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俺はドMに目覚めない   作者: 幸運を殺す者
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第四十八話 峡谷を闊歩する一頭の獣

夜勤があり昨日更新間に合いませんでした…

申し訳ないです。


上から覗き込むと岸壁は所々尖った岩が飛び出ているようだ。

手さえかけられれば降りられないことはない。


「白光の巨腕。」


この腕ならば身体を預けるには十分過ぎるくらいだろう。

残る両手で糸を出し支えて降りていけばいつかは辿り着けるはずだ。


「糸製造、ストリング。」


峡谷の縁から手から出した糸を岩肌に巻き付けるように操作しながら巨腕で体を支えて降りる姿勢を作る。


「とうっ。」


こちらが安定したのを見てから、ヘレナが抱きついてきた。


「勝手についてくるんじゃなかったのか?」

「勝手にくっついてくるでしょ?私からしたら勝手にくっついているだけどね。」


面白い。なんだか一本取られた気分だった。


「いいぞ、許す。」

「ふふっありがと。」


時折糸のかける位置を変えながら、ゆっくり下へと降りていく。

半分を越えた頃だろうか。

糸のかける位置を体の平行線上よりも高い位置に変えて、壁を蹴る様にして降りる。

そこからは全く時間をかけずに下まで降りきることが出来た。


ちょうど足が地面についたところでヘレナも体から降りた。


「お疲れ様。」

「あぁ。」


峡谷の下まで来て感じたことは空気がとても澄んでいるということだ。

周囲も地上より遥か下にいるのを忘れるほどに陽の光が刺しているため明るい。

時折風は吹き抜けるが、陽の暖かさもあってか心地いい。


不意に背後から水音が聞こてくる。

振り返るとそこは洞窟になっており、奥が気になるのかヘレナが興味深そうに覗き込んでいた。

どうやら水音は洞窟の天井から水滴が落ちた音らしい。

ヘレナも気になっているならちょうどいい。

ここから探索を始めよう。


中に踏み込むと足元は湿っており滑りやすくなっている。

その上不安定な岩場だ。

進むのに手こずっていると、こういった場所での移動になれているのだろう。

ヘレナが足元すら見ずに先を進んでいく。

その後をつかず離れずの距離で追いかけていく。

彼女の踏み込む場所に間違いはなく、先程までとは比べ物にならない速さだ。

すると突然ヘレナは足を止め大きく声を上げた。


「すごいっ!綺麗。」


そこはかなり開けた場所になっているようで、洞窟の中とは思えない程の明るさを放っていた。

どうやら原因は宙を舞う青白い光の集合体、ここに来る道中の経験からそれが虫であることは容易に想像出来た。

空間のほとんどは湖となっており、透明感のある水面に光が反射していてとても幻想的だった。


よく見るとその水を飲みに来ている鹿のような見た目の魔物もいる。

どうやらこちらに敵対心があるようには思えず、かといって逃げようともしない。

まるでそれはここにいれば安全だと理解しているような態度に思えた。

その姿に見入っていると、突如頭を下げ降伏するような姿勢を取りだした。


あたりに緊張感が走る。

視線を感じ後ろを振り向く。

そこには全身を白銀の美しい毛に包み、一目で筋肉質だと分かる体つきをしながらもしなやかにこちらに歩いてくる獣の姿があった。

それは虎であった。

目前にまで近づいて来てから、こちらを一睨みしてから口を開く。

その口から聞こえてくるのは鳴き声ではなく、笛のように綺麗な音色の人の言葉だった。


「なぜこの場所に人の子がいるの。」

「私が説明する。」


先に反応したのはヘレナだった。

虎はヘレナの元へ向かい、その体と顔をじっと見ている。


「あなた、混ざっているのね。それもかなり複雑な混ざり方。」

「ママとパパは愛し合い私を産んだ。この姿は悪しき人の心は関係ない。」

「ふふっ…なるほど。あなたは知っているのね。」


「ちょっと待て、いや待って下さい。自分で説明会します。ここに来たのは自分の意思に過ぎません。彼女は勝手についてきただけだ。」

「人の子よ、私はこの子と話をしているの。邪魔だてはさせない。それと仮初の礼儀はいらない。

ありのままの言葉で話せ。それがこの場にいることを許すための条件よ。」

「そうか…ならまず訂正だ。

その子の名はこの子ではなくヘレナだ。

そして人の子ではなく名はナイ。無いのではなくナイという。この場所に人が立ち入ってはいけないとは知らなかった。申し訳ない。」


「驚いた。私に訂正なんて怖いもの知らずね。

でも知らなかった、か。ナイ、あなたは随分と幸せに暮らしてきたのね。」

「この世界に親はいない。気づいた時には森の中だ。闇の精霊王の贈り物のせいで満足に死ぬことすら許されない。それを幸せと呼ぶならばそうだな。」

「私が悪かった。少しだけ意地悪をしたつもりだったの。でも闇の精霊王からの贈り物は幸福と言えるわ。」

「そうか、だが送り返してやりたいくらいなんだがな。」

「あの子は贈り物以外まともなスキルを授けないの。よほど気に入られたのね。」

「ゾッとしないな。知っているのか。」

「ええ、友達だったもの。」

「待って。私を放ってお話しないで。」


見ると怒った顔でヘレナがこちらを睨んでいる。

顔を背けたところ虎と目があった。


「この洞窟のもう少し奥に休める場所があるの。

お話の続きはそこでしましょうか。」


さっきまでの睨んでいた目ではなく、優しい目でそう言ってから虎は奥に進んで行った。

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