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俺はドMに目覚めない   作者: 幸運を殺す者
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第四十九話 友愛は虎よりも猛し

虎の後についていくと、青白い光を放つ虫が沢山浮かんでいる空間に通された。

足元の岩は乾いており尖った部分も少ないため、ここなら腰を下ろし休むことも出来るだろう。


「ここは私のお気に入りなの。」

「綺麗。教えてくれてありがとう。」


ヘレナはすっかり気を許し虎に抱きついている。

というかもはやこれは寝ている。

凄まじい寝付きの良さだな。

虎も特に嫌そうにはせず、まるで我が子を見つめる親の様な瞳で彼女を見つめている。


「話の続きといこう。アレと友だちだったというのは本当か?」

「ヘレナから聞いていないの?昔は人も獣も精霊も助け合って暮らしていたと。」

「アレが助け合うとは思えない。少女の皮を被った得体の知れないナニカが。」


「少女の方が本当の姿よ。精霊王になってしまったから生物の憎悪が流れ込んでいるだけ。」

「好きであんな姿してる訳じゃないのか。」


「そうね。私からも聞いていい?」

「あぁ、答えられることなら答える。」

「あなた、人でありながら人でなくなっている自覚はある?種族が変わらず混ざっているけれど。」

「血毒の防皮、白光の巨腕。この力のことか?」

「スキルを・・・しかもかなりの力ね。」

「分かるのか?」

「精霊にはスキルを授ける他にもスキルの持ち主の力を見極める為の特殊な眼があるの。私も半分は精霊だから分かるって事。」

「なるほど、だが混ざっていることに問題があるのか?」

「あなたがどうやってその力を得たのかは知らないけど、手放せるのなら早く手放した方がいいと思う程には問題大ありね。」


問題か、大きすぎる力は身を滅ぼすって意味なら滅びたいから問題ないんだがな。

とりあえず話を聞くなら見てもらう方が早いか。


「こんな事になっててな、手放せないんだ。手じゃ離れないが正しいかもしれないが。」


服を捲り胸を見せると虎は目を見開いて驚いている。手で叩いて見せると少しだけ辛そうな顔をしていた。


「魔精宝石を取り込んでしまったのね。狙ってやったの?」

「偶然だ。しかしなるほど、魔物から精製されるから魔精宝石か。

はじめはたまたま魔物が落とした物を胸にしまっていたんだ。そこを黒い龍の霧、ブレスで貫かれた。

宝石にあったスキルか、ブレスの影響か、それとも闇の精霊王のスキルの影響かはわからない。

ブレスで飛ばされて気絶した後、目が覚めた時にはこの有り様だ。

二色混ざっているのは最近また一つ手に入れた時、引き寄せられてる気がしてな。近づけたら混ざったんだ。」


「黒い龍、そう彼はまだ生きてるのね。」

「あぁ、ブラックミストドラゴンなんて呼ばれ方をしてるらしい。」

「そう…」


それを聞いて虎はとても遠い目をしていた。

まあ確かに彼は、なんて言い方をする知り合いが今ではブラックミストドラゴンさんになっているのだ。

遠い目の一つや二つしなければ心が持たないだろう。


「一応気になったことを三つ程言ってもいい?」

「あぁ、なんでも言ってくれ。」

「まず一つ目、あなたは胸を貫かれた時に何かを奪われた可能性がある。それはそうね、二つ目に関係してる。」

「続けてくれ。」


「二つ目は、その宝石のあなたと深く繋がっている方。あなたの体と実際に繋がってるの。その周りの赤い結晶はあなたの血とその宝石の持ち主の血が混ざりあって出来ているのね。」

「そうか、そうか。」

「随分と嬉しそうね。ここでまた一つ目の話、奪われた物はおそらく生きるための力。心肺の半分を完全に奪われてるようね。」

「やってくれるなぁ。」

「嬉しそうに聞こえるのが不思議ね。それで二つ目の話、それを補うように近くにあった宝石があなたと繋がれてるみたい。それがどうやって繋がれてるかまでは分からないけれど。」


「それは多分、闇の精霊王の贈り物のせいだ。」

「一体どんなスキルなの?」

「体感した限りは、体のあらゆる怪我、全身が粉々になっても痛みと共に再生するスキルだ。」


「あの子の趣味通りのかなり気持ちが悪いスキルね、じゃあ。」

「いや、だが貫かれた後その痛みは来なかった。」

「…もしかしたら、だけど。」

「あぁ、それでもいいから聞かせてくれ。」

「あなたの体は再生されてないんじゃない?」

「ん?どういうことだ?」

「そのスキルが再生しようとした部位は龍によって奪われていた。あの霧によって奪われるってのは怪我とかそういったレベルの話じゃないの。

無い状態を正常にしてしまうの。

だから、そのスキルがあなたを生かすために宝石を再生させたんじゃない?」

「それは…」


この宝石が再生しているということは、だ。


生きている。友がこの体と共に生きている。

馴染んできた頃に、この場所に来る前に見た夢。

あれはそういう意味が込められていたのか。

友がこちらに生きている、もう一度殺し合いをしたいと伝えるための場だったのか。


それに気づいた時に頬を伝う大粒の雫。

止まらない、いや止めたくない。

想いの強さに、意志の強さに、心が動かされた。


「あなた、泣いて…そうよね。ごめんなさい。

このことは紐解くべきじゃなかった。

これは考えうる限り最「高の状況だ!!」悪の状況ねって…」

「「え?」」


二人して素っ頓狂な声を上げ、見つめあう。

数秒もの間沈黙が生まれた。

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