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俺はドMに目覚めない   作者: 幸運を殺す者
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第四話 失う痛み

「さてと・・・」

何度も猪とのぶつかり稽古を終えライフが減らないならば、欠損すれば死ねるのではないかという疑問が浮かぶ。

「痛いのは好きじゃないんだけどなぁ、死ぬためだ。」

先刻までいた猪は既に飽きたのか、姿を消した。

つまりはこの広大な森を、自然の力を使い死ぬ努力をしなければならない。

足元には踏み荒らされた土や折れて横たわった木々、見上げれば大樹。

刃物の代わりになるような小石や枯れ枝を探す。

「あー猪に感謝だな。」

彼との出会いは幸運であったと言える。

死ねないかもしれないという絶望はあったが、結果として死ぬための環境は整えてくれた。

折れた木々の裏にまるで槍のように鋭利に尖った太い枝を見つける。

「いっつー」

先端に指を這わせるとそれだけで皮膚は切れ赤い液体が漏れ出す。

「傷はつく、血は出る。なら死ねるか」

現世では自殺には手は出さなかったがこの状況では四の五の言ってはいられない。

倒れた木の隙間に枝を差し込み固定する

「勇気出せよ・・・せーのっ」

これから起こる痛みを拒否するための感情に蓋をして、右腕を上に振りかぶり尖った先端へとその掌を叩きつける。

「がっぁ」

熱い。痛いと言うよりかは熱い。ドクドクと脈打つ感覚と空気に晒される体の内部からくる痛みに顔をしかめる。

そして軽くなった感覚のする方に視線を向ける。

「・・・っあ・・・はぁ・・・なんとかクリアか」

そこには希望していた通り手首から先が無くなり、赤い液体を垂れ流すだけになった右腕があった。

それを認識した瞬間、右肩から手首までにかけてを鋭い痛みが襲う。

「いっでぇーつるつる、いやつってる?いたたた」

思わずその場に横になり腕を伸ばす。しかしそんな痛みも自然と収まる。

痛みが和らいできた頃には立ち上がろうと右手を地面についていた。

「は?」

そう、無くなったはずの掌を地面に付け、それを起点に立ち上がろうとしていたのだ。

切り取られた、と言うよりかは抉り取られたはずの手首から先はまるで何事も無かったかのように綺麗に元通りになっていた。

それに伴い痛みも無くなっていることを自覚する。

「待て待て待て」

素早く立ち上がり、辺りを見回す。目の前には固定され赤く染まった鋭い枝。

その先からは液体が滴り落ち、地面には赤い水溜まりが出来ている。


そしてその中心には、持ち主を無くした見慣れた掌がさっきと変わらない姿で落ちていた。

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