロイの話を聞き流していたがこれからこの人に世話になるとか言っていたな・・・
ん・・・あれ?ってか飯食ってなくないか・・・
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