第六十三話 光の正体と動き出す植物
洞窟の奥から見える眩い赤い光はチカチカと不規則に点滅している。
「すみません、話が長くなってしまって。先急ぎましょうか。」
「いや・・・元はと言えば、俺の・・・せいだ・・・
とりあえず・・・潮が満ちる前に・・・奥を、見てしまおう」
洞窟自体は一本道のようで、奥に進むにつれて光に近づいているのがわかった。
進んでいるうちに分かったことがある。
光の方向から水音と咀嚼音のような物が聞こえてくるのだ。
それでも歩みを止めなければやがて洞窟の行き止まりに辿り着く。
光が届かない洞窟の最奥、そこには赤い光がふたつ点滅していた。
その光のある方向から何かが地面に落ちる音が聞こえる。
音のする方向を見ると、それは乱雑に食い散らかされた一匹の魚だった。
何かがいる。
それを理解し目を凝らしていると、暗闇にも目が慣れてそこにいる存在を目視するに至る。
赤い光だと思っていたのは、その存在の目だった。
頭は小さく薄紫色をしている。
そこから上に伸びていく大きな身体。
天井に張り付きこちらを見ているのか。
捕まるための脚は枝のように細く長いが、剣の先端のように爪は鋭く尖っている。
胸の中心部には血管が浮きでた心臓のような見た目の、肉の塊が露出している。
その肉の塊から繋がるようにして、気持ちが悪いほど筋肉が発達した紫の翼が生えていた。
こちらと睨み合い数秒後、鼓膜を破られそうな程の爆音で響く金属音。
連なるように翼の羽ばたく音が聞こえる。
羽ばたく力の強さが異常なんだろう。
洞窟内に突風が吹き荒れたかと思うと、赤い光が目の前を通り過ぎて洞窟の外へと飛び去っていった。
「あれは、ここに来た時に見た魔物ですかね。」
「そうだな・・・あの見た目、デーモンバットで・・・間違いないだろう・・・」
「デーモンバットですか。」
「あぁ・・・悪魔のような狡猾さ、生き汚さで・・・今日まで・・・生き残ってきた・・・蝙蝠だ。
元々は・・・あれほど筋肉も、体の大きさも・・・発達していない・・・
元はクラスレッドだったが・・・あれはもう・・・ホワイト以上だろう・・・」
「なるほど。しかし逃げていきましたね。」
「あぁ・・・もしかしたら、潮が・・・また満ちようと・・・しているのかもしれない・・・」
「外に出ますか。」
「そうだな・・・」
外に向かっていくと、水たまりだった場所は浅瀬のようになっており水が張っていた。
もう少し時間が経っていれば、出ることすらままならなかったかもしれない。
「あいつがこの場所を・・・餌場にしていることは、わかった・・・」
「このまま他の魔物の討伐を進めながら周囲の探索をしていけば、見えてきますね。」
「あぁ・・・あいつの巣に、辿り着ける・・・」
話しながら浜辺へと戻る。
森の中の拠点に戻る最中、積もった雪に何者かの足跡を見つけた。
「フリークさん、この足跡。」
「続いて・・・いってるな・・・追うか。」
足跡を頼りに進んでいくと青臭い臭いが辺りに立ち込める。
それと共に足跡は消えて代わりに草葉が生い茂り始める。
見渡すと鮮やかな色の花等も見え始め、空気が澄んでいることが分かる。
かといって決して草花がこんなにも密集して生きられる環境とは思えないほど冷え込んでいる。
そのまま草花の道を進んでいくと、一輪のあまりにも大き過ぎる花の蕾が姿を現した。
周りが無数の棘を持つ蔓に囲まれているところから薔薇であることが見て取れる。
「フリークさ「喋るな・・・」」
こちらの言葉を遮り人差し指を口に当てて静かにとサインを出してくる。
そのまま両手の平を自分の方に向け、肘を曲げて後ろに下がるようにサインを続ける。
それに従い下がるが、フリークの背負う斧槍がちょうど少し高めの位置にあった蔓に引っかかってしまう。
瞬間、突如として目が覚めたかのように蕾がその花を開く。
花の中心部は輪の様な口になっており、びっしりと歯が並んでいる。
口からは粘り気のある唾液がダラダラと零れていく。
花がフリークの方向を見た時、周りの蔓がいっきに凄まじい速さで蠢き出してその体と斧槍を絡め取ってしまう。
「来い、糸製造、ストリング、飛来刃。」
糸先のナイフでフリークと斧槍を蔓から解放し、そのままフリークの死角より迫る蔓に刃を飛ばし援護する。
近くの蔓はフリーク自身が斧槍を抜くことで対応した。
飛来刃により切れた蔓、斧槍により斬られた蔓。
そのどちらからもまるで出血するように桃色の液体が吹き出る。
花は大量の涎を垂らしながら苦しむようにその茎と葉を揺らしている。
「すまない・・・助かった・・・」
「いえいえ、大丈夫です。」
「しかし・・・起こしてしまったな・・・」
やがて花は冷静になると、その涎の量を更に増やしこちらを見る。
それに釣られるように周囲の木々までもが意志を持つように動き出す。
「俺のせいだ・・・が、ナイ・・・油断するな・・・
全ての方向に・・・気を配って、欲しい・・・
今・・・この瞬間は・・・この森全てが・・・俺らの敵だ・・・」
木々の間を抜ける風の音が、まるで獣の遠吠えのように聞こえた気がした。
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