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俺はドMに目覚めない   作者: 幸運を殺す者
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第五十四話 膨らむ報酬と想像

ギルドの扉をくぐり外に出ると肩を叩かれる。

そこにはリーゼとフードを被った怪しい風貌の男が立っていた。


「ごめんナイくん、ちょっといいかしら。」

「なんです?」

「明日多分レッド以上になるのは間違いないと思うのよ。」

「それいっちゃっていいんです?」

「大丈夫・・・だ。あれだけの成果・・・上がらない方が・・・おかしい、からな。」


「ええっとこちらの方は?」

「あぁごめんなさい。彼はフリーク、クラスレッドの冒険者でクリフの兄よ。」

「ややこしくて・・・すまない、な。家訓に・・・関係している。」

「なるほど、よろしくです。フリークさん。それで何か御用ですか?」

「明日・・・クラスが上がったら、とある調査依頼に・・・一緒に行っては・・・くれないだろうか?」

「調査依頼ですか、それはどんな依頼ですか?」

「それは私から説明するわ。」


なんでもこの試練における結果は著しい物であったらしく、サバイバル適性が高いだろうということでのお願いだ。

場所は西方にある魔窟の氷原。

クラスグリーンからレッドまでの魔物が確認されているが、精霊の森での一件以来生態系に変化が見られた。

クラスホワイト出現の危険性も考え、実力者であり忍耐力の高い優秀な冒険者を派遣せよとの王国たっての依頼らしい。


「王国からの依頼ですか。」

「かなり・・・名誉なことだ。」

「冒険者としての名も上がるはずよ。受けて損ないというか、断れる人はまあいないわね。」

「なるほど。一応明日次第ということでいいでしょうか?急のことなので。」

「ごめんね、確かにそうよね。分かった。」


こちらの返事を聞き二人共ギルドの中に戻っていった。宿舎へと歩きながら依頼について考える。

王国からの依頼か、一瞬ヘレナとグロリアの顔が浮かぶ。

依頼達成時には王国からのアプローチがあるかもしれない。

もし実験について何か再会の目処があるならば、明日あたりに聞かれてもおかしくはない。


流石に心配症すぎるだろうか。

だがヘレナ達にされた昔話のせいで王国側への疑惑が拭えない。

下手に評価を上げられ担ぎ上げられてしまうと、行動の自由が奪われかねないだろう。

それはまずい。

友との再会のためには黒龍に出会うのが必須条件。

逆に言えばある程度自由な位置にいれる今程の評価がちょうどいい。


維持のためにフリークと共に依頼をこなすのはアリかもしれない。

彼もクラスレッドの冒険者と言っていた。

順当にクラスを上げた実力者ならば補佐をする形となるはず。

高クラスを相手取るための立場を確立させるという意味ではありだろう、受けることにしよう。





翌日早朝にギルドを訪ねると斧槍を研ぐフリークがギルドの端に座っていた。


「おはようございます。」

「あぁ・・・早いな・・・おはよう。リーゼなら・・・もういるぞ。」

「普段この時間は誰もいなかったと思うんですけど、フリークさんもお早いですね。」

「精霊の森に・・・ロイさんが調査に行っている間の、話だ・・・他の関所の・・・防衛に・・・行っていた・・・」

「つまり普段はこの時間なんですね。」

「あぁ・・・」


フリークと話をしていると受付の奥からリーゼが顔をのぞかせた。


「あら。ナイ来てたの、おはよう。試練の報告なら受けるわよ。」

「おはようございます、まず何から報告すればいいですか?」

「納品した魔物の特徴を教えて欲しいのよ。こちらで既に納品された魔物の名前までは分かってるんだけどね。確認みたいな感じよ。」


「わかりました。まず初めに納品したのはグランドベアの倍程の大きさの、人型の石像から出た黒い綺麗な石を一つです。」

「なるほど、クラスレッドのゴーレムを一体。」

「次に納品したのが、その体を蜃気楼のようにする緑と黄色のトカゲですね。

これは剥ぎ取って一体分丸々納品しました。」

「はいはい、クラスレッドのカゲロウトカゲを一体。」


リーゼは手元にあるリストの様な物に記入しつつ淡々と処理していく。


「その次が白い鳥ですね、十羽ほど群れをなしていました。全て逃さず討伐して納品しました。」

「クラスイエローのスワローアローね。それが十体。」

「それで次に、山よりも大きな巨人ですね。五十の頭と百の腕を持つ魔物でした。計三体いましたが討伐して百と八つほど頭を納品したと思います。」

「・・・クラスブラックのヘカトンケイルを三体。」

「以上です。」

「ええ予想以上の結果になってしまったわね。ちょっと計算するから待ってて。」


リーゼは顔を真っ青にしながらそう言って記録を確認しながら計算をしていく。

しばらく待っていると記入のような物が終わったらしく、明細書を渡された。


黒三体 白金貨三枚、格上報酬白金貨三枚

赤二体 金貨百枚、格上報酬銀貨金貨八十枚。

黄十体 銀貨百枚、格上報酬銀貨四十枚。

合計 白金貨七枚、金貨八十一枚、銀貨四十枚 也。


「これめちゃくちゃ貰ってませんか?」

「仕方ないじゃない、あなた今グリーンよ?ブラック討伐の報酬は単純に倍になるのよ。」

「これ、クラス昇格してからの金額でいいですよ。」

「ほんとにっ!!?あなた大損するわよ?」

「俺からも・・・貰っておくべきと・・・助言をする。」

「いや、ほんとよ。ギルドとしては痛いけれどあなたのような冒険者が評価されるのは有難いのよ?」


何やら必死に止められるが、別に金も評価もいらないのだ。

ここは断っておくべきだろう。

これだけ払ったんだからそれなりに働いて返せ位のことを言われたら面倒だ。


「いえ、大丈夫です。この歳じゃ使いきれませんよ。昇格の話を先にお願いします。」

「うーん分かったわ。クラスの昇格には一定数討伐とか色々条件があるんだけどね、一対一での討伐は問答無用で昇格なのよ。」

「なるほど。つまりレッド以上は間違いないってのはそういうことなんですね。」


「ええ。それであなたはブラックを一人で討伐してるんだけど・・・素材から見てヘカトンケイルの物であるのは間違いないし。」

「見てなくても分かるんですか?」

「それを見極めるスキルがあるのよ。

ただグリーンからブラックへの昇格はさすがに前例が無いのよね・・・」

「別にそれは構わないですけど。」

「じゃあ・・・ナイくん、ギルドはあなたをクラスホワイトに昇格します。」

「わかりました。ありがとうございます。」

「じゃあ・・・このクラスで計算し直した報酬を準備してくるから待っててくれる?」


そう言ってからリーゼはギルドの二階へと上がっていった。

しかしレッドで収まると思っていたが、予想より高く評価されてクラスホワイトになれた。

現状殆どの依頼をこれで受けることが出来るんじゃないだろうか。


これは試練に参加した甲斐があったかもしれない。

友の力を蓄えるためにも強い敵と出会う必要がある。

リーゼを待ちながらこれから出会うだろう魔物への想像を膨らませることにした。

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