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俺はドMに目覚めない   作者: 幸運を殺す者
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第五十七話 友と呼ぶ者、呼ばれる者

空腹感を感じて目を覚ますと、空はその色をすっかり鮮やかに染めていた。

場所によっては薄暗くなり始めてすらいる。

時間もちょうどいいだろう。

ギルドに夕食を食べに行くことにした。


既に飲み始めている者もいるのだろう。

扉越しに外にまで楽しげな会話が聞こえてくる。

扉を開け中に入ると案の定周りは静まり返り、皆がこちらの様子を伺うようにしている。

奥まで歩いていき、配給を貰うため声をかけると中にいた料理長ことミリーナが対応してくれた。


「ナイくんだー!この雰囲気、大丈夫?」

「何かされてる訳でもないので。」

「そうか〜、強いね。ナイくんは。」

「いえいえ。そんなことは無いです。」

「今日はお喋りしに来てくれたのー?」

「いえ、夕食を食べに来ました。もらえますか?」

「いいよー、はいどうぞ。ってナイくん後ろ!」


言葉に反応し振り返ると数人の冒険者が武器を抜き身にして斬りかかってきていた。

何かしてしまったのだろうか?だが勘違いかもしれないからな。

何よりこんな相手に斬られても死ねないだろう。


「糸製造、ストリング。」


両手から計十本の糸が伸び、襲いかかる冒険者達の武器を持つ手首を締め上げる。

数は四人、糸に余裕があるのでもう片方の手も拘束する。


「糸の拘束を強めて欲しくないならそれ以上こちらに近づかないで下さい。

手荒な真似をしたのはすみません。

しかし一体これはどういった理由で?」

「黙れガキが!クラス詐欺野郎!」

「確かにガキではありますが、クラス詐欺はしていませんよ?」


「そんな訳あるかよ!一人でブラックを倒すとか嘘に決まってるだろ!

しかもクラスグリーンからいきなりホワイトなんてありえねぇだろうが!つまり詐欺だ!」

「嘘ではないです。それにクラスがここまで上がるなんて、自分でも思っていませんでした。

一応聞きたいんですが、理由は妬みということであってますか?」

「ごちゃごちゃうるせえ!ぶん殴ってやる!」

「はぁ。」


拘束する力を強める。

強化されたスキルで作られた糸はその強靭さ故に、普通の人ならば振りほどくことも引きちぎることも出来ないだろう。

怪我をさせるつもりはないので折れたりしないように力は調整しておく。

声を荒らげるこの男がリーダー格だろうか。

余っている二本で足にも糸を縛りつけておこう。


「あああああぁぁぁ!!何しやがる!」

「近づいたので拘束の力を強めただけです。事前に忠告はしていましたよ。」

「手足を折られる、誰か助けてくれ!こいつは同じ冒険者に手を出す魔物の手先だ!」

「先に斬りかかってきたのはあなた達ですよね?

それに絶対に折れませんよ。調節はしています。」

「嘘をつけ!格上の冒険者に暴力を振るわれたとギルドマスターに言いつけてやるからな!

お前は冒険者を首になるだろう!ざまあみろ!」

「えっ?あっはい。構いませんよ。」


「は?」

「いやだから首になっても構いませんよ。」

「クラスホワイトを首になるんだぞ?」

「高クラスは目的の一つでした。でも特別なりたかったわけでも無いので。」

「莫大な金が手に入るんだぞ?」

「あっお金が欲しかったんですか、白金貨でいいですか?ちょうど今手持ちに四枚あるんですよ。

お仲間さんと仲良く一枚ずつもらいます?」


挑発とも取れる言葉をまるで合図にするかのようにして、一人の大男が場の中心へと乱入してきた。


「ハイハイ、お終いだァ!ナイ、もういいだろォ?

こいつら許してやってくれねェかァ。」

「許すも何も怒ってないですよ。

それにここで縛って止めておかないと殺気立ってる人が多いみたいなんですよ。ね、ミリーナさん。」

「うぇっ!なんでもないよー!」


既に包丁はまな板の上に寝ていて、腰には明らかに調理器具にしては大きな刃物。

指摘して鍔が柄に当たる音が鳴ったことから、抜く一歩手前だったことは間違いないだろう。


ギルド内を見るとクリフが片手を上げ合図をする後ろで、隠れて矢筒に矢を戻すリンダの姿も見える。

フリークは流石に同じ依頼に赴く相手。

つまりは命を預ける相手への信頼からなのか、武器こそ構えてはいなかったもののフードの影からその瞳が明らかに睨んでいるのは見えている。


ふむ、こういう時はアレだな。


「皆さんお騒がせしてすみませんでした。

お金は出しますから、その空になったコップに溢れるほどにお酒でも注いで飲んでいって下さい!!

お代わりもご自由に!!」


ギルド内の食事と最初の一杯は無料なのだが、流石に二杯目からは金をとるのだ。

依頼後お疲れ様の一杯を楽しみにしている彼らにとって、この奢り宣言は先程の騒ぎを簡単に忘れさせてくれた。


「クラスホワイトのナイに乾杯!!」

「生意気クモ坊主にィ!乾杯ィ!!」


ギルド内のあちこちで乾杯の音頭が聞こえてくる。

なにやら友共々馬鹿にされてる気がするが、酒の席だから良しとしよう。

そんなお祭り騒ぎの中、襲いかかってきた四人組は受付でリーゼにこっびどく怒られているようだった。


「凄いねーナイくん。あたしには真似出来ないなー。」

「あぁ・・・今の采配は、見事だ・・・」

「お二人共ありがとうございます。助けようとしてくれていたことも。」

「ナイくんがちゃんと戦える冒険者だって知ってる人なら誰でも怒るよー。」

「そうだな・・・誰でも戦場での、友を・・・馬鹿にされたくは・・・ない。」


「友、ですか。」

「うん、そうだよー!」

「当たり前、だ・・・何より俺にとって・・・お前は、明日から・・・命を預ける・・・相手だ。

これを友と言わずに・・・なんと呼べと?」


「そう、ですね。ありがとうございます。

・・・すみません、ミリーナさん。

お気持ちでお腹がいっぱいになってしまった様です。

悪いんですがパンだけもらって帰りますね。」

「うんー?わかった。明日から頑張ってねー。」


面と向かって言われた真っ直ぐな信頼に困惑して、その場から逃げてしまう。

受付にいるリーゼに後でお釣りをと言い残し白金貨一枚を渡しておく。

まあお釣りのが多くなるから勘弁してと、後払いにして請求書を出してもらうことになったのだが。


夜であっても騒がしいギルドを後にして、空を見上げて星を眺めながらパンを齧り宿舎に戻る。

口の中の水分を奪われながら噛み締めるパンは、やけに噛みごたえがあるように感じた。

空腹で目覚めたのにパンだけは失敗だったかもしれない、ちゃんと食べてくればよかったのに。

そんな小さな自己批判と共に、口に放り込んだパンのなんとも言えない後味のせいだろう。

やけに星が霞んで遠くに見える気がする。


しかしあの場に残り、あまり感情移入してしまうような会話が続くことは良くないだろう。

死の道を行く限り、生きようとする者と道が交差することはあれど完全に混ざり合うことはないのだ。


妙な孤独感を感じる寒空の下、胸の宝石だけが熱く燃え上がる様にしてその小さな体を火照らせていた。

読んでくれてありがとうございます。

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